アドビの研究開発チームが生み出すアイデアが披露される、Adobe MAXのハイライト「MAX Sneaks」が今年も開催された。
光と音を編集する新たな手法から、静止画を没入感のある3Dモデルに変換する技術まで、AIが切り拓くクリエイティブ表現の可能性を垣間見せた。制作プロセスをより速く、より直感的で、より楽しいものへと進化させる、驚きの実験的技術の数々が発表された。
今年のMAX Sneaksでは、エミー賞およびクリティクス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)にノミネートされたコメディアン、作家、女優のジェシカ・ウィリアムズが司会を務め、会場を盛り上げた。デモでは、光と音を編集する新たな手法から、静止画を没入感のある3Dモデルに変換する技術まで、AIのクリエイティブ表現の可能性を垣間見ることができた。制作プロセスはより速く、より直感的で、より楽しいものへと進化していく。
画像編集の再定義
Project Surface Swap
ソファの布地からフローリングまで、画像内のあらゆるサーフェスや素材を瞬時に変更する。「Project Surface Swap」は、AI搭載のテクスチャ認識技術により、照明や遠近感を維持したまま、素材をシームレスに選択・置換ができる。インテリアデザイナーや写真家だけでなく、空間づくりのイメージを可視化したい人にも最適だという。
Project Light Touch
光は写真の雰囲気を決める重要な要素であり、これまでは撮影場所で調整されるものだった。「Project Light Touch」は、従来の常識を覆す機能である。生成AIによって、写真撮影後でも光を自在に操ることができる。昼を夜に変えたり、ドラマチックな演出を加えたり、被写体の雰囲気や焦点を調整することも可能だ。まるで太陽やスタジオライトを制御するかのように、写真の印象を大きく変えることができる。
Project Turn Style
2Dオブジェクトを3Dのように編集できる「Project Turn Style」で、平面画像の限界を突破する。画像内の要素を回転・角度調整・再配置しながら、自然な質感・照明・ディテールを維持できる。これにより、無限のクリエイティブコントロールとダイナミックなストーリーテリングを実現する。
Project Trace Erase
不自然なオブジェクト削除が不要になる。「Project Trace Erase」は、従来の面倒なオブジェクト削除作業を一変させる。「Diffusion Transformer Models」を搭載し、オブジェクトとその影、反射、環境歪みを除去。手動での修正がほぼ不要な、自然な編集を実現する。
Project New Depths
「Project New Depths」は「Radiance Fields」(3D写真)の編集の幅を広げ、三次元空間で色・形状・構図の自在な調整を可能にする。これにより、奥行きの編集が明るさ調整のように容易になり、次世代のビジュアルストーリーテリングの可能性を切り拓くとしている。
Project Scene It
「Project Scene It」は、3Dシーンの構造とスタイルの両方を自在にコントロールできるようにすることで、精密さと芸術性を融合させる。「画像を3Dに変換」や「3Dを画像に変換」の技術を基盤に、個々のオブジェクトに参照画像をタグ付けすることで、それぞれの状態を維持しながら3D空間内で自由に移動させることができる。これにより、生き生きとしたリアルな世界をデザインすることが可能になる。
映像とモーションの革命
Project Frame Forward
フレーム単位の動画編集はもう不要だとする。「Project Frame Forward」は、注釈を付けた1フレームと簡単なテキストプロンプトに基づいて、動画全体に編集を適用する。写真編集の精度を動画にもたらし、品質を損なうことなく動画編集を劇的に高速化する。
Project Motion Map
イラストレーションに命を吹き込む。「Project Motion Map」はAIにより、静的なベクター画像を分析、意図的で表現力豊かな動きを自動的に生成する。キーフレームや手動でのリギングは必要ない。制作者の意図を反映しつつ、労力をかけずにモーションデザインが可能である。
音響とストーリーテリングの変革
Project Sound Stager
音響は感情であり、「Project Sound Stager」はクリエイターがこれまでにない方法で音のデザインを可能にする。動画の映像、テンポ、感情的なトーンを分析することで、専門的な音響デザインロジックを用いて自動的に多層的なサウンドスケープを生成する。AI「サウンドデザイナー」と対話形式で共同作業し、最終ミックスを微調整することも可能だ。
Project Clean Take
会話をより滑らかに編集可能にする。「Project Clean Take」は雑音の除去、声の分離、間違った発音の修正をAIを用いて数秒で実現する。これはポッドキャスト配信者や映像制作者、そしてスタジオなしでプロ品質のサウンドを求めるすべての人にとって、強力な機能となる。
MAX Sneaksでの大胆な実験的アイデアは今後Adobe Creative Cloud製品の機能として実現される可能性が大いにあるとして、今後の発表が期待される。