一般社団法人電子情報技術産業協会(以下:JEITA)は、11月19日(水)~11月21日(金)に開催されたメディア総合イベント「Inter BEE 2025」で展示されてた技術・製品・サービス・ソフトウェア・コンテンツ等を対象として、優れた展示案件を表彰する「INTER BEE AWARD 2025」の各部門賞および本年より新設した「審査委員会賞」を発表した。
INTER BEE AWARDは、昨年新たに創設されたもので、本年が2回目となる。Inter BEEが対象とするメディア&エンターテインメント分野の活性化と将来に向けた進展、同分野における技術進歩や多様な創造活動の発展に寄与することを目的としている。最新の技術動向を踏まえ、同分野の有識者で構成されたINTER BEE AWARD 2025審査委員会の厳正な審査により選出された。
INTER BEE AWARD 2025 受賞一覧は以下の通り。
プロオーディオ部門賞
グランプリ
- 案件名:Spectera ― 広帯域と双方向通信で切り拓くプロオーディオの新時代
- 会社名:ゼンハイザージャパン株式会社
〈案件概要〉
Specteraは、ゼンハイザーが開発した世界初の広帯域・双方向デジタルワイヤレスエコシステムだ。単一の広帯域RFチャンネル(6/8 MHz)上で、マイクや楽器入力とインイヤーモニター/インカム(IFB)を同時に運用可能である。1UラックのBase Stationに最大64リンクを集約し、LinkDeskソフトウェアで遠隔管理・監視を実現した。
〈選評〉
ゼンハイザーの広帯域双方向デジタルワイヤレスエコシステム「Spectera」は、1Uラックサイズのベースステーションで、最大32チャンネルずつの入出力に対応し、ボディパックは、1つのデバイスでマイクとインイヤーモニターを送受信できることが可能だ。パフォーマーへの負担を減らせるだけでなくバッテリー管理など運用面においてもシンプルになることが期待される。大阪・関西万博などで試験運用された実績も踏まえ、国内においても将来的に放送・ライブ・配信など幅広い分野での制作スタイルを一新させるポテンシャルが高く評価された。
準グランプリ
- 案件名:Auri – Auracast対応 ワイヤレス音声配信システム
- 出展者名:松田通商株式会社
〈案件概要〉
Auriは、Bluetooth LE Audioの新機能Auracastを利用したワイヤレス音声配信システムだ。送信器と専用受信器またはAuracastに対応したデバイスにより、同時多人数へ高品質・低遅延な音声配信が可能である。送信器は入力音声を最大2chの放送に割り当てることができ、受信台数制限はない。補聴支援から多言語同時通訳まで幅広い用途に対応し、既存のシステムを置き換える技術として注目されている。
〈選評〉
Bluetooth Low Energy Audio(LEオーディオ)の新機能であるAuracast(オーラキャスト)を活用したブロードキャストオーディオを利用したワイヤレス音声配信システム「Auri」は、専用デバイスだけでなく、Bluetoothイヤホンや補聴器などAuracast対応デバイスを使用してAuracast音声の受信が可能となる。製品、テクノロジーの機能にとどまらず、多言語通訳や聞こえのサポートなど社会実装への期待やもたらされる効果にも期待が寄せられた。
コンテンツ制作 / 放送・メディア(ハードウェア&ソフトウェア)部門賞
グランプリ
- 案件名:OCELLUS マーカレスカメラトラッカーによる新たなCG/VFX制作への貢献
- 出展者名:ソニーマーケティング株式会社
〈案件概要〉
主に実写とCG、VFX合成映像の制作に必須となるカメラトラッカーにおいて、利便性が高く活用の幅が広いマーカーレス方式を採用したOCELLUSはソニー独自のアルゴリズムをベースにすることによって従来のマーカーレス方式に於ける課題を解決し、さらに映像制作機器メーカーとしての知見を踏まえた工夫を加えて、より幅広く使いやすいカメラトラッカーを商品化した。
〈選評〉
映画をはじめ、ARなどのバーチャルプロダクションなど、映像制作におけるCG合成が不可欠になっている現在、カメラのトラッキングデータの取得は重要になっている。「OCELLUS」では、マーカーレスを実現したことで、IRマーカーなどのセッティングが不要なだけでなく、マーカーを設置できない環境でも高精度なカメラトラッキングを実現する。レンズデータなどカメラ情報と併用することで、スポーツライブなどはもちろんのこと、ポストプロダクションにおいても高精度な映像合成を実現できるポテンシャルが大きく評価された。
準グランプリ
- 案件名:多様化する映像プラットフォームへの展開をサポートするシネマカメラ EOS C50
- 出展者名:キヤノン株式会社/キヤノンマーケティングジャパン株式会社
〈案件概要〉
EOS C50は、新開発の7Kセンサーを搭載し、オープンゲート記録や縦クロップ同時記録が可能な自由度の高いシネマカメラだ。大型ファンを搭載し12bitの内蔵RAWの長時間記録が可能な一方でオーバーサンプリングによる高画質な4K映像を同梱のハンドルからデジタルズーム操作も可能である。EOS C50は映画からSNSまで多様化する映像制作ニーズに信頼性と機動性を両立したコンパクトボディによって応える。
〈選評〉
7KフルサイズCMOSセンサーを採用し、センサー全体を利用したオープンゲート記録にも対応。縦横同時記録を可能としたことで、WebやSNS向けの動画の同時収録も可能となった。基本機能はもちろん、編集の効率化や現場で生じるニーズへの対応など、小規模プロダクションが直面する課題解決を容易にする機能など、映像制作をサポートする機能や昨今の映像制作のトレンドに応える機能の数々が評価された。
準グランプリ
- 案件名:世界初!ST2110-40でアンシラリインサートを行う「AS 2110 VANC Inserter」
- 出展者名:株式会社アンバーサイン
〈案件概要〉
放送局の運用においてアンシラリは必要不可欠であるにも関わらず、ST2110のアンシラリ規格(ST2110-40)に特化した製品は市場にはほとんどなかった。そこで開発したのが、AS 2110 VANC Inserterだ。元のST2110-40ストリームを受信し、任意のアンシラリを付加したST2110-40ストリームを"フレーム遅延なし"で送信可能である。
〈選評〉
アンシラリに特化した製品が欲しいという放送局からの要望に応え、ST2110-40ストリームに任意のアンシラリを付加し、フレーム遅延なしで送信する特許技術を取り入れた製品だ。世界初というユニークさに加え、PTPに基づくタイムコードの送出や局間制御信号、情報カメラ等のID情報など任意のアンシラリ送出が可能など、現場の欲している技術を提供している点に加え、製品担当者が放送局の技術者であったからこそ実現した「現場に寄り添った機能」が評価された。
コンテンツ制作 / 放送・メディア(トータルソリューション)部門賞
グランプリ
- 案件名:世界初のPTZカメラ用電動ペデスタル「LX-ePed 2」
- 出展者名:平和精機工業株式会社/Libec
〈案件概要〉
「LX-ePed 2」は世界初のPTZカメラ用電動ペデスタルシステムだ。本製品は遠隔での画角調整を可能とするだけでなく、精密な昇降性能を有しているため、オンショットでの画角バリエーションにも寄与する。付属のハンドリモコンや、フットペダルでの操作の他、IP通信プロトコル、シリアル通信プロトコルを用いての各PTZカメラ用コントローラーでの操作、専用PCアプリでの操作にも対応している。
〈選評〉
リモートプロダクションなどで活用が進むPTZカメラにおいて、カメラが有するパン、ティルト、ズーム機能に加えて昇降機能を付加することで活用の幅を広げることができる電動ペデスタルだ。カメラメーカーの通信プロトコルに対応することで、PTZカメラコントローラーで操作できるほか、オプションのフットペダルで昇降操作を行うことも可能。スタジオの無人化だけにとどまらない、クリエイティブワークにも活用できるポテンシャルが評価された。
準グランプリ
- 案件名:AIを活用したハイブリッドな映像配信ソリューション(クラウド&オンプレミス)
- 出展者名:Harmonic Japan合同会社
〈案件概要〉
Cloud SaaS「VOS360」上でのAIを利用した映像配信ソリューションだ。新規サービスの早期構築と運用コストの削減を目標とした、各種AIパートナーと協業・開発中のAIソリューションと合わせて、「AIオンプレミス」という独自のコンセプトを紹介する。
〈選評〉
映像配信分野でもAIの活用は進み、多言語リアルタイム翻訳や広告配信など、従来では手間やコストがかかっていた分野での効率化、省コスト化が著しい。HarmonicのAIソリューションでは、例えばスポーツ中継などに際して映像を文章化し、文脈に基づいて広告を入れるなどの信号を送出する。また、音声の翻訳においてもAIによる翻訳で8割程度の精度を実現している。それぞれのAIサービスは単独で利用することも可能だが、それを統合してワンストップで提供できることがこのソリューションの強みであり、今後の可能性に期待が寄せられた。
エンターテインメント / ライティング / 映像表現部門賞
グランプリ
- 案件名:EMO-JP/FYLo EDU-JP
- 出展者名:株式会社レッドクリフ
〈案件概要〉
EMO-JP:最大20Wと合計12灯の高輝度LEDと多彩なアタッチメントにより、夜空を鮮やかに彩る演出が可能なドローンショー専用機体だ。RTK測位による精密制御とマルチセンサー冗長性で安全性を確保し、自動配置・自動補充機能により大規模ショーも効率的に運用できる。
FYLo EDU-JP:屋内ドローンショー専用機体FYLoは、天候の影響を受けずに没入感ある演出を実現する。UWBやToFによる高精度測位で最大200機の同時飛行が可能だ。飛行申請不要で導入しやすく、展示会やライブ、教育など多彩なシーンでの活用が期待されている。
〈選評〉
スタートアップとして新しい映像表現に挑戦し続けているレッドクリフは、花火大会をはじめ、大阪・関西万博の閉幕日に大規模なドローンショーを実施するなど、国内におけるドローンショーの第一人者として知られている。「EMO-JP」は、屋外用として花火やエアドロップを搭載するなどアクセサリーも充実。またFYLo EDU-JPは、飛行申請が不要な屋内用で、GPSに頼らないUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信規格)やToF(Time Of Flight)測位を活用した高精度測位を実現した。機体や制御などの技術にとどまらず、ドローンショーの可能性を広げる企画運営まで含めた総合力が高く評価された。
準グランプリ
- 案件名:クロウディシリーズ
- 出展者名:株式会社五常
〈案件概要〉
映像・音響業界向けに開発された折りたたみ式ブラックカゴ台車「クロウディ」シリーズだ。直径200mmの大径エアキャスターで衝撃を吸収し、精密機材を安全に運搬する。両面折りたたみで軽車両にも積載可能だ。アルミ製で軽量かつ防錆性に優れ、使用環境や車両に合わせて選べる3サイズを展開。豊富なオプションにより作業台や荷崩れ防止機能も備えた、現場の声を形にした機能美の結晶である。
〈選評〉
業界の現場の声から誕生したブラックカラーの折りたたみ式カゴ台車「クロウディシリーズ」は、物流用カゴ台車の半分のサイズであり、オプションのスロープと組み合わせることで、制作会社が使用する商用バンに機材を乗せたまま積み下ろしが可能となる。エアキャスターを採用することで走行性能も向上し、「限られた人数・時間・予算で効率的に撮影したい」というニーズにマッチしている。販売に際してはニーズをヒアリングして最適な構成を提案するなど、現場に寄り添った製品開発から販売までの取り組み姿勢も含めて評価された。
審査委員会賞
- 案件名:AI生字幕制作システム「J-TAC Pro」
- 出展者名:株式会社テレビ朝日クリエイト
〈案件概要〉
テレビ放送の生放送番組に付与する字幕テキスト制作を「より簡単・より効率的・より迅速」に行える革新的なAI生字幕制作システムだ。高精度なAI音声認識とAI自動改行機能といった複数のAI技術を組み合わせることで、視聴者にとって正確で読みやすい字幕テキストがリアルタイムで生成され、人間は誤り箇所を修正するだけで字幕テキストが完成するため、制作負担を大幅に軽減できることが特徴となる。
〈選評〉
生放送番組の字幕制作において、従来では高いタイピングスキルを持ち、専用キーボードを使用した3名体制だった作業を、AIによるテキスト自動生成と1名の校正者によるチェック体制にでき、大幅な省力化が可能としている。また、単語登録を行うことでニュースにおいては98%以上の認識精度を実現した。事業者への字幕提供が求められる「障害者差別解消法」改正も踏まえ、幅広い需要を見込むとしている。系列局以外の放送局への販売も行うという従来には見られなかったビジネスの可能性など、今後への期待も含めて審査委員会賞とした。
- 案件名:DaVinci Resolve 20
- 出展者名:ブラックマジックデザイン株式会社
〈案件概要〉
オールインワンソフトウェアとして進化し続けるDaVinci Resolve。最新のDaVinci Resolve 20では、AIによりルーチン的・定型的な処理を肩代わりさせ、クリエイターはより創造的な部分に集中できる。さらにDaVinci Resolveに搭載されているAI機能は外部サーバーに接続せずオフラインの状態でも使用でき、クリエイターの素材がAIトレーニングに使われることがない。
〈選評〉
映像編集からカラーグレーディングまで映像制作のワークフローを幅広くカバーする「DaVinci Resolve 20」は、Studio版にはノイズ除去や生成AIを活用したツールの数々や共同編集機能などが追加され、高度な動画編集に対応する進化がなされている。米国ではハリウッド映画の制作にも広く採用され、日本においてもテレビ放送局における編集システムへの採用が進むなど、技術的進化と共に映像制作業界のインフラ的存在になっている点も踏まえ、審査委員会賞が相応しいと評価された。
