公正取引委員会は令和7年(2025年)12月24日、「映画・アニメの制作現場におけるクリエイターの取引環境に係る実態調査」の結果を公表した。
同調査は、令和6年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」に基づき実施されたものだ。映画・アニメ等のクリエイター個人の創造性が最大限発揮される取引環境を整備するため、先行した音楽・放送番組分野に続き、年明けから実態調査が行われていた。
調査の概要と回答状況
調査は、アンケート調査、ヒアリング調査、情報提供フォームの活用によって実施された。アンケートは制作会社1,607社、フリーランス2,000者超に送付され、制作会社から436社(回収率27.1%)、フリーランスから143者の回答を得た。また、制作会社、フリーランス、業界団体、製作委員会、有識者など計67名へのヒアリング調査も行われた。
映画製作の市場構造
報告書では、映画製作に係る市場概要として、製作委員会方式における取引主体と収益構造が整理された。出資者(映画会社、テレビ局、出版社など)で構成される「製作委員会」が、元請制作会社に制作を委託し、そこから下請制作会社やフリーランス(監督、脚本、カメラマン、アニメーター等)へ再委託される重層的な構造となっている。
主な指摘事項と法令上の問題点
今回の調査では、取引段階(契約、制作過程、支払)ごとに問題となり得る行為が指摘された。
「製作委員会・元請間」「元請・下請間」「制作会社・フリーランス間」の各取引において、不十分な取引条件の明示、著しく低い取引対価(買いたたき)、発注取消し、期間延長に伴う追加費用の不払い、減額や支払遅延などが確認された。
これらは、独占禁止法(優越的地位の濫用)、取適法(取引適正化法 ※令和8年1月1日施行の改正下請法)、フリーランス・事業者間取引適正化等法における違反となり得る類型として整理されている。
今後の対応:ガイドライン策定へ
公正取引委員会は本報告書の公表とともに、独占禁止法、取適法、フリーランス・事業者間取引適正化等法上問題となる行為の未然防止の観点から、製作委員会の構成事業者、制作会社、フリーランスに係る関係事業者団体等に対して内容の周知を行った。
また、関係省庁と連携しつつ、関係事業者による取組の進捗を注視するとともに、独占禁止法等の違反行為がある場合には厳正・的確に対処していくとしている。
今後は本報告書の内容を基に、独占禁止法、取適法、フリーランス・事業者間取引適正化等法及び競争政策上の具体的な考え方を示す指針(ガイドライン)を策定し、公表する予定である。