前回の取材から数カ月、ATOMOSの動きはさらに加速している。ISE2026での「Shogun AV-19」発表に続き、CP+2026では「Ninja RAW」を世界同時公開。単発の新製品にとどまらず、「Ninja」を軸としたエコシステム戦略が、より明確な形を伴って動き始めた。
会場で再会したピーター氏の言葉からは、確かな手応えと次の成長段階を見据える視座が感じられた。なぜCP+を"世界一のカメラショー"と語るのか。「Ninja RAW」に込めた思想とは何か。そしてワークフロー別に整理された製品群が示す未来像とは。ATOMOSが迎えた新たなフェーズの最前線を、ピーター氏の言葉からレポートする。
CP+2026が世界一のカメラショーである理由
――世界には無数の展示会がありますが、ピーターさんにとってCP+2026というのはどんな展示会でしょうか?
ピーター氏:
私はCP+が大好きです。CP+は間違いなく世界一のカメラショーだと思っています。それも、断トツでね。
各カメラメーカーが素晴らしいプレゼンテーションを披露しているだけでなく、最新技術から自社の技術的な歴史までを丁寧に紹介しています。そして何より素晴らしいのは、数多くの写真家や映像作家たちがカメラを持ち寄り、自身の活動を共有しながら、新たな技術を学び合っている姿です。カメラメーカーが製品を展示するだけでなく、クリエイターたちが集い、互いに刺激し合うこの融合こそが、まさに素晴らしい光景なのです。
また、これほど多くの熱心なカメラ愛好家が一堂に会するイベントは、世界中を探しても他にないでしょう。非常に充実した展示会だと思います。
ATOMOSの戦略とエコシステムの進化
――ISE2026で「Shogun AV-19」、1カ月後のCP+2026で「Ninja RAW」発表。ATOMOSは元気ですね。
ピーター氏:
そうですね。ここ数年、私たちはATOMOSに再び大きな勢いをつけるべく懸命に取り組んできました。その努力の成果が、昨年あたりから徐々に現れ始めています。
最初に「Ninja TX」を発売し、続いて「Shinobi 7 RX」を投入しました。さらにビデオトランスミッター/レシーバーやヘッドホン、マイクなど、カメラ周辺機器を網羅するエコシステム製品も多数展開しています。開発ロードマップも順調です。昨年はNinja TXやNinja TX Goを投入し、このCP+2026では世界同時発売となる「Ninja RAW」を発表しました。これは、全面的に刷新・強化された新しいNinjaプラットフォームの一翼を担う製品です。エンジニアリングチームの尽力には本当に誇りを感じていますし、今後も開発の手を緩めるつもりはありません。
また、約1カ月前にスペインで開催されたISEでは、放送用AVラックマウントソリューション「Shogun AV-19」も発表しました。しかし、これは開発中の数多くの製品の一つに過ぎません。今後も勢いを維持し、クリエイターの皆様にさらなるソリューションを提供すべく全力で取り組んでいます。
映像制作者向けのオンカメラの商品として"Ninja"エコシステムの開発を進める一方で、放送・AV分野向けには"Shogun"ソリューションを提供していますし、フィールドモニターとして"SUMO"シリーズ、リファレンスモニター分野での開発についても議論を重ねています。私たちはATOMOSを、単なるオンカメラモニターレコーダーのメーカーとしてではなく、カメラから作品の納品までエコシステム全体をカバーする存在として認知してもらいたいのです。私たちの商品が提供するソリューションがワークフロー全体を支え、エコシステムをより充実させていく。これこそが、現在ATOMOSが取り組んでいる核心部分です。
「Ninja RAW」誕生の背景と製品選びの指針
――Ninja RAWという名前には驚きました。この名前に込められた思いを教えてください。
ピーター氏:
「Ninja RAW」と名付けた理由は、NinjaシリーズのDNA、つまり私たちの原点に立ち返るためです。
私たちの強みは、世界最高のカメラから直接RAW映像を記録できることにあります。高解像度かつ高ダイナミックレンジのHDR映像を、RAW形式で記録できるのです。今や「ProRes RAW」は業界標準となりました。AppleやAdobeで利用可能なのはもちろん、昨年ついにDaVinci Resolveでもサポートが発表されました。これは業界標準であることを意味します。当社はこのフォーマットを強く支持するとともに、あらゆる映像制作者が最高品質のRAW記録を手頃な価格で実現できる、エントリーレベルのモニターレコーダーを提供したいと考えました。それがNinja RAWを開発した理由です。現在、多くの企業がカメラモニターレコーダーを製造していますが、ProRes RAWを記録できる製品は他にありません。
場合によっては、撮影者が「そのデバイスでは必要な品質が記録できない」ことに気づかず、誤解が生じてしまう可能性もあります。そこで私たちは、最高峰のカメラが出力するRAW信号から最高品質のProRes RAWを記録できる製品を開発すると同時に、標準的な動画や通常のProResファイルの記録オプションも提供したいと考えました。もちろん、ATOMOS製品ならではのカメラコントロール機能や各種モニタリングツールも内蔵しています。これはまさに、RAWワークフローを強化するための設計です。
私たちがこれほど情熱を注ぐ理由は、ここに集まる何千人ものカメラ愛好家と同じです。彼らは高品質なカメラと優れたレンズ、そしてRAW形式の圧倒的な高画質を求めているのです。
――現在はNinja RAW、Ninja TX Go、Ninja TXの3種類となりました。それぞれの選び方について教えてください。
ピーター氏:
ターゲットとなるお客様は同じですが、選択は「ワークフロー次第」となります。Ninja RAW、Ninja TX Go、Ninja TXのいずれも基本的な作業は可能ですが、適したワークフローが異なります。
「Ninja RAW」は純粋なレコーダーです。カメラに接続してデバイスに直接記録したい場合に適しています。カメラからクラウドへのワークフローが必要な場合は、Wi-Fiとクラウド機能を備えた「Ninja TX Go」が最適です。これが製品間の主な違いです。
また、SDI端子を備えたカメラを使用する場合や、マルチカムの収録などワイヤレスタイムコード同期が必要な場合は「Ninja TX」を選択してください。このように、私たちはカメラの種類やワークフローに応じて、段階的な選択肢を提供しています。ご存じの通り、Ninjaの全機能を求める方には、すべてを内蔵したNinja TXを強く推奨します。しかし、Wi-FiやSDIが不要であれば、他の2モデルからお好みのものを選んでいただけます。
今後の展望とNABへの意気込み
――最後にNABへ向けての新製品のヒントを教えてください。
ピーター氏:
具体的な内容はまだ言えませんが、NABでは間違いなく新製品を発表します。私たちは新製品の開発に全力で取り組んでおり、2025年のNABから現在に至るまでの勢いを、確実に感じていただけるはずです。
今後は2~3カ月ごとに新モデルが登場し、次々と新製品をリリースしていく予定です。NABでの発表を皮切りに、その数カ月後、そしてIBCでも新製品を発表します。どうか当社の動向を注視し、関心を持ち続けてください。私たちはより多くのソリューションを提供すべく全力で突き進んでいます。具体的な内容は明かせませんが、クリエイティブな仕事に携わる皆様にとって、きっと喜んでいただける内容になるはずです。