TVS REGZA株式会社は、全国500万台を超えるテレビ「レグザ」のユーザーから許諾を得たうえで収集する視聴データ(以下:レグザ視聴データ)を活用し、番組・CMの視聴動向をはじめとする生活者のテレビ利用実態について、日々分析を行っている。
このたび、レグザ視聴データならではの指標である「番組流入出データ※」に着目し、関東民放キー局の人気5番組を対象とした視聴実態分析の結果が公開された。
※ ある機器が「電源オフ」「YouTube等の配信サービス」「放送他局の番組」等のいずれかの視聴・状態から対象番組視聴へ切り替わったか(流入)、また対象番組からどこへ切り替わったか(流出)を、秒単位のログから可視化する独自指標だ。なお、集計対象は視聴ログの取得・使用について許諾された機器に限られる。
背景・目的
動画配信サービスの普及により、生活者のコンテンツ視聴スタイルの多様化が進んでいる。テレビのリモコンにも配信サービスのダイレクトボタンが標準搭載され、視聴者は地上波とネット動画をシームレスに行き来する時代となった。
こうした環境変化の中で、「地上波の番組は今も視聴者を引き付ける力を持っているのか」「視聴者はどのような基準でチャンネルを選んでいるのか」を明らかにすることは、放送局における番組編成やコンテンツ制作を考えるうえで重要な示唆になると考えているという。
特に、配信サービスが浸透した現在でも、視聴者が特定の番組を目的にテレビへ切り替える行動がどの程度存在するのかは、テレビコンテンツの価値を捉えるうえで重要な観点だ。
レグザの稼働テレビから得られる視聴ログは、こうした「現代の視聴者のリアルな行動」を1秒単位で精緻に捉えることができる※。今回は、視聴者が「どこから来て、どこへ行くのか」を番組流入出データから分析することで、良質なテレビコンテンツが今なお放つ強い求心力と、視聴者の明確な視聴目的を浮き彫りにする。
※ レグザの視聴データは機器のログを使用しているため、「あるテレビがどの画面を映していたか」を秒単位で追うことができ、「テレビの電源を消した」「YouTubeやVODから地上波に変えた」「他局からチャンネルを変えた」といった細かな行動変容の可視化が可能だ。このデータは放送局にも提供され、より良いコンテンツ制作に活用されている。
分析結果:番組流入出から見える2つの視聴スタイル
今回、民放キー局の人気5番組(日本テレビ「月曜から夜ふかし」、TBSテレビ「水曜日のダウンタウン」、テレビ東京「シナぷしゅ」、テレビ朝日「報道ステーション」、フジテレビ「全力!脱力タイムズ」)を対象に番組流入出データを分析したところ、大きく分けて以下の2つの傾向が明らかになった。
- 番組そのものを目的とした視聴(目的視聴)
- 視聴者の趣味嗜好・文脈に沿った回遊
あわせて、配信視聴中から特定番組へ切り替える行動や、番組視聴後に電源をOFFにする行動など、テレビ番組ならではの強い求心力を示す視聴行動も確認された。
以下、それぞれの傾向を具体的な番組データとともに紹介する。
傾向1:配信からテレビへ。強い求心力を持つ「目的視聴」
Case1:月曜から夜ふかし(日本テレビ系列)
月曜22時から放送される人気バラエティ「月曜から夜ふかし」は、深夜帯に差し掛かる時間帯でありながら、レグザのライブ率(番組がリアルタイム視聴された割合)では6%以上を記録する番組だ。流入出先を「VOD※・YouTube」に絞って分析すると、特筆すべき傾向が見られる。
※ VODとは「Video On Demand」の略称で、NetflixやTVer等、レグザで視聴することができる配信サービスを指す。
通常、テレビ番組をザッピングして見たい番組がないと、そのままYouTube等の外部サービスへ流出してしまうケースが多い。一方、本番組では開始の22時に合わせて「YouTubeから地上波(本番組)へ流入(スイッチ)してくる」機器が一定数存在している。数あるネットコンテンツを視聴中であっても「この時間は『夜ふかし』を見る」という強い目的を持った視聴者がテレビの前に集まっている証左であり、良質なコンテンツはテレビの前の人を引き付ける強い力があることが推し量れる。
Case2:水曜日のダウンタウン(TBS系列)
水曜22時台の人気バラエティだが、こちらの波形は「月曜から夜ふかし」とは異なる形で視聴者の「目的視聴」の強さが表れている。
番組終了間際の流出データを見てみると、他局の番組や「VOD・YouTube」等へ流出(ザッピング)するのではなく、「テレビの電源をOFFにする」スコアが一定数跳ね上がっている。これは「この番組を見るためにチャンネルを合わせ、見終わったから消した」という世帯(機器)が多く存在することを示しており、番組に対する目的意識の高さがうかがえる。
Case3:シナぷしゅ(テレビ東京系列)
目的視聴の3つ目の事例は、朝の時間帯(7時30分~)に放送される乳幼児向け番組「シナぷしゅ」だ。ニューファミリー層に向け、IPを活用した展開も積極的に行っている。
朝の時間帯は各局でニュースや情報番組が並ぶ激戦区だが、「シナぷしゅ」視聴者の流入元を見ると、同じくターゲット層が近いEテレからの流入が確認できる。また、レグザの視聴者層データから家族利用テレビや子育て層(30代女性、チャイルド・幼児)を見ても同じ傾向が見られ、特に家族利用のテレビでしっかり視聴されていることがわかった。特定層をターゲットとした番組には「それを見たい層が能動的にチャンネルを合わせに来ている」という明確な視聴行動が確認できる。
傾向2:視聴者の趣味嗜好が導く「文脈の回遊」
Case4:報道ステーション(テレビ朝日系列)
続いて、視聴者の「見たいジャンル(趣味嗜好)」に沿った回遊行動に注目する。月~金曜21:54から放送される「報道ステーション」では、22時を境に大きな流入の山が確認できる。
この流入元を辿ると、直前まで放送されていたNHK「ニュースウオッチ9」が終わったタイミングでの移動が多数を占めている。つまり「ニュース・報道を見たい」という視聴者が、番組の終了や区切りのタイミングで別ジャンルに留まるのではなく、他局の報道番組へとチャンネルを移すという「ニュース好きの自然な回遊」が見て取れる。また、終盤(23時以降)はTBSやテレビ東京などのニュース・報道系番組への流出も多く、この時間帯から報道番組が始まる編成とも符合する。
Case5:全力!脱力タイムズ(フジテレビ系列)
金曜23時から放送される「全力!脱力タイムズ」では、流入元を見ると直前まで放送されている「報道ステーション」から断続的な流入が確認できる。
一見、報道からバラエティへの異ジャンル移動に見えるが、本番組は「ニュース番組をパロディ化した、ジャーナリズム性のあるバラエティ」という独自の切り口を持っている。報道ステーションを見ていたニュース・報道好きの視聴者が、その文脈や趣味嗜好を保ったまま知的な笑いを提供する本番組へと自然に流れ着いているという、興味深いインサイトが浮かび上がる。
主な発見:流入出データから見えた視聴行動
- 「月曜から夜ふかし」では、番組開始に合わせてYouTubeなど配信サービスから地上波へ切り替わる視聴行動が確認された。
- 「水曜日のダウンタウン」では、番組終了後に他局や配信へ移るのではなく、テレビの電源をOFFにする世帯が一定数存在した。
- 「シナぷしゅ」では、ターゲット層が近い番組からの流入が見られ、朝の時間帯でも特定層が能動的にチャンネルを合わせていることがうかがえた。
- 「報道ステーション」と「全力!脱力タイムズ」では、視聴者の趣味嗜好や番組文脈に沿った回遊行動が確認された。
まとめ
今回の番組流入出データからは、YouTubeなどネット動画の勢いが止まらない昨今においても、「特定の番組を見るために配信からチャンネルを変える」「その番組が終わったらテレビを消す」といった視聴者が一定数存在していることが確認された。また、番組ごとのターゲットの違いや、視聴者の趣味嗜好が現れる緻密な棲み分け・回遊が行われていることもわかった。
魅力的なコンテンツの制作こそが視聴者を獲得する最大の原動力であるという事実は、テレビ業界全体を盛り上げるうえで非常に重要な示唆だという。
TVS REGZAでは、今回紹介した流入出データのほかにも、テレビ画面上でのアンケート機能を用いた番組調査など、放送局の番組づくりや編成戦略をデータ提供とその分析でサポートする体制を整えている。今回の分析も、そうした視聴データ活用の一例として実施された。