総務省は、株式会社放送衛星システム(B-SAT)から免許申請のあった衛星基幹放送局について電波監理審議会に諮問し、同審議会から諮問のとおり予備免許を付与することを適当とする旨の答申を受けた。対象は2029年度後半に打ち上げ予定の次期BS放送用衛星に係る衛星基幹放送局5局で、4K・8K(超高精細度テレビジョン放送)を含むBS放送の伝送インフラを担う。
背景
放送衛星業務用の周波数を使用する衛星基幹放送を行う新たな衛星基幹放送局の免許申請受付を2026年7月3日(金)から同年8月31日(月)まで行ったところ、株式会社放送衛星システムおよびスカパーJSAT株式会社の2者から申請があった。
これらの申請について、電波法(昭和25年法律第131号)第7条第2項の規定に基づき審査を行い、2026年10月19日、株式会社放送衛星システムから申請のあった衛星基幹放送局5局の予備免許について電波監理審議会に諮問したところ、原案を適当とする旨の答申を受けた。
申請の概要
今回の公募は、2029年度後半に打ち上げを予定している次期BS放送用衛星に係る衛星基幹放送局を対象としたもの。両者とも2026年8月31日に申請しており、基幹放送の種類はいずれも超高精細度テレビジョン放送(4K・8K)、高精細度テレビジョン放送(HD)、標準テレビジョン放送、超短波放送、データ放送。工事落成の期限はいずれも2030年7月31日となっている。
希望する周波数(チャンネル)は以下のとおり。
- 放送衛星システム:第1希望9ch、第2希望10ch、第3希望12ch、第4希望11ch。さらに第1〜4希望の割当てが得られない場合の業務継続策として、第5希望8ch、第6希望7ch、第7希望6chを提示
放送衛星システムはあわせて、他の申請者の申請に劣後して希望する周波数の指定が受けられず、かつ他の申請者への割当て後に周波数の残余がある場合には、その残余周波数の指定を希望 - スカパーJSAT:合計6ch
申請者の概要(2026年9月末現在)
- 株式会社放送衛星システム:1993年4月設立、東京都府中市。資本金150億円。主な出資者は日本放送協会、WOWOW、TBS、テレビ朝日、BS日テレ、ビーエスフジ、BSテレ東。現在、BS放送の無線局免許人として基幹放送局提供事業を実施
- スカパーJSAT株式会社:2007年4月設立、東京都港区。資本金101.72億円。現在、東経110度CS放送の無線局免許人として基幹放送局提供事業を実施
審査の方法と免許方針
審査は「絶対審査」と「比較審査」の2段階で実施された。
- 絶対審査:衛星ハード事業者として最低限満たすべき基準への適合を審査。免許方針の主な絶対審査事項は、BS・CSの共同衛星であり単独または他者との連携により12chを全て使用すること、衛星調達を適正かつ安価にする工夫、衛星基幹放送事業者への料金算定根拠・コスト構造等の等しい情報開示、事業者の負担額が既存料金より低廉かつ上限額が定められていること、事業者の意向聴取方法の明確化、既存事業者の事業継続に必要な地上放送設備の確保など。
- 比較審査:複数の申請者が絶対審査をクリアし、希望周波数が重複している場合に実施。資金計画・設備整備計画の確実性、衛星の調達・打上げ費用の低廉化、衛星基幹放送の安定的な提供・普及、インフラコストの料金水準、BCPやサイバーセキュリティ等の安全・信頼性対策について比較する。
絶対審査の結果
両者の申請について、工事設計の技術基準への適合性、周波数割当ての可能性、経理的基礎、技術的能力、基幹放送局の開設の根本的基準への適合性、免許方針への適合性を審査した結果、欠格事由に該当せず、いずれにも適合していると認められた。
ただし、一つの衛星で公募対象の12ch全てを使用することが要件となっており、これを満たすのは放送衛星システムの第3希望(12ch)、またはスカパーJSATの希望(6ch)と放送衛星システムの第7希望(6ch)の組み合わせのみ。後者の組み合わせであれば双方に予備免許が可能だが、複数の希望がある場合は優先順位の高い順に審査することとされているため、放送衛星システムの第3希望とスカパーJSATの申請の間で比較審査が行われた。
比較審査の結果
比較審査は対抗的審査で実施され、各比較審査事項について他の申請者より優位と判定した場合に1点を付与。結果は放送衛星システム2点、スカパーJSAT0点となった。
(1)資金計画・設備整備計画等の確実性:放送衛星システム1点/スカパーJSAT0点
- 経理的基礎:スカパーJSATは必要資金総額を自己資金で確保。放送衛星システムは一部をみずほ銀行を幹事とするシンジケートローンで借入予定のため、この項目はスカパーJSATが優位
- 設備の整備計画:放送衛星システムは管制設備、アップリンク地球局を既存設備で運用し、2033年に新たな予備衛星を調達(それまでは既存衛星を活用)。スカパーJSATは予備衛星について放送衛星システム所有の衛星の利用を想定し、送信設備・地球局設備を新設する計画。おおむね既存設備を活用する放送衛星システムが優位と評価
- 高度な技術者の確保:放送衛星システムは衛星管制センターの社員全てが無線従事者(うち一技または一陸技が80%)、年間100回以上の訓練を実施するなど計画的な人材育成を示し、優位と評価
(2)衛星の調達・打上げ費用の低廉化:両者0点(同等)
対象衛星は両者が共同調達するものであることから同等と評価。設計寿命は放送衛星システムが15年以上・燃料寿命19年(制御ソフトの開発による高傾斜角軌道運用などで延伸策を実現するとしてい設計寿命15年・燃料寿命15年以上。
(3)衛星基幹放送の安定的な提供及び普及:両者0点(同等)
事業計画やコスト構造の開示、料金水準・役務内容の協議方法、普及活動計画について、両者とも方法と改善計画が示されており同等と評価。
(4)放送局設備供給役務の料金の見込額:放送衛星システム1点/スカパーJSAT0点
広帯域伝送方式のHD放送(水平方向の輝度信号画素数1440)を実施する場合の料金見込額(月額)は、放送衛星システムが1,560万円、スカパーJSATが1,850万円で、放送衛星システムが優位。
(5)安全・信頼性の確保:両者0点(同等)
自然災害時の事業継続体制、サイバーセキュリティ(放送衛星システムはゼロトラストアーキテクチャー、多層防御、CSIRT連携、衛星運用ネットワークの外部からの完全分離など)、経済安全保障上のリスク対策、地上放送設備の物理的脅威への対策について、両者とも必要な取り組みが示されており同等と評価。
比較審査の結果、放送衛星システムの申請が優位であったため、同社に予備免許を与えることとなった。
予備免許の概要
- 無線局の種別:衛星基幹放送局(5局)
- 免許人:株式会社放送衛星システム
- 無線局の目的:基幹放送用
- 基幹放送の種類:超高精細度テレビジョン放送、高精細度テレビジョン放送、標準テレビジョン放送、超短波放送、データ放送
- 電波の型式:34M5G7W、34M5D7W(超高精細度テレビジョン放送に限る)
- 周波数:11.72748GHz、11.76584GHz、11.8042GHz、11.84256GHz、11.88092GHz、11.91928GHz、11.95764GHz、11.996GHz、12.03436GHz、12.07272GHz、12.11108GHz、12.14944GHz
- 空中線電力:120W(最大等価等方輻射電力850kW)※周波数の使用は国際調整の結果を遵守すること
- 1秒におけるシンボル数:33.7561Mbaud(超高精細度テレビジョン放送の場合)、28.860Mbaud(超高精細度テレビジョン放送以外の場合)
予備免許にあたっては、インフラコストの低減化や透明化などの実効性を確保するため、電波法第104条の2第1項の規定により、衛星基幹放送事業者の負担額の低廉化、事業者への情報開示等、免許申請時に提出した事業計画を遵守し、遵守状況を1年ごとに報告することが条件として付された。
あわせて以下の事項が要請された。
- 近年激甚化・頻発化する気象災害や大規模地震等を想定し、災害対応体制の充実、予備送信機・予備電源等の整備など放送施設の安全・信頼性の一層の向上に努めること
- 放送の公正かつ能率的な普及の観点から、基幹放送局提供事業者としての役務の提供の一層の効率化に努めること
今後の予定
総務省では、本答申を受け、速やかに予備免許を交付する予定。