Bluetooth SIG(Special Interest Group)は、Bluetooth技術の進化における次の重要なマイルストーン「Bluetooth 高データスループット(High Data Throughput)(以下:Bluetooth HDT)」の採択を発表した。Bluetooth HDTは、データ転送の高速化、通信容量の拡大、エネルギー効率の向上、信頼性の向上を実現するという。Bluetooth技術の性能の限界を大きく押し広げることで、次世代のワイヤレス体験と、世界のBluetoothエコシステム全体における継続的なイノベーションを支える基盤を確立するとしている。

Bluetooth SIGのCEOであるネヴィル・マイヤーズ氏は、次のようにコメントしている。

マイヤーズ氏:世界で最も広く利用されているワイヤレス通信規格として、Bluetooth技術は、つながりがますます広がる世界で高まるニーズに応えるため、進化を続けてきました。Bluetooth SIGのメンバーコミュニティは、今回もこの課題に応えました。Bluetooth HDTは、Bluetooth技術の性能を新たな水準へと引き上げ、消費者向け、商業、産業用の各市場においてBluetooth技術が果たす役割を広げるとともに、次世代のワイヤレスイノベーションを実現するための強固な基盤を築きます。

Bluetooth HDTでは、堅牢性に優れた変調方式を採用した新しい物理層(PHY)が導入された。これにより、Bluetooth LEデバイスはより効率的に通信し、Bluetooth通信リンクを通じて従来よりも大幅に多くの情報を伝送できるようになる。Bluetooth HDTの最大ビットレートは7.5Mbpsに引き上げられ、Bluetooth LE 2M PHYの約4倍に相当する。

Bluetoothの性能が4つの側面で進化

ワイヤレス接続に対する需要の高まりに対応するには、速度だけではなく、より大量の情報を効率的かつ高い信頼性で伝達できる能力が求められるという。Bluetooth HDTは、単なる通信速度の向上にとどまらず、Bluetoothデバイスがより多くのデータを転送し、無線リソースをより効率的に活用するとともに、幅広いアプリケーションや利用環境において、より安定した性能を発揮できるようになる。Bluetooth HDTの主なメリットは以下の通り。

  • データ転送の高速化:Bluetooth HDTは、従来のBluetoothの最大スループットと比べて約4倍のデータ転送性能を実現し、同じ時間内に大幅に多くの情報を転送できるようになる。アプリケーションで扱うデータ量が増大するなか、データ転送の高速化は、ワイヤレス通信の応答性向上、転送時間の短縮、データの同期やファイル転送の高速化、ユーザー体験の向上に役立つ。
  • 通信容量の拡大:Bluetooth HDTは、周波数利用効率を高めることで、利用可能な無線リソースの範囲内でデバイスがより多くのデータをやり取りできるようになる。これにより、ますます高度化し、扱うデータ量が増大するアプリケーションへの対応を強化する。
  • エネルギー効率の向上:Bluetooth HDTは、より短時間でより大量のデータ転送をサポートする。そのため無線部が送信を行う時間が短くなり、低消費電力状態をより長時間保てる。この結果、デバイスの性能強化とエネルギー効率の向上が同時に実現できる。
  • 信頼性の向上:Bluetooth HDTは、通信の堅牢性とレジリエンスを高める。その結果、より幅広い利用環境や、より厳しい動作条件下でも、デバイスがより安定したワイヤレス通信性能を維持できるようになる。

サムスン電子のエグゼクティブバイスプレジデント兼S.LSI事業部CP開発責任者であるキム・ジュンスク氏は、次のようにコメントしている。

ジュンスク氏:Bluetooth HDTの意義は、単なる速度の向上だけにとどまりません。データスループット、通信容量、エネルギー効率、信頼性を同時に高めることで、Bluetooth HDTは、開発者や製品メーカーがより高性能な製品や、より豊かなワイヤレス体験を生み出すための、より強固な基盤を提供します。これらの進化が相まって、より高度なアプリケーション、新たな製品の機会、そしてBluetoothエコシステムの継続的な成長が可能になります。

Bluetoothアプリケーションの新たな可能性を切り開く

Bluetooth HDTを活用した最初の代表的なアプリケーションとして、2027年には標準化されたプレミアムワイヤレスオーディオが登場する見込みだ。より高品質なワイヤレスオーディオ体験への需要が高まるなか、Bluetooth HDTは、標準化されたロスレスオーディオやハイレゾオーディオの実現に必要な通信容量、効率、ワイヤレス性能を提供する。あわせて、マルチチャンネルサラウンドサウンド、空間オーディオ、その他の高品質なBluetoothオーディオ体験の進化も支えるとしている。

こうした性能の向上は、より豊かなオーディオ体験を可能にするだけでなく、幅広いBluetoothアプリケーションにもメリットをもたらす。主な用途には、以下のようなものがある。

  • 没入型・空間コンピューティング:拡張現実(XR)、空間コンピューティング、その他の没入型アプリケーションが進化を続けるなか、Bluetooth HDTは、より応答性の高い体験や、ますます複雑になるデバイス間のやり取りを可能にし、急速に拡大するこの分野に新たなイノベーションの可能性をもたらす。
  • AI対応デバイス:エッジで生成、処理、交換されるデータ量が増加するなか、Bluetooth HDTは、より高度な知能を備え、状況を認識して適応するAI対応の体験を実現するための基盤を提供する。
  • 商業・産業向けソリューション:商業・産業の現場では、ワイヤレス通信への依存度が高まり続けている。Bluetooth HDTは、より高度な自動化、監視、運用システムの実現に必要な通信容量と信頼性を提供する。
  • 日常のコネクテッド機器:ウェアラブルやヘルス・フィットネス機器から、スマートホーム製品、周辺機器、その他のコネクテッド機器にいたるまで、数十億台もの製品が日常のコネクテッド体験を実現するためにBluetooth技術を活用している。Bluetooth HDTは、日常的なデータのやり取りを高速化し、待ち時間を短縮するとともに、データ転送の遅延がコネクテッド体験に与える影響を抑えることに役立つ。

ノルディック・セミコンダクターの短距離無線事業部門エグゼクティブバイスプレジデントであるアイヴィン・ストローム氏は、次のようにコメントしている。

ストローム氏:Bluetooth HDTは、大量のデータを転送する速度を大幅に高めることで、Bluetoothアプリケーションの新たな可能性を切り開きます。たとえば、多様なセンサー情報を含む数時間分のトレーニングデータを、わずか数秒でスマートフォンに同期できるスマートウォッチ。あるいは、データを外部に転送して処理することで、より豊かなAI体験を提供できるスマートグラス。さらには、ユーザーが停止時間をほとんど意識することなく、ファームウェアのアップデートを完了できるスマートホーム製品などを想像してみてください。

Bluetooth HDTは、より高度でデータ集約型のBluetoothアプリケーションへの道を切り開きます。当社のお客さまやBluetoothコミュニティが、これからどのような製品や用途を生み出していくのか、楽しみでなりません。

Bluetooth HDTは、先ごろ採択されたBluetooth Core 7.0に含まれるオプション機能だ。Bluetooth HDTの詳細については、こちらを確認のこと。