配信サービスの差別化に向けたシステム導入

企業の講演会やエンターテインメントイベントなど、幅広いライブ配信を手がける株式会社Jストリーム。近年では、一般企業が自社イベントを配信するケースも増え、ライブ配信サービスの提供形態や競争環境は大きく変化している。

映像制作・配信を専門とする同社では、こうした市場変化のなかで、他の配信事業者との差別化につながる新たなシステムの導入を模索。そこで採用されたのが、「グリーンバック不要で被写体のキーイングが可能なソフトウェアスイッチャー」という特徴をもつ、パナソニックが提供する映像制作ソフトウェアプラットフォーム「Media Production Suite」の有償プラグイン「Video Mixer(AW-SF400G)」だった。

本記事では、同社で配信業務の実務を担う池田大和氏に話を伺い、導入の背景と現場での評価を紹介する。

池田 大和 氏

株式会社Jストリーム
プラットフォーム本部 ライブプロデュース部 プロデュース2課 リーダー
※所属は2025年4月時点のものです。

グリーンバック不要の高精度なAI Keyingを評価

JストリームがVideo Mixerの導入を決めた最大の要因は、「AI Keying」の背景合成機能の精度だった。

同社でライブ配信を担当する池田大和氏は、「以前から映像をリッチに見せるためにクロマキー合成を取り入れていましたが、グリーンバックは照明を均一に当てる必要があり、綺麗に合成するのが難しいという課題がありました」と振り返る。

そうした中、Video MixerのAI Keyingをトライアルで試用したところ、グリーンバックを使わずに、まるでスタジオで調整したかのような自然な背景合成が可能なことを実感したという。

「背景のキャプチャと調整だけで、人物と背景がしっかり分離できました。開発者の方にも技術面の話を伺い、導入を決めました」と、導入時の手応えを語る。

AI Keyingを用いて作成したScene。高精度なキーイングにより、会議室で撮影を行っても背景に別の画像を合成可能
Sceneでは被写体の大きさを調整したり画面内に資料映像を合成することも可能

軽量な構成と少人数オペレーションに対応

現在の運用では、ノートPCにVideo Mixerをインストールし、1台のカメラ映像とPC資料映像を入力。AI Keyingを用いた背景合成を行い、その出力をAV-HSW10に送出。他ソースとの切り替えはAV-HSW10側で行う構成だ。

現場のインフラに応じてNDI®とSDIを併用し、ネットワーク伝送と冗長性も確保。必要最小限の機材で、1人のオペレーターが設営から配信までを完結できる点も評価されている。

池田氏は、Video Mixerの運用について次のように語る。

「Video Mixerは、1名の出演者が資料映像を表示しながら話すようなシンプルな配信で使っていますが、その際にAI Keyingが非常に便利です。ソフトウェアの設定画面から背景をキャプチャするだけで、人物だけを綺麗に切り抜いて別の背景に合成できるので、使い勝手がいいと感じています。資料映像を他の映像に重ねたり、テロップを付けたりといった様々な合成も簡単に行えるため、重宝しています」

従来のグリーンバックを用いた撮影では、出演者が1名でも、正確なクロマキー効果を得るために照明が複数台必要であり、布やポールなどの設営機材も多く、現場にはカメラマン以外に設営担当者の同行が必要だった。

「Video Mixerではグリーンバックが不要になり、照明も念のため1本持参する程度。カメラマン1人で設営から撤収までを完結できるようになりました。セッティングの時間も短縮され、機材・人員の両面で非常にコストパフォーマンスがよく、お客様にも提案しやすくなっています」と池田氏は評価する。

ライブ配信時の撮影システム。Video MixerはノートPCにインストールされており、映像ソースとして、カメラ1台、資料映像送出用PC1台を入力
AV-HSW10。Scene以外のソースとのスイッチングで活用

初導入でも安定運用。配信現場での実績も

製薬会社が主催するWeb講演会でのライブ配信では、従来のハードウェアスイッチャー構成をVideo Mixer中心のソフトウェア構成に置き換えた。初めての現場導入だったが、事前のリハーサルとパナソニックの技術サポートにより、トラブルなく本番運用を終えたという。

導入を経て、池田氏は「Video Mixerを導入したことで、従来のシステムと比較して配信に必要な人員や機材を減らすことができました。出演者1名、カメラ1台でのシンプルな配信において、よりコンパクトな予算でリッチな映像を実現できるようになったため、このシステムでの配信を多くのお客様に提案し、広く運用していきたいと思います」と述べた。

Video MixerのMulti View画面。入力映像やSceneをワンタッチでスイッチング可能

構成機材

Panasonic VMX関連製品
  • Media Production Suite Video Mixer ソフトウェアキー AW-SF400G ×1式
  • コンパクトライブスイッチャー AV-HSW10 ×1台
※クリックで拡大表示

株式会社Jストリーム 会社概要

株式会社Jストリームは、1997年の設立以来、映像制作やライブ配信事業を軸に、配信プラットフォームの提供、Webサイトの構築・運用など多岐にわたるソリューションを展開。企業・メディア各社に対し、ワンストップで動画配信・制作などのプロフェッショナルサービスを提供している。

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