今年のInter BEEへの出展の増加は、放送のデジタル移行によるものだけではないようだ。インターネット配信における動画利用の拡大により、これまで動画を扱うことのなかった新聞社などもWebサイトで利用を始めている。米国ラスベガスで毎年4月に開催されるNAB(全米放送機器展)では、地方局、ネットワーク局、CATV、衛星放送といった放送分野だけでなく、インターネットの動画配信分野、携帯&モバイルへの動画配信分野などを巻き込み、数年前からは参加者10万人超のエレクトロニクスショーへと変貌している。遅ればせながら日本でも、放送分野を越えた映像制作総合機器展としての胎動が始まったようだ。

Panasonic~AVC Worldを推進し、業務用AVCHDのラインアップを参考出展

松下電器産業は、「Sharing the Passion ~HDの感動を世界へ~」をコンセプトに出展を行った。AVC Worldとして、MPEG-4 AVC/H.264ベースで放送用、プロユース向けに展開する事を提案。これまでの、DVCPRO HD、AVC Intraに加え、業務用AVCHDのラインアップを参考出展した。

Inter BEEで初めて公開したのは、SDHCカードを使用したショルダータイプのカメラレコーダーAG-HMC75。撮像素子には1/4型プログレッシブ3CCDを搭載している。日本市場ではDVCPRO HD、AVC Intraの導入がメインになっているため、主に海外向けとなりそうだ。

P2HDには、220万画素2/3型CCDを搭載したAJ-HPX0Gを新たにラインアップ。AVC-Intra記録を採用する事により、フルHDの記録が可能になった。

マルチフォーマットシリーズのカメラレコーダーにも、新たに220万画素2/3型CCDを搭載したショルダータイプのAK-HC3500を追加した。1080/59.94iと1080/50iのHDフォーマットを切り替えて使用できる。お天気カメラ・情報カメラ用途の多目的マルチフォーマットカメラAK-HC1800も出展している。

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Apple~米国発の新カメラメーカーRED DIGITAL CINEMAが特別公演

アップルジャパンは、ノンリニア編集スイート製品であるFinal Cut Studio 2に含まれる各製品を中心にHD制作ワークフローを提案した。

Final Cut Pro 6には、エンコード/デコードを繰り返しても世代劣化が少なく、10 bit 4:2:2画質のHDをSD並みのファイルサイズで取り扱える編集コーデックProRes 422や、異なるフレームレートや解像度、コーデックを混在できるオープンフォーマットタイムラインなどの新機能を搭載した。ブースでは、ソニーのXDCAM EXを用いたネイティブ編集や、松下のAVC IntraのProRes 422編集のデモも行っている。

Motion3は、3D空間でのエフェクトが可能になり、ペイントツールを強化している。エンコードソフトウェアのCompressor 3は、エンコーディング速度を向上させた。サウンド編集ソフトウェアのSountrack Pro 2は、サラウンド音源の編集も可能にしている。

Final Cut Studio 2のソフトウェア群に新たに加わって注目を集めているのがColor。近年、DI(デジタルインタミディエイト)によるカラーコレクションが脚光を浴びているが、Final Cut StudioにColorを搭載した事で、編集前、撮影段階からカラーグレーディングを行う事が可能になりそうだ。

会期中12時半から、NABで、撮影デモ映像を観るのにブース2時間待ちとなった新カメラメーカーであるRED DIGITAL CINEMAがスペシャルプレゼンテーションを実施。実際に発売したカメラ本体も持ってきており、ブースは人で溢れた。

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Avid~放送局・ケーブルテレビ局・IPTV・ポストプロ・学校での事例を紹介

ステージデモでは、ノンリニア合成フィニッシングシステムAvid DS Nitris、ノンリニア編集システムAvid Media Composerの概要を紹介したほか、Avid Unityを使用したメディア共有ワークフローを紹介した。Avidユーザーによる事例紹介は、これまで放送局・ポストプロダクションを中心にしていたが、今年は幅を拡大。ケーブルテレビ局やIPTV、学校の活用事例を加えた。

ブース内のコーナーでは、Media Composerを中心に構成。Media Composer Adrenalineを利用してキャプチャした映像素材をUnityに保存し、複数のAvid編集システムで共有するプロダクション向けワークフローの紹介や、Media Composerソフトウェアのデモを行った。

メディア共有サーバUnity ISISと収録サーバAvid AirSpeedを使用して素材共有しながらノンリニア編集システムSymphony Nitris、DS Nitrisで編集する、収録から編集まで一貫したテープレスワークフローとして、フジテレビ湾岸スタジオの事例をパネルで紹介している。このほか、高機能キャラクタージェネレータAvid Deko 0 Hybrid、ライブ用 動画/静止画送出サーバAvid Thunder HDの展示も行った。

米AvidTechnologyが、世界初のノンリニア編集システムAvid/1を発表してから20年となった。21日17時半からブースでノンリニア編集20周年を祝うレセプションを開催する。Inter BEE直前に、Avidは来年4月に開催されるNAB 2008においてユーザーとの交流の場を設けるものの、ブース出展を行わない事を公表。今後の戦略については、ユーザーを中心としたものとして、2008年2月頃に発表するという。

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Blackmagic Design~クリエイターの制作スタイルに合わせたHD制作環境を提供

ブラックマジックデザインジャパンは、Macintosh、WindowsでHD編集を可能にするBlackmagic Design社製のキャプチャカード、コンバータ群を出展した。

Intensiy Proは、小型のPCI Expressカード1枚にHDMI入出力を各1系統と、ブレイクアウトケーブル端子を搭載する。プレイクアウトケーブルは、HD/SDアナログコンポーネント、NTSC/PAL/S-Video入出力、アナログオーディオ入出力、S/PDIF出力に対応しており、HDMI出力を持つHDカメラやアナログビデオでのHD編集を可能にする。DeckLink HD ExtremeもPCI Expressカードのソリューションだが、こちらは10bit/8bit 4:2:2 HD/SD-SDI出力2系統とHD/SD-SDI入力1系統と、ブレイクアウトケーブル端子を搭載する。

DeckLink HD Extremeのプレイクアウトケーブルは、HD/SDアナログYUVコンポーネント、NTSC/PAL/S-Video入出力、2ch XLRアナログバランスオーディオ入出力、2ch AESデジタルオーディオ入出力、RS-422デッキコントロール、リファレンス入力に対応しており、ベータカムSP/デジタルベータカムからHDV/HDCAM/HDCAM SR/D-5など幅広い映像機器を接続可能だ。

Multibridge Proではブレイクアウトボックスによるネイティブ2K編集が可能なソリューションとなる。3Gb/s SDI、SDI、HDMI、アナログなどに幅広く対応しているほか、10bit/8bitのデュアルリンク4:4:4やシングルリンク4:4:4/4:2:2と互換性も確保している。Multibridge Eclipseは、3Gb/s SDIを使用したより高度な制作環境を提供し、2K 2048×1556デジタルシネマ編集をリアルタイムで行う事が可能になる。

このほか、デュアルレートHD/SD-SDI入力12系統とSDI出力24系統を持つルーティングスイッチャーWorkgroup Videohubや、3Gb/s SDIをサポートし、3D LUT、5.1サラウンドモニタリング対応6ch RCAアナログオーディオ出力を備える2K/HD/SD対応モニタリングソリューションHDLink Proも展示した。

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Canon~DIGISUPER 86AFなどでHDズームレンズラインアップを強化

キヤノンは、HDズームレンズラインアップに追加した新製品として、HDTVカメラ対応スタンダードズームレンズDIGISUPER27、HDTVカメラ対応フィールドズームレンズDIGISUPER 86AFとDIGISUPER 100AFを出展した。

DIGISUPER 86AFとDIGISUPER 100AFは、従来製品である DIGISUPER 86 xs、DIGISUPER 100xsにキヤノン独自のオートフォーカス機構とシフト式光学防振機構を採用したズームレンズで、それぞれ86倍、100倍のズーム倍率となる。オートフォーカ ス機構に、位相差センサーを採用することで、フルハイビジョンでの合焦精度を高めたほか、高速フォーカス合わせや高速移動物体へのフォーカス追従が可能になった。常時AFと一時AFを切り替えて使用できる。

カメラレンズで定評のあるシフト式光学防振機構も、放送用により高精度・高性能にして内蔵。レンズ内のブレセンサーで揺れや振動を検知して、補正光学系を光軸に垂直に移動させてブレを補正する。レンズ材質に使用しているUDガラスや蛍石による色収差補正、像面湾曲収差補正とともに、映像の品質を向上させることにつなげている。DIGISUPER27は、スタジオ用27倍ズームレンズ。従来製品のDIGISUPER 25 xsで定評のあるデジタルサーボシステムを進化させ、サーボ時の静穏特性を損なわずにズームスピードを向上させ、ズーム全域駆動時間を0.5秒にした。サーボ特性は、好みに応じてカスタマイズすることも可能。このほか、普及型HDズームレンスラインアップに新たに加わったKJ20×8.5B KRSDもデモした。

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digidesign~D-Control ES、C|24、Pro Tools 7.4など最新製品を国内初展示

アビッドテクノロジーのオーディオ部門であるデジデザインは、ICON D-Control ES統合コンソール、C|24コントロール・サーフィス、Pro Tools 7.4ソフトウェアなどの最新製品を出展した。

エラスティック・タイムのタイムマニピュレーション機能を搭載したPro Tools 7.4ソフトウェアは、テンポベース、タイムベースのセッションでの作業性を向上。Avidのビデオ制作、共有ストレージ・ソリューションのサポートも向上させることで、オーディオ制作とビデオ制作間のワークフローを体系化した。

C|24は、24ch仕様コントロール・サーフィスで、Pro Toolsレコーディングとミキシングのフルハンズオンコントロールと、Pro Tools I/Oをサポートするアナログ入力、5.1アナログモニターセクションを実現する。新たにICON統合コンソールに追加されたICON D-Control ESは、ラージフォーマットのコンソール。暗い状況でも視認性が向上するようテキストやグラフィクスを変更し、視覚的ナビゲーションを容易にするようにスイッチ・カラー・レイアウトも改良した。

MediaStation|PTソフトウェアにVideo Satellite HDオプションをインストールしたテクノロジー・プレビューも実施。SD/Avid DNxHDを含むHDのビデオ解像度をレンダリングやトランスコード、エクスポートすることなく開き、EthernetベースのプロトコルでPro Tools|HDシステムと接続して同期やロックアップ、ジョグ/シャトルコントロールが実現可能な事を示した。

VENUEデジタルコンソール関連製品としてVENUE D-Show、D-Show Profileシステム、D-Show 2.6ソフトウェアを展示したほか、M-Audio最新スピーカーやマイク、イヤフォン、ヘッドフォンやキーボードなどの周辺機器も展示した。

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SONY~SxSカード記録フルHD、コンパクトフラッシュ記録HDVを出展

ソニーは、「HD FOR ALL ソニーが拓くHDソリューション第2章」をテーマに、最新HD制作機器・ソリューションを出展した。注目を集めたのは、11月から出荷を開始したSxSメモリーカードを使用するXDCAM EXカムコーダPMW-EX1、コンパクトプラッシュ同時記録を可能にした業務用HDVカムコーダシリーズだ。

PMW-EX1は、高速な新記録メディアSxSメモリーカードを使用したメモリーカード専用カムコーダ。小型ハンディカムコーダーでありながら新開発の1/2型CMOSセンサーExmorを3枚使用することで画質の問題をクリアしている。業務用HDVカムコーダの新ラインアップはInter BEEの直前の11月14日に発表され、1/3型3クリアビッドCMOSセンサーExmorを搭載し、レンズ交換が可能なハンディタイプとなる。

取り外し可能なコンパクトフラッシュスロットを採用し、HDV 1080/24p・25p・30pのプログレッシブ記録が可能。

このほか、11型有機ELパネルを使用し、広色再現性、高速応答性、広視野角を生かし、高コントラストで忠実な黒の再現が可能なビューファインダーを参考出展した。

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Victor~HD液晶マルチフォーマットモニターに9型と17型を追加

日本ビクターは、HD液晶マルチフォーマットモニターシリーズを出展した。これまでの20型、24型に加え、今回新たに9型と17型を加える事で、9型から24型までのラインアップを強化した。

今回新たに追加したのは、9型モニターのDT-V9L1Dと17型モニターのDT-V17L2Dで、いずれもAC/DCの2電源方式を採用し、ビクター独自の映像プロセッサーを搭載している。DT-V9L1Dは、HDカメラをサポートするフォーカスアシスト機能、画面保護フィルターを搭載した。SDI入出力を各1系統、コンポーネント出力1系統を装備する。DT-V17L2Dは、SDI入力2系統、SDIスイッチドアウト出力1系統、コンポーネント入出力1系統のほか、OC入力に対応するHDCP対応DVI入力も装備する。

ビクターブースで目を引いたのは、DTVキャリプレーションソフトウェアのデモだ。複数のモニターの色味を合わせ、より正確な色再現を可能にできるようにするソフトウェアで、モニター購入ユーザーの要望に応じて無償で提供するという。ソフトウェアの利用には市販のモニターキャリブレーション用のセンサーが必要になる。デモでは恒陽社のi1(Eye-One)センサーを使用していた。

なお、JVCがNABで発表して人気を集めたスタジオカメラ仕様のHDVカメラGY-HD250Uについては、米国市場を中心にしているとの事で、Inter BEEにおいては残念ながら出展していなかった。

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