09042102.jpg

今回のNAB2009の目玉の一つである、Military and Government Summitが21日開幕した。これは今回から始まった新しいサブイベントで、米国の軍政におけるメディアの諸問題について話し合うためのカンファレンスやワークショップだ。開催期間は23日までの3日間の予定。記念すべき第一回初日のKyenoteでは、DoD OUSD(I)(米国国防 総省調達・技術・兵站担当国防次官室)のKevin P. Meiners氏がスピーカーとなった。Meiners氏は、米軍の抱える最大の問題が、戦時費用よりもむしろ平時の通常予算におけるコストの増大にあることを挙げ、中でも映像・情報収集分野に対する費用の増大が大きいことを指摘した。この解決方法を探ることが今回のNABにおけるMilitary and Government Summitのテーマの一つだとした。

OUSD(I) Meiners氏、Military and Government Summit 初日のKeynoteにて民生品と軍用品の性能差を指摘

09042111.jpg 09042112.jpg
09042113.jpg 09042114.jpg

OUSD(I)の Meiners氏は、初日のKeynoteにて昨今の民生映像機器と軍用映像機器の性能差を指摘し、この性能差を埋めることが急務であると指摘した。Meiners氏によれば、1990年代までは軍用品が民生品を大きくリードしていたが、その後立場は逆転し、今では完全に民生品の方が高性能低価格になってしまっているという。

同氏によれば、今のDoD(国防総省)の風景は、あたかも家庭の居間においてみんなで一つの白黒テレビを見ているような状態であり、これに対して民間では携帯情報端末でいつでもどこでもHD映像を自在に見られるのが普通になっている、という。同氏の出した様々な例の数々が、会場の笑いを誘いながらも、軍用映像機器の陥った停滞が深刻なものであることを指し示しているといえるだろう。

2日目の基調講演はNGAのDon Self氏

09042201.jpg
09042202.jpg
09042203.jpg

NAB内イベントとして行われているMilitary and Government Summitは、記念すべき第1回目開催と言うこともあり、毎日キーノート(基調講演)がおこなわれる。2日目のキーノートは、NGA(National Geospatial-Intelligence Agency 国家地球空間情報局)のDon Self氏であった。Self氏はまず、米国内でもあまり役割の知られていないNGAについて紹介を行った。また、GEOINT(Geospatial-Intelligence 地球空間情報)という耳慣れない概念についても触れ、それが、地上データだけでなく、軍組織にとらわれない各種取得データを加えて統合的な作戦データを加えた、まさにNABが主に扱うような統合型映像データを含む概念であることを示した。

Don Self氏、映像は米国防総省の最優先事項の一つだとして、新たなデータ形式制定などに言及

09042207.jpg 09042208.jpg
09042210.jpg

Military and Government Summitにおいて、NGAのDon Self氏は、映像こそ国防総省のトッププライオリティの一つだとして、その重要性を語った。また、昨日のOUSDのMeiners氏の講演を受け、コスト削減や効率化を見据え、GEOINTを考慮した、軍の用いるべき新たなデータ規格の制定をすべきだとした講演を行った。

新たな軍用動画データ規格について活発な議論が行われる

09042213.jpg 09042214.jpg
09042216.jpg 09042217.jpg

Military and Government Summitにおいて、OUSD所属でSECDEF ISR Task ForceのStephen Long氏がモデレーターとなり、NGAのDon Self氏の基調講演を受ける形で、新たな軍用データ規格についての活発な議論が行われた。特にNGA内の研究グループであるMISB(Motion Imagery Standards Board)関係者の発表が多く、各自のわずかな持ち時間の中でも非常に充実した発表が見られた。MPEG4ベースなどの最新技術の軍用規格を、いかにGEOINTの概念に取り込むかという点がポイントとなるようだ。

HARRIS、FAMEについてカンファレンスを実施

HARRIS社は、21日に行われたMilitary and Government Summitにおいて、Full Motion Video Asset Management Engine(FAME)についての発表を行った。同システムはそれまで、1モニター1情報が当たり前(しかも下手をすると白黒映像)だった軍用映像の世界に、TVニュースのような画面分割でHDレベルの情報を多元的に表示するシステムである。

09042118.jpg

FAMEでは、AFSOC (Air Force Special Operations Command – 空軍特殊作戦軍団)からの無人機プレデター等からのメタデータ情報を核として、それに、地図などの付加情報メタデータを載せ、さらにはその上にビデオやオーディオなどの現場レベルのメタデータを載せることによって、作戦室での情報収集をよりリアルで多元的、しかも時間軸に沿ったものに変えるという。