今日18日から3日間、11月20日までの日程で千葉市・幕張メッセでInter BEE 2009(国際放送機器展)が開催される。昨年のリーマンショックを引きずってしまった4月の2009 NAB Show(全米放送機器展)は日本人の極めて少ない展示会となっていた。そのNAB Showで発表となった製品が、国内では発売直前・直後というタイミングで初めて一堂に集まる展示会として、Inter BEEへの期待も高まると言うものだ。
昨年はRED ONEが4Kデジタルシネマの敷居を下げるとともに、モーションピクチャーズ分野として新たな市場を切り拓いた年となったが、今年は急速に、ローコストでより効率的なファイルベース化に焦点が当たり始めた。この舵取りに大きく寄与したのは、4K制作市場を活性化させたRED ONEの成功であり、今年新たに登場したキヤノンの5D Mark IIをはじめとするデジタル一眼レフカメラによるHD動画収録機能の搭載だろう。
映像表現部分では、ステレオスコピック3D制作が身近なものとなった1年でもあった。4K収録・編集・再生面ではまだまだハイエンドな環境が必要となる状況だが、視差を持ったHDステレオ映像の編集環境は既存のものを流用できるとあって、ファイルベース化の流れに乗って一気に広まり始めている。Blu-ray Discのステレオスコピック3D規格の策定を待って、3D機能搭載のBlu-ray録再機や地上デジタルテレビの製品化も予定されており、今後は、いかにステレオスコピック3D収録を行い、いかに編集段階で視差確認をしていくのかという技術面の効率化に焦点が当たっていくはずだ。
こうしたなか、日本では、かつてないほど多岐にわたる映像制作分野への対応が迫られることになった。2年後の地上デジタル完全移行を視野に入れつつ、ワンセグ、携帯動画、Web動画、デジタルサイネージなどさまざまな分野での映像活用、さらには4Kやステレオスコピック3Dへの対応と、新たにワークフローを構築しなければならない状況が、つぎつぎと押し寄せている。NAB Showでは、これまで制作費を使い放題にしてきた米国企業ですら、より効率のよいワークフローを検討せざるを得ない状況が見て取れた。そこに垣間みられたワークフロー改善のエッセンスは、4Kやステレオスコピック3Dといった映像表現も視野に入れつつ、ローバジェットに対応したファイルベース化を目指したものであり、日本でも充分に活用できるものであるはずだ。ファイルベース化の取り組みは急務になってきている。
そんな時代に開催されるInter BEE 2009。NAB Showのエッセンスを、国内で吸収できる唯一、そして今年度最後のチャンスとなる放送機器展が、今回のInter BEEだ。ここはひとつ、ローコストでありながらもより効率的で、しかもクリエイティブ性を向上できるワークフローとはどういうものなのかを、じっくりと考える機会としたい。10月の特集公開以降、各社の出展概要が明らかになってきた。NEWSに出展概要を掲載しているので、併せて参考にして欲しい。映像機器メーカーのなかには、NAB Showで発表した新製品の実機デモ以外に、来年の2010 NAB Showに向けた新製品を先行投入してくるところもある。その意味では、来年の2010 NAB Showよりも早く、実機を見比べながら最新ワークフローを検証できる場となるはずだ。日本の映像制作産業のワークフロー改善は、もはや待ったなしという状況だろう!PRONEWSでは、10月特集で今年1年の動向を振り返りつつ目的別のコースを設定して「Inter BEE 2009の歩き方」を紹介した。本日から編集部では総力を挙げて、「Inter BEE 2009」の模様を余すところなくお伝えして行く!