大判センサーカメラ百花繚乱

本日17日より千葉市の幕張メッセでInter BEE 2010が開幕した。昨年同様4~8ホールの5ホール分の開催となった。ここ千葉幕張メッセ会場周辺は小雨のぱらつくあいにくの天気で、午前中からの出足はあまりよくなかったものの、午後からは多くの来場者でにぎわった。17日の参加者は、10,320名(昨年10,332名)。

多くの来場者を集めた理由のひとつとして、最近のトレンドとも言うべき大判センサーを搭載したカメラの人気だ。すでにNABやIBCなどで発表されてはいたもののやはり実機をその目で確かめてみたいというユーザーがいかに多いかを如実に示した結果といえよう。RED ONEがこうしたアフォーダブルなシネスタイルカメラの先鞭をつけたといえるが、すでに発売から数年が過ぎ、その間ニコンのD90やキヤノンのEOS7D/5Dが発売になり、昨年のようにあちこちのブースでお目にかかるということは無くなってきた。

何も悲観的に構えているのではない。今年はそうしてトレンドの中から、具体的な形として各カメラメーカーからのアプローチがあり、閉塞感のある映像業界に久々に活況をもたらす良い材料ではないかと思う。これらの新領域のカメラを我々編集部は大きく評価したい。

canon_0326.jpg 動画撮影が可能なデジタル一眼キヤノンEOS7D、EOS5D MarkⅡ

パナソニック、ソニーの相次ぐ新領域カメラのリリースをどう見るか?

sony_0122.jpg PLマウントレンズのほか、デジタル一眼などのレンズが装着できるソニーPMW-F3

そんなトレンドの流れを決定付けたのは、なんと言ってもパナソニックのAG-AF105とソニーのPMW-F3であろう。いずれもフランジバックが短く設計されており、マウントアダプターにより、PLレンズやデジタル一眼のレンズなどを装着できるようになっている。加えて、デジタル一眼のおまけ的な動画機能を利用するのではなく、動画を撮影するカメラとして最初から設計されている点が注目される要素のひとつとなっている。当然InterBEEでも黒山の人だかりである。

sony_0132.jpg ソニーでは、PMW-F3の開発に合わせてPLマウントレンズも開発。35/50/85mmの3本がある

ビデオカメラの画質といえば解像度やSN比、最低被写体照度など、数値化できるスペックで語られることが多かったが、ここへきて「ボケ味」という数値化できない不確定な要素が入ってきた。これはビデオカメラのメーカーがある意味不得意とする部分である。

ただ、逆にいうとクリエーターにとっては、数値化できる電気的・機械的なスペックで語るのではなく、見て「綺麗か」とか「気持ちいいか」とかいった感性で語れるようになり、作品の内容という本質的な土俵で勝負できる時代になったといえよう。

まだまだ現状では、ピントの浅い映像を撮影できるカメラとして大判センサーを採用したカメラがもてはやされているが、レンズの選択肢が広がることで、ボケ味やレンズが個々にもっている質が問われることとなり、更には作品やカットの持つ意味を考えて、レンズの焦点距離や絞りを設定することが重要になってくることは言うまでもない。

制作環境が一変すると実感するInterBEE2010

Pana_0277.jpg パナソニックAG-AF105はマイクロフォーサーズ規格のマウントを採用しており、ビューカメラ用の袋蛇腹のようなアクセサリーを介してレンズを装着することができる Pana_0280.jpg デジタル一眼用のレンズのほか、PLマウントレンズなどマウントアダプターを装着することで、様々なレンズに対応できるAG-AF105

被写体までの距離が遠いから望遠でとか、暗いから絞りを開けて撮影するのではなく、パースペクティブを調整するための焦点距離であり、ピントの合う範囲を決めるための絞り調節という今までとは異なった認識が必要な時代になったといえうだろう。

ビデオカメラでもなくフィルムカメラでもない新領域を開拓したカメラたち。今回のInterBEEは、こうした新領域のカメラがデビューした記念すべき年の展示会といえそうである。 メインストリームにいながらにしてマニアックに偏愛できそうなカメラの世界に突入するのでないかと思わせる1日であった。