向かうべきあたらしいテーマが見えた映像業界

今年のInterBEEは、景気低迷が叫ばれる中、過去最高となる824社が出展。入場者数は初日の17日が10320人、18日が10565人、最終日の19日は10682人となっており、昨年の入場者数が31694人だったので、ほぼ同等の入場者があったことになる。

InterBEE最終日のデイリーレポートは、放送やビデオ業界の将来を占う上でも放送という分野では分類できないが、将来融合しそうな技術や製品を出展するために設けられたクロスメディアゾーンを中心にこのコーナーに出展していたメーカーから興味深い製品や技術をいくつか紹介してみよう。そう。映像業界もIPの世界と非常に密接なのである。時代は黙っていても追いかけてくるのである。我々は良いものに対応しなければならないのである。

非圧縮デジタルビデオレコーダーFLASHBOX。Single LinkとDual link HD-SDIに対応しており、Single Linkでは1ドライブ、Dual linkでは2ドライブの記録メディアを使用する

FraunhoferはMP3を開発したことで有名なドイツの研究機関だ。700人以上の研究者が医学、光学、電子、コンピュータなど様々な分野の研究を行なっている。InterBEEに限らず様々な展示会に出展しているが、直接機器販売を行うわけではなく、技術提携や製品化してくれる企業を探している。今回のInterBEEでは非圧縮デジタルビデオレコーダーや小型ビデオカメラなどが出展されていた。

Light UP、ジャンルや業界にとらわれない発想

LightUP_0933.jpg redrockmicroのDSLR用セット。様々なパーツを組み合わせてあらゆる撮影シーンに対応できるが、個別に組み合わせるほかに、いくつかのセットが用意されている

作る人、売る人、使う人が別々というのが一般的だが専門性の高いものほどその仕訳は難しく、復号化していくだろう。昨今では扱う機材もビデオカメラだけでなくデジタル一眼などもあり、おのずと必要となる周辺機材や扱い方が異なってくる。撮影の現場もビデオやシネが混在しようとしている。ジャンルや業界にとらわれない発想がますます重要になってくると思う。

LIGHT UPは、レンタルスタジオや撮影業務受託のほか、redrockmicroなどの機器販売やレンタル業務を行っており、どちらかというと制作よりの会社である。撮影に必要な機材や設備、人材などを包括的に扱っていこうというビジネスモデルは今後も増えていくように思う。

NHKメディアテクノロジー、現場から生まれる技術

NHK_0147.jpg

メーカーの展示では見た目や自社の製品を強調したセッティングが多いが、実際の撮影を再現したこうしたセッティングは3D撮影でどのような周辺機器が必要なのか見るだけでも勉強になる

NHKメディアテクノロジーは、ハイビジョン創世記から3Dを手がける会社だが、NHKが開発した放送以外のメディアにおける制作業務一般を行っているといった解釈をしたほうが分かりやすいだろう。必然的に新規分野での制作には今までにない機材やシステムが必要になってくるわけで、こうした業務やコンサルタントなども行っている。

今回のInterBEEでは3D製作に必要なリグを中心に出展が行われたが、実際に現場で撮影を行なっているスタッフが説明員として動員されており、長時間に渡り話し込むカメラマンの姿もみられ、実機を使った3D撮影の技術やテクニックの講習会といった様相であった。できれば、こうした講習会やセミナーなど別途開催していただきたいところだ。

放送と通信、映画とビデオ、スチールと動画などボーダーレス化が進んだ昨今では、様々なジャンルのメーカーや制作者が入り乱れ混沌とした状況となっているように思う。 2k4kや圧縮・非圧縮といったファイルフォーマットだけでなく3Dという新たなジャンルを既存のノンリニアシステムに求めるのか、それぞれに特化したシステムを構築するのか、制作側だけでなくメーカーも模索している様子が垣間見える。

老舗のQuantelがブースを構える所以

新しいソフトウェアバージョン5が搭載されたPablo。リアルタイムカラーグレーディング、ステレオ3Dの強化ツールが追加された

Quantelは、ビデオにおけるポストプロダクションシステムのメーカーというのがこの業界では一般的な認識だろうが、多くのノンリニアシステムがそうであるように元々はフィルムの編集にそのルーツがある。Quantelの製品はあまたあるノンリニアシステムの中でもフィルムライクなあるいはクリエーターフレンドリーな製品が多く、GUIや操作性など独自な部分も少なくない。今回のInterBEEでは3Dや4kを中心とした訴求をするべくあえてここに出展したようだ。

3日間が終了して、見えてくる新しいテーマ

InterBEEとは国際放送機器展のことだが、ここ数年は国際放送機器展という名称はほとんど使われていない。それだけグローバル化したという見方もできるが、あらゆる面でボーダーレス化が進んだ結果放送という言葉自体が形骸化してしまったともとれる。

すでにある分野に特化した製品だけを扱っているところは別として、今年のInterBEEはこうした混沌とした現状を反映してか、メーカーや業界もどこにフォーカスしていいか迷っているような印象を受けた。 おそらく来年のInterBEEでは、この混沌がクリアーになり明確なテーマが浮かび上がるだろう。3日間を通してひしひしと感じられた。これが今年のテーマだったのかもしれない。それではまた来年!InterBEE2011でお会いしましょう!