8K UHDTVリアルタイム圧縮伝送システム

KDDI研究所のブースでは「Beyond 3D TV」というテーマで将来の映像アプリケーション技術や高品質映像関連ソリューションの展示が行われた。

まず、技術展示として正面で大々的に行われていたのが「8K UHDTVリアルタイム圧縮伝送システム」だ。UHDTVとは、8Kフル解像度(7680画素×4320ライン)のことで、データ容量はハイビジョンの32倍もある。この高精細な8Kフル解像度の映像を投影して、シアターで実際に観覧することができるようになっていた。

この技術は情報通信研究機構法による委託研究「超高精細映像符号化技術に関する研究開発」で実施したものを展示したも。その中でKDDIが開発を担当したのは「いかに容量の大きなものを圧縮して届けるか」というH.264/MPEG-4 AVCに独自拡張方式を追加した圧縮コーデックの部分だ。NAB2010のときは90Mbpsだったが、今回は70Mbpsまで下げでデモが行われていた。

kddi-1.jpg 映像が巨大なスクリーンに投影されている。近づいても高精細だ

kddi-2.jpg リアルタイム伝送システムに使用しているデコーダ

MP-Factory 5.0

製品展示として「MP-Factory」のデモが行われていた。MP-FactoryはH.264/MPEG-4 AVCによるHD解像度に適したHigh Profileまでのエンコードおよびデコードが可能なオーサリングキットだ。新しくエンコードした画像を評価する自動画質評価機能を追加搭載した。主観で高精度を自動に測定する機能やブラックアウト、フリーズ検出が搭載されたことにより、映像品質評価の負担を減らすことができるようになった。

kddi-3.jpg 自動画質評価機能を使えば、映像の特定の問題を自動的に検出して一覧してくれる

VistaFinder

地球上のどこからでも映像伝送が可能になる携帯型のライブストリーミングソリューション「VistaFinder」のデモも行われていた。

送信側の特徴としては、機動性の高いコンパクトシステムであること。ブースではカメラをヘルメットに付けてハンズフリーという形で映像を送信できることが紹介されていた。実際に、救急車からいち早く患者の状態を映像付きで伝えて応急処置の方法を確認をして救命率を高めるということにも使われているという。

伝送の特徴としては、インターネット網や携帯電話網のほかにインマルサットBGANサービスを選べる。ジャングルや孤島といった地球の裏側からでも映像を送ることが可能だ。 受信側の特徴は、新たらしく中継サーバを用いたVOD配信や複数拠点映像の同時受信などの機能が加わった。いままで放送局向けにピアトゥーピアだけで送っていたが、いろんな医療系や災害現場とかからマルチで受けれるようになった。

競合製品との違いは、ソフトウェア製品であるのでデジタルビデオカメラとネットワークがあればすぐにライブ中継が可能になること。上記で紹介したMP-Factoryを使っているので画質の品質がよく、新しくマルチ受けができるようになったのも大きな特徴だ。ソフトウェアなので、松下のTOUGHBOOKといった現場にあった特殊なマシンで使ったり、今後のPCスペックの向上により更なる能力アップが可能というのもメリットだ。さらに、スマートフォンによる簡易映像配信も可能になったこともアピールしていた。

kddi-4.jpg カメラとPC、通信端末を組み合わせた送信側。ソフトウェアなのでTOUGHBOOKといった特殊なPCにもインストールが可能

kddi-5.jpg 送信機側のPCで動作する「VistaFinder Tx」

kddi-6.jpg 送信機側のインターフェイス。マルチ受けが可能になったので、用途が広がった

スタジアム3D自由視点

サッカーなどのスポーツ映像を、あらゆる視点から視聴できる技術「スタジアム3D自由視点」も展示されていた。自分の見たいシーンにコントローラを動かすだけでゴールキーパーといった特定の選手の視点で映像を見られる。どこでもぐるっと回ることもできるし、中に入り込んだり、ズームもできるというユニークな技術だ。仕組みは、多視点的な映像を補間したもので、カメラの台数が増えれば増えるだけスムーズで自由な映像を実現できる。足の裏など、カメラが届いていないところも補間を行っているとのことだ。

kddi-7.jpg リアルタイム配信や合成を実現したスタジアム自由視点

ソーシャルリモコン

ソーシャルリモコンは、それぞれのTV番組に対してtwitter上で交わされている意見の量や内容から番組の

注目度や満足度を算出し、Androidのタブレットに表示するシステムだ。ディスクレコーダーにテレビ番組を撮り貯めたのはいいが、どれを見たらいいのかわからないという経験をしたことが誰でもあると思う。そこで、コンテンツを評価して、どの番組が面白いのかをサポートしてくれるというものだ。

仕組みは、Twitterで投稿された番組に対してのコメントの内容を分析して、「面白い」「楽しい」「わくわくする」といったポジティブなキーワードがどのくらいあるかというのを分析して、満足度を算出するというものだ。また、見ているときも楽しめる機能として、番組に対するTwitterの生の声を見ることができる。優れたところは、その声を分析して、どういった趣味の人が見ているのか? 性別、10代や40代といった年代の肯定的な意見や否定的な意見の割合を比較してみる、ということもできる。

この分析の仕組みは、ユーザのプロフィール情報を取得して実現している。ただし、Twitterのプロフィール欄に年齢などを書いている人は統計によると1%ぐらいしかいないので、基本的にコメントの投稿内容の言語から年齢を推定して決めているという。コメント1つだと年齢を分析するのは困難だが、Twitterの仕組み上、投稿されたものにはIDがついていて、過去をたどってコメントを見ることができる。10代の人だったら、普段の生活の書き込みの内容に学校の話題といったライフスタイルが見えてくる。こうした分析により、精度は7割から8割ぐらいを実現している。統計的に10代の傾向、プロフィールがとれるというところで、かなりの反響を得ているという。

kddi-8.jpg 番組をレーティングで評価してくれる

kddi-9.jpg 番組に対する意見も収集してくれる