NABオープニング基調講演、3D技術先駆者キャメロン&ペース氏が登壇、3D制作技術会社の設立を発表
恒例のNABの初日の朝に開催される、オープニング基調講演と功労賞授与式は、4月11日朝9時よりラスベガス・ヒルトンにて行われた。今年の基調講演のスピーカーには3D技術開拓の先駆者の二人、映画製作者のジェームズ・キャメロン氏と3Dプロデューサーのビンス・ペース氏が選ばれていたこともあり、会場はあふれんばかりの来場者が詰めかけた。
NAB会長のゴードン・スミス氏
最初に登壇したNAB会長のゴードン・スミス氏は、今年のテーマを再確認するように、NABショーというイベントは、様々な幅広いコンテンツを扱う業界のためにあると述べ、放送業界はそれらのコンテンツと技術の統合に焦点をあて、メディア間を越えるコンテンツ制作の在り方とビジネスモデルを考えなければならない時期であることを示唆した。
我々放送事業者達がここにいる理由は様々だが、立ち向かう挑戦は同じだという。その挑戦はNABのセッションや基調講演から接することができる、とスミス氏は続けた。乗り越えなければならない難局に直面している今、その変化の土台を築くためにNABは放送関連業界と共に前進し、活動していくと語った。
出展社数1500社以上を揃えて、ブロードキャストからブロードバンドへ、モバイルDTV、オンラインビデオ、ストリーミング、オンライン広告と、コンテンツ配信技術の拡大、コンテンツシアターで繰り広げられるコンテンツ制作と3Dといった最新技術など、今年のNABショーのハイライトを紹介した後、スミス氏は特別に、「日本からの友人達」が大災害に見舞われながらもNABに参加してくれたことへの感謝の意を示した。続けて日本への見舞いの言葉が述べられると、会場からは大きな拍手がわき起こった。日本の放送事業者に対しても、彼らのミッションへの専心と貢献に感銘を受けたとして、東日本大震災における報道を賞賛した。またNABショー会場に設けられた被災者支援団体についても簡単に紹介された。
続けて、NAB委員会議長スティーブ・ニューベリー氏が演台に加わり、2006年まで23年間にわたって会長を務めたエディー・フリッツ氏に功労賞を授与した。フリッツ氏は、ミシシッピー州のラジオ局在勤のころからワシントン政策問題に関心を持ち、頻繁にキャピトル・ヒルとFCCへ訪問していたという。その後、NABラジオ議員、NAB委員会議長へと選出され、1982年から2006年までNAB会長を務めた。20年以上の任務の間、フリッツ氏は1992年のケーブル条例を経て、アナログからデジタル・テレビまでの変遷時期において協会の様々な規定について取り組んできた。2006年にはワシントン州に自らコンサルタント会社を立ち上げ、退陣した後も政府関係、国際情勢に関わる政治顧問として取り組んでいる。自分は幸福な人間だと、今までは功労賞を手渡してきた立場だったフリッツ氏は挨拶を始めた。 長年に渡るNAB会長としてのミッションは常に放送事業者団体と国民、国自身へ貢献であり、それは決して「課された仕事」ではなかったと述べた。
ジェームズ・キャメロン氏とPACE代表ビンス・ペース氏の対談で3Dの未来を示唆
スミス氏より基調講演へとステージの場が代わり、「アバター」の監督として知られるジェームズ・キャメロン氏と3DプロダクションPACE代表でプロデューサーのビンス・ペース氏の対談が始まった。キャメロン氏とペース氏は10年以上前から3D制作環境を確立するための技術を映画制作の現場で追及し続けてきた。キャメロン氏とペース氏のプロダクションPACEで携わってきた映像作品の制作現場より、「FUSION 3D」カメラといった、斬新な技術が生まれてきている。
二人は、映像市場は3Dへ向かっているとしながらも、それを憚る現状のテレビの3D撮影のコストの問題を挙げ、2Dと3Dの重複したワークフローと機材負担を取り除くことがキーだとし、開発した2Dカメラに3D機能を載せる「ピギーバック」方式を紹介した。カメラオペレーターは3Dを意識することなく作業ができるという。今年のマスターズ・トーナメントでは、18カメラ中6台のカメラにこの方式を実装し、3D中継を行ったという。
ジェームズ・キャメロン氏
キャメロン氏は「テレビがモノクロから、モノクロ・カラーの混在期間を経て、フルカラー化したように、映像もやがて全面3D化だろう。 裸眼で3Dが観られる環境が登場すれば、3D化の普及は一気に加速する」と期待を込めて、フル3D化を強調した。
3D化普及には、3D映像制作側への支援も必要だ。二人は、放送業界はまだ3Dを始める準備が出来ていないとし、PACEでの実績と技術開発を基に、効率化を図る制作環境と技術を広めるため、「CAMERON-PACE Group」を設立したことを発表した。この新会社では既に多くの3D制作プロジェクトに携わっており、「ESPN X Games 17」「Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides」、「Transformers: Dark of the Moon」、「The Three Musketeers」や「The Invention of Hugo Cabret」など非公開作品も含めて会場のスクリーンに投影した。
ブラックマジックデザインは今回の基調講演のスポンサー社。グラント・ペティ代表も簡単な挨拶と共に当社がNABで発表した新製品について紹介