L GIGは、最高品質を求められるハイエンドにスポットをあててみる!
最高品質を求められるハイエンドとなるLサイズの分野。もちろん今でもフィルム撮影が最もハイエンドであり、スピルバーグ監督のように最後のフィルム監督と言われるほどこだわる監督もいる。しかしCineGearExpoにはもうフィルム撮影機材の展示はホビー向けの8mmしか存在しない。プロ仕様=デジタルはすでに常識となった。そして機能向上には努めつつも様々なダウンサイズや低価格化が進んでいる。ARRIの『ALEXA』に代表されるように、Lサイズの制作規模とはいえ、煩雑なファイルベースのワークフローをいかに効率化簡便化するかが、このLサイズツールのテーマと言えるだろう。
主要メーカーもかつてのようなパナビジョンやARRIが大きなブースを構える事も無くなったのは淋しいが、ブース出展としてはSONY、Canon、ARRI、そしてJVC(日本ビクター)の展示があった。
JVC(日本ビクター)
CP+でも紹介していたファルコンブリッドセンサーによる4K画像を紹介。
キヤノン
NAB2011で発表したPLマウントのシネズームレンズをメインに展示。
ソニー
NABで発表されたOLEDなどの新製品を中心に展示されたが、やはり何といってもメインとなったのはCine Gear Expoでもトピック的な発表があった『F65』。NAB2011での発表時に、製品企画の中心人物に『F65』の詳細についてインタビューした。
注目のF65 開発秘話を訊く!
ソニー株式会社 プロフェッショナル・ソリューション事業本部 商品企画マーケティング部門 CCS商品企画部 統括課長 三上泰彦氏
–F65というネーミングはどこから?
静止画の35mmの上にブローニー判が存在するように、動画用の35mmフィルムの上位フォーマットとして65mmフォーマットがあります。IMAXの作品や、古くはアラビアのローレンスの撮影に使われたものです。
我々としては F35で35mmフィルムに迫る画質が実現できたと思うので、次の開発のターゲットとして65mm フィルムにどこまで近づけるのか、チャレンジの意味合いを含めてF65というネーミングにしました。今回の F65では確実に35mmフィルムのクオリティを超越したと考えて頂いて良いと思います。
–65mmサイズのセンサーでカメラを作らなかった理由は?
もちろん65mmでカメラを作っても良いのですが、レンズの互換性や被写界深度が浅すぎるなど諸問題が多いので、今現在は動画のスーパー35mmサイズの範囲でどこまで頑張れるか、ということでこのサイズで開発しました。
–センサーサイズは16:9?
DCI(Digital Cinema Initiatives)の規格にある、4096×2160という規格に準拠しています。厳密に言えば1.9:1、テレビの16:9が1.78:1ですから、若干横長のサイズですね。これならばアナモフィックレンズを使わなくても、上下をレターボックスで切ってシネスコサイズにも出来ます。
–ソニー独自の特徴的なテクノロジーとしては?
やはりセンサーと記録部のSRMEMORYの部分で、5Gbpsの高帯域のメモリーでないとこのカメラの画は記録出来ませんから、一般のSSDを買って来て記録することは出来ませんし、他とは格の違う製品になっています。
–スチルカメラのRAWデータとF65で撮影できるRAWデータとの違いは?
RAWという意味では肉眼でそのまま画像を直視できない点では一緒です。ただ、センサーの画素配列が独自なものになっているのと、メモリーの記録容量が許す限り毎秒 120コマで連続撮影できる点がスチルカメラとは大きく異なります。
–一番のセールスポイントと、開発で難しかった点は?
センサーの配列がユニークだということと、動画のカメラとしては総画素数が2000万画素と非常に多いので、感度、ノイズ、色域を含めていままでソニーの中でも最高機種であったF35よりもさらに上を行っている事です。難しかったのは一つ一つの画素については、F35よりも小さいのですが、それでも感度、画質、ノイズも改善しなければならなかったという部分と、それだけの画素数を最高120コマで読み出すという部分が、開発としては一番苦労した部分です。詳細に関しては企業秘密ですが、現代の半導体技術というのは『量を作れば、質が向上する』という論理になっていますので、これまでコンシューマ等で量産され、開発されてきた技術が、プロ機材の方にもその恩恵を下ろすことができるようになってきたのです。
–多層構造のCMOSセンサーと比べて、F65に単板CMOSを搭載した理由は?
映画の場合、S/N比が最も大事な部分で、ノイズの処理を考えると単層/単板のセンサーで扱う方が良いという結論に達しました。本当はR:G:B=100:100:100で均等に取り込めるのが最も理想的なのですが、F65では、R:G:B=25:50:25ですが、それを8K分の情報量で取り込み、それを4K分に落としているので、その分高いクオリティが保持されているわけです。現在の技術を考えると単板での処理の方が良いということと、今後の展開としてシャッターを組み込みたいなどの長期的なR&Dの展望もあり、その点からも単層センサーに決定しました。ユニークなこのセンサーの設計にしたのは、もともと無い情報を擬似的に作り出しているのが従来のベイヤー配列におけるCMOSセンサーの発想ですから、そこには限界があると思いました。
(映画用のカメラは)撮影時に上流の方でいかに高品質な情報を取り込めるか、ということだと思いますので、上流で高品質で撮っておけば後処理で幾らでも汚しを掛ける事は可能ですから、そこがポイントだと思います。リリースまでに一番重要だと考えているのは、やはりどんな状況でもちゃんと撮れるという、カメラとしての基礎体力が重要だという点と、あとはワークフローに関して多くのやり方があると思いますのでその部分をしっかりサポートできればと考えています。