IBC2011とデジタルシネマ
デジタル・テクノロジーと映画、この今や切っても切り離せない両者の関係は一体いつから始まったのか?思わず回想に浸ってしまうほど、デジタルと映画の関係はすでに長く深いものになっている。そしてさらに、現在のデジタルシネマ・テクノロジーの発展は、TVや業務ビデオの世界にまで影響を及ぼし、その進化のスピードも以前にも増して凄まじいものがある。
これまで限られた世界のみで展開されていた映画技術産業の世界。しかし今や、それはすでに老舗や大手のメーカーだけでなく、サードパーティと言われていた会社や販売会社、また新興国や個人に近い小規模メーカーにいたるまで多岐にわたって幅広い市場を形成してきた。それだけ一般化し熟れて来たという見方も出来るが、高画質、高品質、高効率を追求する、飽くなきクリエイティブへの憧れに限りは無く、人々の欲望は尽きない。
今年もオランダ・アムステルダム/RAI国際展示場で、欧州最大の映像放送機器の展示会、IBC2011が9月9日~13日の日程で開催された。ここでも前述のような傾向は随所で見られ、4K、3Dステレオ、4:4:4、倍速といったキーワードが当たり前のように飛び交っていたが、以前のように誰しもがそれに驚く、といったような現実は、そこにはすでに窺われなくなってきた。
日々変わる状況とは?
しかしその中でも明らかに変ってきたことは、確かにある。カメラ市場では、全体的にスーパー35mmセンサー搭載のデジタルシネマカメラ市場が活況を帯びている。一昨年前までのDSLRムービー市場の台頭は一通りの安定期に入り、代わってソニーPMW-F3や先般のF65の詳細発表、さらにARRI ALEXAの人気沸騰、RED ONEに代わるEPICの台頭などスーパー35mmサイズを中心とした、大判センサー搭載の新たなムービーカメラ市場に向けて話題が尽きない。そしてそこには新たな変革が次々と起こっているようだ。さらに、ムービーカメラ市場の活況により、レンズの市場にも大きな影響が出て来ている。またDSLRムービーの急速な拡大により、多くの市場参入者が登場した撮影サポートツールなどの周辺機器市場では、今度は逆に老舗・大手メーカー側の大きな変革を促している現実がある。
またBlackmagic design、AJA Video Systemsなどが先導する、映像データを相互に受け渡す”コネクション系機器”の世界では、よりソフトウエア技術との親和性が向上し、それとともに製品廉価による激しい市場変動が起こっている。
様々なシフトチェンジによって、いずれにせよ活況を呈している、デジタルシネマの世界。全てのジャンルを通じて言えるのは価格の大幅な下落だが、そのバックには世界的な不況の影響もあり、またそれにより多くの市場参入者を許した現実もある。またそれにより参入者が増加したことで、より技術の切磋琢磨を生み出し、市場の競争原理が働いて、より正常進化を促しているという事実があることも確かだ。
今月の特集では、6月の『Movie Maker’s GIG in Hollywood』に引き続き、最新のIBC2011レポートを中心に、デジタルシネマツールの変貌と、そこから見えて来た、新たに湧き起こって来た映像技術における次世代の新テーマなど、現場から伝わって来たその温度感をレポートしてみたい。
以下、順次掲載予定