txt:石川幸宏 構成:編集部
増大するプライムレンズ需要
スーパー35mmサイズのカメラ市場が拡大したことで、大きく需要を伸ばしたのはPLマウントに対応する高級プライムレンズを作るレンズメーカーである。独ツァイス社ではすでにプライムレンズのバックオーダーが1500本以上、”Leica-Summilux-C Primes”で新しくこの世界に参入して来たライカでも、すでに220本のバックオーダーを抱えており、どちらも納入まで3ヶ月~半年以上という状況が生まれている。特にソニーF65、ARRI ALEXAなどの映画撮影用のトップエンドな撮影に対応できる、この手の高級プライムレンズを製造できるメーカーは、その他Cooke、ARRI、FUJINON(富士フイルム)など世界に数社と限られているため、需要が供給に追いつかなくなってきた現況がある。ARRIはFUJINONとの提携により、両社名の入ったプライムレンズシリーズを次々と開発しており、さらにこのレンズ需要は他社メーカーにも大きく影響していると言えそうだ。
またスーパー35mmサイズセンサー搭載のカメラが普及したことで、映画撮影者以外にも高級レンズを使用するケースも世界的に増えており、またDSLRムービーの活況もあってスチルカメラレンズの資産を活かしたいという需要も伸びている。日本でも中古レンズ市場が活況しているというが、まさにレンズマーケットの拡大は世界規模であることを、このIBCでは目の当たりにした。
またこうした動きに同調してPLマウントのズームレンズ市場ニーズも高まりつつある。キヤノンがNABで発表した2本のシネズームを始め、FUJINONを始めとする放送用レンズメーカーも新しい市場への期待も膨らんでいるようだ。ソニーがPMW-F3用の同社製ワイドズームレンズ11-16mmの『SCL-P11×15』(来春発売予定)と18-252mmのパワーズームレンズ『SCL-Z18×140』(年末発売予定)の2本のプロトタイプを展示した。
その中で、放送、特にドラマやドキュメンタリーのマーケットを絞って新たなアプローチを行うメーカーが出てきた。池上通信機では、NAB2011で参考出展された、同社初の4/3単板CMOSセンサーを搭載したGFCAMカメラ『HDS-F90』がさらに進化して参考出品。『HDS-F90』はPLマウントのシネマ用レンズが装着できるように設計されているが、あくまでテレビのドラマ制作、ドキュメンタリー制作などに向けたカメラであるため、放送用ズームレンズのような機能が求められていることから、今回はアンジェニューのOpimo15-40ズームレンズに放送用レンズのようなグリップを装着したPLレンズ付きプロトタイプを出展。同レンズはアンジェニュー社のブースにも参考展示された。カメラ形状も発売時は現状のドッカブルタイプかスタジオタイプになるかはまだ未定とのこと。
その他同社では、KOBAショーで初展示発表となった16ビットフルデジタルの3Gマルチフォーマット対応のスタジオカメラ『HDK-97A Unicam HD』や同社の産業用ミニHDカメラシステムを今回放送業務用として初出展した。
求められる様々なレンズ資産の再利用
こうした増大するレンズ市場の需要を満たす工夫として、これまで放送用、業務用で使われて来たB4マウントレンズの活用も進んでいる。米国BANDPRO社のブースでは、PMW-F3(PL)、AG-AF105(マイクロフォーサーズ)等に放送業務用B4マウントレンズを装着できるIB/E OPTICAL社のマウントアダプター4種を展示。ただしどうしてもテレコンバージョンになり、絞りも暗くなるなどの問題もある中で価格も€4,350(47万円)と高額なのでまだ開発の余地は色々とありそうだが、特に放送局等には膨大なB4マウントレンズ資産があることからも、こうしたニーズは高まってくると思われる。
さらにマウントアダプターに乗じて、同時にズームコントロールなどの需要が増えていることもあってか、英国のMTF Services社が今回は独自ブースを出展。キヤノンEFレンズをソニーのPMW-F3、NEX-FS100、パナソニックのAG-AF105などで使用できるEFマウント変換アダプターで、さらにアイリスコントロール(1/8thストップ)が可能な新製品”The MTF EFFECT”を参考出品した。