コンバート百花撩乱
一昔前は、信号コンバート/分岐などのコネクションツールも放送用品質を保持するためには、かなりの高額機器でないと品質保証という面では認知されなかった時代があったが、いまやこうしたツールに関しても5万円以下でしかもコンパクトで優れた製品が次々と登場している。またファイルベース運用が基本となってきた中で、これらのツールの重要性は増すばかりだ。
『NINJA』『SAMURAI』などの製品を送り出してきたATOMOS(KATANA社)は、画期的なアイディアの新製品を発表。カメラのバッテリーに直接取り付ける3G対応としては世界最小を謳うデュアルバッテリーコンバーター『CONNECT』(€249)。カメラのバッテリー(現行はSONY Lシリーズバッテリーに対応)とバッテリー本体の間に挟む新スタイルで、HD-SDI→HDMIの『S2H』と、HDMI→HD-SDI『H2S』の2種がある。コンバーター内にも内蔵バッテリーが同梱され、2時間動作保証でバッテリーチャージ中も収録を止める事無く動作。複数台の積み上げ使用も可能で、カラーバーや1KHz信号などのテストパターン装備や、2:3プルダウンのリアルタイム解除など付加機能も多彩、もちろん同社製品群との併用も可能だ。
コンバーター製品メーカーの最右翼として年々成長を続けるブラックマジックデザインは、ブースのサイズも昨年の2倍に拡張、さらに会場表には最大のバナーを掲示、そして11の新製品を発表した。その中でも大きな話題は、手のひらにすっぽりと収まる高品質の HDMIキャプチャー・再生と、アナログコンポーネント/NTSC/PAL/Sビデオ/アナログ音声キャプチャー・再生を組み合わせたThunderboltテクノロジー・ソリューション『Intensity Extreme』(€209)。
またNABでは参考展示の状態だったミニコンバーターシリーズの堅牢仕様バージョン『Mini Converters Heavy Duty』(各€425)も今回、正式な新製品として登場、「SDI to HDMI」「HDMI to SDI」「SDI to Analog」「Analog to SDI」の4機種を展示。新発表の製品ではないが、H.264のソリューション『H.264 Pro Recorder』(€355)を正式展示。SDI、HDMI、コンポーネントアナログからダイレクトにSD/HDのH.264ファイルを生成できる。さらに今話題のATEMスイッチャー機器群にも更なる新製品が登場。『ATEM Studio Converter』(€1,395)は、ラックマウント型の双方向光ファイバーSDI Quadコンバーターでトークバック機能も搭載している。
カナダのMatrox社が発表したマルチコンバートボックス『MC-100』は、2つずつのデュアル3G/3D/HD/SD-SDI入出力に1つのHDMI出力を装備し、モニタリング、配信、スイッチング、マルチ出力、コンバートの5つの機能をコンパクトな1ボックスに機能搭載した新コンセプト製品。価格も$500程度で、11月より出荷開始予定だ。
AJA VIDEO SYSTEMSは、こちらも今年のNABで発表されていたThunderboltに対応したポータブルビデオ/オーディオI/O製品(コードネーム:PHASER)を、『iO XT』として正式発表。11月ごろからの出荷予定で価格は$1495。さらに10ビット対応のマルチアップダウンクロス・ミニコンバーター『UDC』($695)が登場。年末発売を予定している。
ファイルレコーダー市場も汎用性が進行
AJAは、メディアレコーダー分野のパイオニア製品であるKiPro/KiPro miniのファームウェアを3.0へとバージョンアップし、1080/30P、720/60iに対応したほか、NABのRED EPIC/RED ONEに加えて、新たにキヤノンのXFコーデックとメタデータに対応したことを発表した。KiPro miniは新たにAVID DNxHDコーデック収録が可能になった。また編集系機器では、アップグレードしたKONA LHe Plusが登場。これに加えて、キャプチャーとプレイバックのためのソフトウェア”AJA Control Room”と”AJA Control Panel”を発表。10月からフリーダウンロード可能となる予定だ。これに代表されるように各社のファイルベースレコーダーも更なる汎用性を高めている。
NABで発表されていた米FFV社の『SideKicK HD』($2,495)は、業界標準コーデックProRes422(HQ)を専用のSSDパック に収録する4.3型TFTモニター付きのファイルベースレコーダー。HD-SDI/HDMI 入出力に対応、オプション対応でこちらもAvid DNxHD コーデックのリリースを予定。 本体前面には、プレビュー時コマ送りに便利なJOG/SCRUB コントローラを装備して収録画像確認だ。
ディスクレコーダーの cinedeckからは、cinedeck EXTREMEの上位機種となるラックマウントタイプのマルチチャンネル、マルチフォーマット対応のHD-SDIレコーダーcinedeck RXを新発表。Apple ProRes422をはじめ、Avid DNxHD、Cineformを最大2入力、記録時には同時に2 つの違うコーデックを指定して収録することが可能な”ダブルデュアルストリーム”機能を搭載したデスクトップタイプのレコーダー。またこの発表に伴い、従来機のcinedeck EXTREME はcinedeck EXと製品名を改訂した。また最大12 台のCinedeckを接続し、TCP-IP経由でデッキ・コントロールをするためのcinedeckコントロールアプリケーション”マルチチャネル・コントローラ”を発表、cinedeck EX およびcinedeck RX には同梱されるという。