10月2日から千葉県千葉市の幕張メッセでITとエレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2012」が始まった。10月2日が特別招待日で、10月3日から10月6日まで一般公開される予定だ。CEATECというと日本の家電メーカーが一堂に会する国内最大のITとエレクトロニクスの展示会で、国内において液晶テレビなどの家電の新製品を実際に見たり一足先の最新技術を知りたいならばこのイベント以上のものはないといっていいだろう。特に映像制作に関わるならば、液晶テレビや携帯電話といった機器が今後どのような方向で進んでいくのか知っておいて損はないはずだ。会場で展示された最新の機材や業界動向をさっそくレポートしよう。

見どころは4Kのラインナップの充実

昨年のCEATECでもっとも話題になったのは、開催前日に発表された東芝のグラスレス3D対応4K液晶テレビ「55X3」だ。民生向けテレビとしては世界初の3840×2160ピクセルを実現した4K対応液晶テレビで、同時期に発表されたソニーの4K対応ビデオプロジェクター「VPL-VW1000ES」と共に家庭用ホームシアターに4Kを開幕させたマイルストーン的な存在となった製品だ。それから1年が経過して、今年のCEATECでは各メーカーがどのように4Kの試作や製品を展示するかが注目だ。

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東芝ブースの様子。メインはデジタルプロダクツではなく、ステージはスマート家電関連の「スマートホーム」を展示

まずは、昨年リリースした「55X3」で家庭用4K液晶テレビをリードする東芝ブースから紹介しよう。レグザコーナーで「レグザ4K第二世代へ」というキャッチでアピールしていたのは4K対応84インチの液晶テレビの試作機だ。昨年発表した「55X3」の55インチよりもさらに大型化を実現した84インチという大きさと、4K超解像高画質化技術の「レグザエンジンCEVO 4K」と呼ばれる新エンジンを搭載しているのが特徴だ。

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4K関連製品は2年目に突入。「4K第二世代」というキャッチを使ってアピールしていた

パネルのメーカーについては一部の報道では韓国のメーカーの名前が上がっているが、説明員にこのことを尋ねても具体的なメーカー名の返答をもらうことはできなかった。今回出品した84インチモデルは現時点で商品名も決まっていない状態で、発売は2013年春の予定だ。

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ブースに展示されていた84インチの4K液晶テレビ。3台並べて大々的にアピールしていた

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HDDとSSDの特徴を併せ持つハイブリッドドライブ。大容量かつ容量単価の安価なHDDと高速動作が可能なNANDフラッシュメモリーを組み合わせたもので、8GBメモリーと自己学習キャッシングアルゴリズムを採用することで、OS起動やアプリケーションの高速起動が可能

SONY
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ソニーブースの正面には3台の4K対応の84インチ液晶テレビ「KD-84X9000」を配置して大々的にアピール

ソニーブースでもっともアピールしていたのは4K対応の84インチ液晶テレビ「KD-84X9000」だ。ソニーのBRAVIAシリーズで初の4K解像度対応モデルだ。低解像度のネット動画からデジタル放送、Blu-rayディスクのHD解像度までの映像を4K解像度にアップスケールすることができる超解像高画質回路「4K X-Reality PRO」を搭載しており、美しい映像に作り変えて4K映像を楽しむことができるのが特徴だ。ブースではフルHDとアップスケールした状態の比較を行って、美しさをアピールしていた。発売は11月23日。価格は168万円だ。

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ブース正面で展示していた「KD-84X9000」の様子。人の大きさと比較しても84インチというのがいかに大きいのがわかる

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「KD-84X9000」のデモではフルHD映像(右)とフルHD映像を4Kにスケールアップ(左)した実写映像の比較が行われていた

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高精細画像をモニタに表示した際のフルHD映像(右)とフルHD画像を4Kにスケールアップ(左)した際の比較も行われていた。スケールアップした映像はやはりきれいだ

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こちらが4Kパネルで表示した状態

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4Kのパネルを生かしたコンテンツの例として、プレイステーション3専用のソフト「PlayMemories Studio」を使う方法をアピールしていた。デジタルカメラで撮った写真を無線LANやカード経由でプレイステーション3に取り込んで4Kのパネルに表示して楽しむことができるというものだ。表示した写真の美しさに驚く人も多かった。

Panasonic
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パナソニックのブースでは、20インチの4K対応LCDが展示されていた。自社開発製のIPSα液晶パネルを採用した4K表示ディスプレイで、216ppiという高精細化と、フルHDパネルと同等の消費電力を実現しているのが特徴だ。また、スーパーハイビジョン対応の145インチの8Kのプラズマディスプレイの展示も注目を浴びていた。

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20インチという小型のサイズで4Kを実現。視野角が向上しているのも特徴だ

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スーパーハイビジョン用の145インチ8Kプラズマディスプレイ。スーパーハイビジョンはハイビジョンの16倍にあたる3300万画素の超高精細映像を実現する規格だ

SHARP
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シャープブースは液晶テレビや液晶ディスプレイを大々的にアピールしていた。IGZO液晶新技術のコーナーはとても大きかった

シャープブースでもICC-LED TVという技術を搭載した4Kの液晶モニタが展示されていた。アイキューブド研究所により開発されたICCと呼ばれる技術とシャープの4Kパネル技術を統合した商品で、光刺激に対する人間の認知過程を再現するという技術だ。ICC-LED以外でシャープのブースで圧巻だったのは、IGZOと呼ばれる新技術を使った液晶ディスプレイだ。IGZOとはインジウム、ガリウム、亜鉛を酸化加工したもののことで、高精細化ができて、低消費電力、ノイズが少なくなるのでタッチなどのスムーズな動きができるというのが特徴。実際の用途としてはテレビのモニタではなく、PCのモニタやサイネージなどに利用されるだろうとのことだ。スマートフォン向けのフルHD液晶パネルも目を引く存在だった。CGシリコン技術を使用し、わずか5インチの中に1080×1920のフルHDをカバーするというものだ。

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ブースの中にICC-LEDとフルHDの比較するコーナー。同じ信号を入力したフルHD(左)とICC-LED(右)の比較。例えばサルの映像の場合、毛並みがふさふさして表情も生き生きとしているように見える感じだ

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いろいろなIGZO液晶新技術を使ったディスプレイ展示されていた。写真は32インチの4Kディスプレイのデモ。縦型と横型に変えることができる構造になっていた

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タッチパネルに対応したIGZO液晶新技術を使った32インチの4Kディスプレイ

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a-SiディスプレイとIGZOディスプレイの消費電力の比較。約半分の消費電力で動作が可能なことがわかる

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参考出展されていた5インチの高精細ディスプレイ。5インチで1920×1080を実現している。スマートフォンでフルHDの時代はもうそこまできている感じだ

話題の最新カメラも展示されていた

今年のCEATECではまだ発売されていない多数の映像記録機能に対応したデジタルスチルカメラやハンディカムも展示されていた。カメラの中でも注目はソニーのレンズ交換式デジタル一眼カメラ「α99」だ。約2430万画素の35mmフルサイズのイメージセンサーを搭載するソニーのレンズ交換式デジタル一眼カメラのフラグシップモデルだ。19点の位相差AFセンサーに加えて被写体との距離を検出する102点の像面位相差センサーをイメージセンサー上に埋め込んだ世界初の「デュアルAFシステム」といったところがウリだ。映像記録機能では、HDMI同時出力で外部レコーダーを使った非圧縮動画記録に対応できたり、音声レベル表示・録音レベルコントロール機能やヘッドホン端子なども特徴だ。動画撮影時の感度の上限はISO6400(静止画の場合はISO25600)で、AVCHD Ver.2.0に準拠したフルHDの60pと24p記録に対応する。発売は10月26日を予定している。

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ソニーブースで人気だったレンズ交換式デジタル一眼カメラ「α99」

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側面にはHDMI端子を装備していて、外部レコーダーによる非圧縮動画記録が可能だ

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α99の構成パーツの様子。電子ビューファインダーの「Tru-Finder」の様子を確認することも可能だ

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APS-Cと35ミリフルフレームイメージセンサーの大きさの比較。センサーがいかに大きいのかがわかる

同じくソニーブースで展示されていた35mmフルサイズCMOSイメージセンサーを搭載するレンズ交換式デジタルHDビデオカメラレコーダー「NEX-VG900」も大注目の存在だ。NEX-VG900に搭載されているイメージセンサーは、先に紹介したα99と同じものだ。プログレッシブの60pや24pに対応するところや、ビデオカメラレコーダーでありながら2400万画素の静止画記録、RAW画像記録にも対応するといったところでもα99と共通なのはそれが理由だ。レンズマウントは標準はソニーEマウントだが、35mmフルサイズレンズに対応するマウントアダプター「LA-EA3」を使用することで、フルサイズ対応Aマウントレンズを画角が削られることなく撮影をすることが可能だ。また、APS-Cモード設定によりフルサイズセンサーをAPS-Cサイズのセンサーとして扱えることができるようになっている。2012年10月下旬発売予定だ。

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35ミリイメージセンサーを搭載した「NEX-VG900」

ちょっと変わったデジタルHDビデオカメラレコーダーも展示されていた。スポーツやアウトドアなどアクティブなシーンを撮影するための小型・軽量ビデオカメラ「HDR-AS15」だ。驚くのは本体のサイズは手のひらにおさまるぐらいで、重量は付属バッテリー込みで約90gしかない。あまりの小ささかつ本体にプレビューモニタを持たないので、手にとった人は「撮った映像をどうやって確認するの?」とブースで嘆く人も多かった。HDR-AS15で撮った映像は、専用ソフト「PlayMemories Mobile」をインストールしたスマートフォンやタブレットで確認できたり、マイクロUSBケーブルで接続したパソコンで見ることが可能だ。また、「撮影前のアングル確認」や「録画中のモニタリング」、「カメラのリモコン操作」といったこともスマートフォンやタブレットで可能だ。

画質モードは、もっとも高画質な1920×1080の30p、1280×720の30pならば2倍や4倍のスローモーション撮影も可能だ。オプションとして、自転車のハンドルに装着できるマウントや頭に固定したり、ゴーグルにも取り付けられるヘッドマウントキットなども用意されている。発売は10月12日で、価格はオープンプライス。市場実勢価格は30,000円前後だ。

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デジタルHDビデオカメラレコーダー「HDR-AS15」。ソニーは「アクションカム」という愛称で呼んでいる

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スマートフォンにモバイルアプリ「PlayMemories Mobile」をインストールすれば「撮影前のアングル確認」「録画中のモニタリング」「カメラのリモコン操作」などが可能だ

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付属のウォータープルーフケースを使用すれば、水深60mまでの水中撮影も可能だ

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オプションのキットを使ってヘルメットに取り付けた様子

ソニーブースはほかにも新製品でいっぱいだった。35mmフルサイズのCMOSイメージセンサーを世界で初めてコンパクトデジタルスチルカメラに搭載したデジタルスチルカメラ「DSC-RX1」も目立った存在だった。実際に製品の現物を見てみると、高級コンパクトカメラのオーラがムンムンとする製品といった感じだ。イメージセンサーは35mmフルサイズなので、先に紹介したα99やNEX-VG900と同じものと思われるかもしれないが、それらの2機種にはイメージセンサーに102点の像面位相差センサーを埋め込んでAFを強化しているのが特徴だ。DSC-RX1はコントラストAFだけのカメラなので、像面位相差センサーは必要ない。つまり、画質や画素数は同じだが像面位相差センサーのない別のイメージセンサーというのが正しい解答とのことだ。

このほかにも、レンズ交換式一眼カメラのEマウントカメラ「NEX-5R」と「NEX-6」も展示されていた。NEX-6は有機ELファインダーを搭載していることやモードダイヤルの搭載、概観の質感もウリだ。一眼レフとかをすでに使っているユーザーが直感的な操作ができるような操作性を実現したモデルといっていいだろう。NEX-5Rのほうは、小型化、コンパクト、スタイリッシュを目指したモデルで、有機ELファインダーやモードダイヤルは省かれている。従来機種のNEX-5のイメージを継承しながら画質を向上させたモデルといっていいだろう。2機種共に参考出品の状態で、発売は未定とのことだ。

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2430万画素の35ミリフルサイズCMOSセンサーを搭載した「DSC-RX1」。開放値F2の35mm単焦点レンズを搭載している。発売は11月16日で価格はオープンプライス。市場実勢価格は25万円前後を予定している

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参考出展されていた約1610万画素のExmor APS HD CMOSセンサーを搭載したデジタル一眼カメラ「NEX-6」。ファインダーやモードダイヤルを搭載するハイアマチュア向けのモデルだ

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参考出展されていた約1610万画素のExmor APS HD CMOSセンサーを搭載したデジタル一眼カメラ「NEX-5R」。スタイリッシュなデザインがウリ

マイクロフォーサーズのフラッグシップ機の「GH3」がいよいよ登場!

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高画質化や動画機能を強化した「DMC-GH3」

パナソニックのブースでは、マイクロフォーサーズのフラッグシップ機の「GH3」が展示されていた。最大の特徴は、映像素子に4/3型の新16M Live MOSセンサーを搭載したことだ。なおブースの説明員にどこのメーカーのイメージセンサーを採用しているのかをたずねてみたが、答えていただけなかった。新設計ローパスフィルターも特徴で、モアレ対策を向上させているという。動画機能で目を引くがの従来のAVCHDのほかにMP4とMOVに対応。MOVは、72Mbpsで記録が可能であったりALL-Intraを使えるようになっているのも魅力的なところだ。ISO感度の最大は12800で、ISO拡張時は25600まで設定可能だ。

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DMC-GH3のパーツの構成の様子

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マグネシウム合金ボディを採用