txt:石川幸宏 構成:編集部

DSMC/DSLRがスタンダードな手法になった2013年

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2010年に「DSMC/DSLR」という特集を2回に渡ってお送りした(第1回/第2回)。当時はすでにEOS 5D MarkⅡなどのデジタル一眼ムービーは浸透していたが、まだビデオの世界から見た一手法という視点で、どこかキワ物的な扱いだったような印象もある。新しく出現した可能性を感じる撮影手法であり、大いに魅力的だったが一過性のムーブメントというイメージも拭えないところもあった。また当時は、ソニーPMW-F3やPanasonic AG-AF105などの大判センサー搭載カメラも発表される直前で、誰しもスチルカメラの大判センサーから得られるボケ味の美しい画像=本格的な映画風の画づくりに魅了されていた時代だ。

そこから3年、いまやDSLRムービー、そしてDSMC(デジタル・スチル/モーション・カメラ)という1ジャンルは確実に認知され、リグや周辺機器などを含む一大市場が生まれ、確実に一般普及している。さらに従来からのビデオカメラのハード面にも大きな変化が現れ、大判センサー+映画撮影を意識したシネマカメラへといった進化を遂げている。

そんな中で、いまビデオと映画(旧フィルム)、ビデオとスチルという2つの撮影/制作カルチャーの間で、今度はお互いの撮影カルチャーの交換が頻繁に行われようとしている。しかし一部では双方の仕事の現場に、無理にそのカルチャーを当てはめようという動きも生まれ、微妙な軋轢を生んでいる現場もあるようだ。これまではその制作ジャンルによって、求める映像も違っていた。

もともとフィルムという基盤を持っている映画と、それに近い考え方を持つスチル系の人たち、またCMやMVなど制作系の映像コンテンツ制作者たちは、スチル的な要素が濃く、DSLRムービーを最初に奨励したのもこのジャンルの人たちだ。このスチル系の人たちの基本にあるのは、いわゆる”写真術”である。光のコントロールを基本に構図設計から導き出されるレンズ選びと巧みなフレーミング、またRAW現像などの熟れた技術を持っていれば、カラーグレーディングによる色調のコントロールへの派生も容易であり、より作家性の高い作品を追い求める指向が強い。

一方、放送を中心として立ち上がって来たビデオの世界は、ライブドキュメンタリーもしくはルポルタージュが基本の世界。カメラの目の前で行われている事をいかに忠実に失敗無く(←ここが重要!)切り取るか、しかも限定的絶対的時間という制約を受けながら、その中で変化する様々なライブ条件(自然状況の変化も含む)に対処しながら、巧みなENGワークで被写体を追う技術である。後に作家の視点による編集で、作り手側の意見を反映させるジャーナリスティックなドキュメンタリーという手法も存在するが、基本はライブであり、いかに被写体側の生を切り取るか、という技術を成熟させてきた。この2つの世界それぞれの立場で映像という形で表現することには違い無いが、それはそもそも全くの異文化であることをここで改めて認識しておきたい。

これまでスチル写真を撮って来たフォトグラファーという人たちと、ビデオカメラマンという人たちが、各々の作品づくりにおいて学んで来た技術や知識のベースは、根本的に違うのだ。しかし、DSLRの出現とともに、いまそこの溝を少しでも埋めて行こうとする動きは好ましいことで、お互いのカルチャーをもっと理解し合い、共有することが大事なのである。

そもそも映像制作そのものには決まったルールなど存在しない。存在するのは各フォーマットに合わせるときの業界的な慣習と、ビジネススキームに合わせるときの受け入れ方法に規則的なルールがあるだけである。が、DSLRムービーの出現がもたらした影響は、ここのルールを飛び越えることで、より良いコンテンツが生まれる可能性が出てきた。

果てなき映像表現を求めて…

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いまやTVドラマや企業VP、プロモーションビデオ、サイネージやブライダルといったジャンルの現場にも、少なからず変化を起こしている事は確かだ。24pや浅いDOFであったり、様々なレンズやスライダーなどの特機を多用した複雑なカット割、そして気の利いた音像演出といった、一般に『シネマティック○○○』と称される映像手法は、いまや様々なジャンルで用いられるようになった。雰囲気のあるプロモーションビデオやウエディングムービー、”シネUST”と呼ばれるUSTREAMなどの生放送コンテンツまで、その用途は様々である。

そこにはビデオの世界の人以上に、スチルカメラマン達も魅了されている。今月の特集では、DSMCのその後ということで、あまり話題にならないスチルカメラマン側の視点から、いまこの世界で何を生まれ、どこに行こうとしているのかを覗いてみたい。


[DSMC/DSLR #3] Vol.01