NAB開催直前プレスカンファレンスから見えること
日本では低気圧がひと暴れして豪雨などで被害が出たそうだが、砂漠地帯であるラスベガスは快晴かつ日中はかなりの暑さだ。昨年に比べ1週間ほど早く開催されたNABだが、早くも熱気を浴びたプレスカンファレンスがスタートしている。今年はパナソニックのプレスカンファレンスはなかったので、昨年あたりから多数の4K製品を発表しているソニーに注目してみよう。
ソニーはBeyond Definitionをテーマに、新たな価値を創造する様々な映像制作ソリューションを展示し、これまでの枠組みを超えた可能性を追求するとしている。
発表された製品は、HD422 MPEG 50Mbps対応のXDCAMショルダーカムコーダーPMW-400のほか、4K/HD対応の高画質ビデオフォーマットXAVCを拡張したLong GOPの高効率映像圧縮方式を採用したコンスーマー市場向けのXAVC S、HDや4K対応の業務用有機ELモニター、タッチパネルで簡単操作できるオールインワン型の映像制作機器Anycast Touch、NXCAMカムコーダー NEX-FS700Jにより4K/2K RAW記録を可能とするインターフェースユニット、XAVC HDフォーマット記録にも対応するXDCAM HD422レコーダー、仏Dalet社と提携した次世代アーカイブソリューション構築などである。
発表終了直後待ちかねたようにプロトタイプが展示された壇上に上がるカメラマンや記者たち。なかなかお目当ての製品を撮影することができなかった
また、毎年のプレスカンファレンスでもはや恒例となっているサプライズが今年もいくつかあった。DSLRタイプを含む4Kカメラのプロトタイプやレンズなどである。試作品ということで、詳細はこのカンファレンスでは触れられておらず、明日のプースレポートで続報したいと思う。
毎年恒例となった前日参考出品される製品たち。8本のレンズと2台のカメラはほとんどがプロトタイプだ
なにやら係争中の某カメラを彷彿させる4Kカメラ。ボディ周囲にはコネクターやスイッチなどはなく、取り付け用のネジ穴があるのみ。レコーダーと組み合わせて使用するようだ
DSLRタイプだが、マウント部分に注目したい。ソニーの一眼レフカメラに採用されているαマウントなどではなく、PLマウントのようである
先のCESで発表になっていた4K対応の有機ELモニター。XBR-65X900AとXBR-55X900A (3840×2160)
プロフェッショナルの要求に応える忠実な映像信号を再現する56型(3840×2160ピクセル)と30型(4096×2160ピクセル)の業務用有機ELモニター。来年発売予定 4K対応のメディアプレーヤーFMP-X1。既に4K対応の家庭用テレビは発売されているが、ソースが問題になっていた。FMP-X1はそうした問題解決の一つの回答といえるだろう
今夏発売される予定のFMP-X1に対応したコンテンツ。順次ラインナップは増やしていくそうなので、期待がもてる。コンテンツホルダーがどこまで追従してくれるかが、一般への4K普及の鍵となりそうだ
“Beyond Definition” (解像度を超えて)のその先に
ソニーの今年のNABテーマは”Beyond Definition” (解像度を超えて)ということで4K以外にも様々な新製品が披露される予定だ。これらは明日以降順次詳細をお届けしよう。
ソニーは昨年から今年にかけてプロジェクターや4K対応液晶テレビBRAVIAなど様々な製品を発表しているほか、新しい歌舞伎座とオフィスビル「歌舞伎座タワー」から成る「GINZA KABUKIZA」グランドオープンを記念し、4K歌舞伎を開催したほか、4K映像配信をPS4でも利用可能にするなど、撮影から視聴、製作環境、インフラなど様々なアプローチを行っている。さらに、関連会社として映画会社を傘下にもつことからコンテンツの供給も行うことができる唯一の企業といえる。4Kに関しては総合的にみて独走状態だ。ただ、一般に広く普及を望むためにはやはり、他社の参加追従が不可欠となるだろう。今後はそのための規格作りや標準化も必要になるが、過去の8ミリビデオやBlu-Rayなどを見てもわかる通り、普及には非常に長い時間と労力が伴う。その間にも技術は進み、特に最近ではその進歩が非常に早い。ややもすれば規格や標準化が決定する頃には時代遅れになりかねない。
一企業やグループ会社などがコンテンツや製作環境、インフラなどすべてを構築できるのならデファクトスタンダードとして道筋を作り、他社がついてくるという図式で行くというのも今後は正しい方向と言えるのかもしれない。以前ソニーは革新的な製品を世に送り出し、モルモットとも言われた時期があった。最近では大企業病とか、革新的な製品を作るには会社が大きくなりすぎた、などと言われ出してはいたが、すでにプロダクト単位の話ではなくなり、もっと大きな枠組みでソニーらしさが復活しそうな気配だ。ソニーの4Kへの取り組みは、何倍にも大きくなったソニーが創業からのソニースピリッツを原点回帰させるターニングポイントになるのだろうか。