珍しい悪天候とは裏腹に熱い会場
展示会初日、ラスベガスでは珍しく朝から雨模様。日中回復したものの時々小雨がぱらつくというコンディションだ。その分多少はしのぎやすいのだが、NAB会場内は数時間で早くもヒートアップ。多数の来場者で芋洗い状態だ。
HDや3Dで沸いた数年前と比べ、ギリシャショックのせいか会場内にところどころ空き地ができた昨年あたり。他業種の参入や本流以外の製品を手がけるメーカーが増えてきたように思う。それはデジタル化であったり、放送以外の例えば写真業界や映画業界の参入によりボーダレス化が進んだ結果と言えるだろう。
こうしたボーダレス化は4Kへと進み、インターフェースや記録フォーマットの標準化を待たずにフライング状態でのスタートを切っている。当然今年はカメラやモニターなど4K対応の製品が各社から多数出品されており、撮影から編集などの後処理、視聴環境など一般ユーザーへのインフラも含めて整いつつある。特に4Kといっても目新しさがなくなってきたというのが、初日会場内の第一印象だ。
加えて放送機器を扱ってきたメーカーもキヤノンのようにデジタル一眼の動画への利用をきっかけにEOS MOVIEシステムを立ち上げたり、ブラックマジックデザインがカメラを発売するなど、本流だった商品以外にも幅を広げ、キヤノンはEOS MOVIEシステムを使った映像制作をアピールするため、パナソニックの隣に大きなシアターを設け、既に動画制作で実績を上げている。昨年低価格なカメラを発表し、話題となったブラックマジックデザインは、新たなカメラを発表することで、ラインナップの拡大を図っている。
さて、そうした中でNHKが提唱する8Kがポスト4Kとしてコマを進めつつある。ちょっと前までは夢物語のようなレゾリューションだったが、カメラに関しては実用的になってきたようだ。8Kといえば1、2年前は何十kgもある箱型のカメラが一般的だったが、日立からENGタイプのカメラが出展されていたり、4Kのカメラで先行していたアストロデザインからは、さらに小型なものが出展されていた。
ブラックマジックデザイン
ブラックマジックデザインBlackmagic Pocket Cinema Camera。一見してコンパクトデジタル一眼のような外観だが、Lossless CinemaDNG RAWやApple ProRes記録が可能な動画カメラ
ブラックマジックデザインBlackmagic Production Camera 4K。いよいよというかやはり出た4K対応。スーパー35mmサイズのセンサーを採用
日立
日立スーパーハイビジョンカメラ。33メガピクセルのCMOSを採用した単板式。現状別途CCUが必要だがカメラとは光ファイバーケーブル1本で接続可能
アストロデザイン
アストロデザイン8KカメラAH-4800。NHK開発の2.5型のCMOSセンサーを採用。マウントはPLマウントを採用
4K8Kいまここにある未来
4Kや8Kはまだこれからの普及だが、すでに当たり前となったHDでも新たな展開がある。パナソニックはAVC-ULTRA対応のカメラとしてAJ-PX5000のほか、新たなハンドヘルドタイプのカメラを出展。ソニーもPMW-F55のほか、XAVCに対応したレコーダーなどを出展している。すでに実運用がされているHDだが、まだまだ新たな展開がありそうだ。
パナソニック
パナソニックAJ-PX5000。記録フォーマットにAVC-ULTRAを採用したほか、microP2メモリー対応やネットワーク機能などを備えている。秋頃の発売が予定されている
パナソニックのAVC-ULTRA記録が可能なハンドヘルドタイプのカメラ。1/3型3CMOSを搭載、プレイリストの編集やワイヤレスLANなどに対応している。現状まだモックアップのようで、ケース内に収納しての出展
ソニー
ソニーPMW-F55。昨年末にRAWレコーダーAXS-R5と同時期に発表となったもの。その後XAVC QFHD記録モード対応へのファームアップなどの仕様変更があった。4Kで約2.5倍、2Kで約10倍のスーパースローモーション撮影が可能
ソニーPMW-1000。MPEG HD422(50Mbps)、MPEG HD420(35Mbps)などプロフェッショナルディスクと同じXDCAMフォーマットに加え、新しく追加されたXAVCフォーマットにも対応