実際に足を踏み入れる事が大事なNABshow

石川幸宏

NAB2013 展示会初日。朝から激しい風雨で夜は10℃近くまで冷え込むという、4月のラスベガスにしては極めて珍しい天候で始まった今年のNAB。「旅をした人でなければ、その旅の本当の意味を知ることができない…」というサハラ砂漠の民、ベルベル人の諺にもあるように、砂漠の街ラスベガスで起きるここ数日間の出来事は、参加者にとって様々な経験とチャンスを得る絶好の時間でもある。取材する我々も、それゆえ毎年NABには来る必然を感じる。

最初のキーワードは「Live」。これからの映像コンテンツの流れを考える時、ライブ映像の可能性は大きく、そこをいかに演出するか?は新たな映像ビジネスの大きなチャンスだと言える。マーケット的にもまた新たな映像コンテンツ市場を生み出す可能性は高い。

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池上通信機ブース内に一際目を引く、ARRIのシネマカメラ技術と池上の放送技術が合体したシネマと放送の、文字通りのハイブリッドカメラ「HDK-79ARRI」が登場。高性能のARRI製スーパー35mmCMOSセンサーを搭載し、PLマウントによるシネマレンズを多用できる仕様のカメラ前部と、これまでの池上の放送カメラ技術を集約したカメラ後部からなる。

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シネスタイルによる映像表現が自由になり、かつCCUなどの効率的な放送カメラシステムを利用できる画期的な製品だ。主にライブなどのイベント映像収録向けとして、MTVなどの業者からもすでに好評だという。このハイブリッドカメラの流れはこれからのすべての業務用カメラにも当てはまって行くと予想され、今後の動向に注目したい流れだ。

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開催初日より充実のデジタルシネマ機器ラインアップ

江夏由洋

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開幕して初日、いきなりBlackmagic Designから2台の新しいカメラが発表になった。「Blackmagic Pocket Cinema Camera」と「Blackmagic Production Camera 4K」だ。Pocket Cinema Cameraは13Stopのダイナミックレンジを持つスーパー16㎜サイズのセンサーを搭載し、フルHDの映像を収録できるカメラだ。フォーマットはProRes(HQ)とロスレスのCinamaDNGで、記録媒体をSDカードにした。マウントもマイクロフォーサーズマウントで、汎用性も携帯性も抜群。しかもこのカメラの価格は$995というのが、さすがBlackmagic Designである。発売は夏以降ということだが、超低価格のシネマカメラが登場ということで、かなりのインパクトとなった。

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そしてもう一台のBlackmagic Production Camera 4Kは、待望の4K対応のスーパー35㎜センサーのカメラだ。今までの筐体をそのまま使用し、中身だけを変えるだけでコストを最大限に抑えることに成功した。その価格はなんと$3,995。約40万円という、素晴らしいコストパフォーマンスを実現。同じく夏以降の発売を目標としている。

更に今回多くの注目を集めたのがDaVinci Resolveのバージョン10だ。リアルタイムによるライブカラーグレーディング機能や、編集タイムラインを組める機能、プラグインに対応させたことなどノンリニア編集ソフトウエアとしての色を強く出しており、いよいよポストプロダクションという舞台でも世界を覆そうとしている。

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さらにはREDが遂にDragonセンサーのアップグレードプログラムを開始した。ブースでもDragonの実機を何台も展示したり、実際のアップグレードプログラムのラボをブースにおいたりと、Dragon一色となった。6Kという次世代のセンサーに駆ける強い想いがひしひしと伝わる演出だ。更にはMotion Mountというレンズマウントも登場。なんと待望のNDフィルターをREDに内蔵させることができる。電子制御のNDフィルターというのもREDらしい技術であろう。そして更にこのマウントを使用すると、ローリングシャッターを抑えることができるのだ。いわゆるグローバルシャッター機能であり、このマウントでREDに足りないとされた大きな課題を一度に解決させられることになる。価格は$4,500でまずはPLマウントからこの秋に出荷予定ということだ。

もちろんSONYではF55を中心としたデジタルシネマが展開され、CanonブースでもC500の4Kコンテンツをいかに効率的に完成させるかというワークフローが紹介されていた。いよいよ4Kを中心としたデジタルシネマの世界が大きな躍進を迎えることとなる。初日にしてカメラを見るだけでも時間が足りないほど濃い内容であった。明日は編集の方にも是非目を向けてみたい。

相変わらずの寝不足と引き換えに手に入れるもの

岡英史

NABに来るとホントに忙しく毎日のリポートや動画編集(殆ど何も出来てないが)等々で毎日早くても午前4時過ぎの就寝となる。そこまでして何故NABに行くのか?一言で言えば面白い!に尽きるからである。と言うことで数点の初日の成果を紹介をしてみたい。

今回も楽しい機材が一杯

今年のNABは大メーカー程「刈り取り時期」と思っているのか派手な演出はない。更に追い打ちを掛けるようにPanasonicがブース縮小の上にプレスカンファレンスも中止という寂しい時期でさえある。しかしそんな中でも小型ガジェット系製品、サードパーティーは元気が良い。

MoVI
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今回のNABでもの凄く興味があったのが、スタビライズドRIGとでも言うのか3軸ジャイロ付きのMoVIである。RIG単体での重量は約1.9kgなので5DmkⅢと組み合わせると5~6Kgになってしまう。

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さすがにこれを両腕だけでホールドするのは辛いと考えてた所、これを小型モービルに搭載するとすこぶる調子が良さそうだ。MoVIの弱点的な上下動の動きを比較的キャンセルさせられるので大型のRCカーとの組み合わせはかなり良い。

Canon EOS C300&C500用のモニタースコープ
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赤のアルマイト処理がEOSカラーにも?!

またCanon EOS C300&C500用のモニタースコープで完成度の高い物があった。ブース出展している訳でもなくCanonブースでの協賛という形を取っているが、専用スコープと言うことも含めてかなり出来が良い。実は昨年のInterBEE2012で既にSYSTEM5「岡ちゃん」の動画で紹介されていた事も付け加えておこう。

ブラックマジックデザイン
NAB2013_34_oka_5503.jpg このコンパクトな外見からは全く想像が出来ない!

BMDからは既に情報は出回っているが、昨年に引き続きカメラが2台新発表された。1台は4Kカメラなので容易に想像出来て居た方も多いと思うがもう一台のポケットシネマカメラは意外過ぎた。その外見は正にコンパクトデジカメだが写真は撮れず動画だけというのも割り切りが良い。大きさ感はNEX-5に近いかもしれない。素材感も悪くなく10万以下の価格と相まって中々面白そうなガジェットに化けるかも?

SONY
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最後にSONYブース。XDCAMワークフローの一環で携帯電話回線を使用してのネットワーク構築フローに使用できるUSBセットトップボックス的な物が展示してあった。細かい事は後日Webサイト等で見てもらうとしてその汎用性の高さが中々良い。また一部のSONY製カメラ(PMW-200/400等)では簡単なカメラコントロールも出来る。これを見てストリーミング配信かと考える方も居ると思われるが、今はNG。しかし将来的なロードマップの中にはストリーミング機構も組み込まれているようだ。

総評

大メーカーから目立った新製品カメラが登場していないことからやや盛り下がり気味のNAB2013と思われていたが、実際各メーカーでは今までの製品の更なるブラッシュアップやワイヤレス環境構築等を地味に行っていて、その技術が何時化けるかと言うのが面白い所かもしれない。

microP2も特機も8Kカメラも期待大!

岡田裕介

皆さん、こんにちは。システムファイブ、営業の岡田裕介でございます。

さてさて、NAB2013の初日を迎えたわけですが…やはり海外初渡航とNAB初参戦の緊張から、ホテルから最寄り駅(モノレール)までは問題なく行けたものの、乗る方向を国内の左側走行と重なりLVCC(ラスベガスコンベンションセンター)とは真逆の方向へ進んでしまい大きく時間をロス…出だしから嫌な予感。何とか無事LVCCへ到着した訳ですが、流石はアメリカ、会場の大きさと人の多さに度肝を抜かれました。そんなこんなで、NAB2013初日に気になった製品をご紹介します!

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パナソニックのP2が大きく進化する予感です。microP2に完全対応したハンドヘルドビデオカメラで型番は不明。AVC-ULTRAのプレートが光っていますが、AVC-Intra100は勿論、待望のLongG 25Mbpsに対応!現行のAG-AC90の収納式液晶が評価いいので今回採用されたのかな?ともあれmicroP2になり、従来のPCカードベースの価格の半値となることから、今後ユーザーはフレーム内圧縮と高いビットレート収録、また10bit 4:2:2の高階調表現と色再現性で人気を集めそうですね。

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こちらも同じくパナソニックのmicroP2対応ポータブルレコーダーです。現行機種のAG-HMR10Aに似ていますよね。今回NABではまだ型番や価格が決まっていませんが、仕様としては大変魅力的です。AG-HMR10Aで不足だなぁと感じられていることはすべて払拭されそうです。まずは、マイクロP2による収録が可能で、先ほどのカメラで紹介した魅了的なコーデックでの収録が可能。それに、SDI入出力とHDMI入出力だけでも充分なんですが、XLR端子をL/Rの2ch外部から入力出来るんですね。これによってスイッチャーからの外部収録との組み合わせで重宝すること間違いないでしょう。

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これば使えそう!BARBER TECH VIDEO PRODUCTSのSTEDDIEPOD

さてさて特機大好きトッキー岡田が会場で面白いものを発見しました。メーカーはBARBER TECH VIDEO PRODUCTSと日本では聞いたことのないアメリカのベンチャーさんです。この機材、右の画像もあるように、この「STEDDIEPOD」、1台6役こなすアイテムなんですが、更にオプションを足せば車両に取り付けることも出来ちゃう…しかもお値段が基本セットが$450程度と約4万半ばの価格。カメラスタビライザーとしてのパフォーマンスは充分実用可能な性能でした。全米ネットワークのCNN・CBS・ABCやハリウッドのディズニーでも使われているようです。まだ日本には卸していないようですので、ここは私が国内で取扱いが可能か否かの交渉に明日出向く予定です。私も性能がイマイチと感じればスルーするのですが、この価格でこのパフォーマンスの高さであれば、日本国内のプロビデオユーザーさんに受け入れていただける、また現場で使用いただけるかと思います。この特機、超おすすめです!

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こちらは日立さんのブースで目撃した8K対応スタジオカメラシステムの実機デモですね。8KというとSDI端子を16ch使用して映像を伝送するということが従来のお話しだったんですが、なんと今回はシンプルに光同軸ケーブル1本でカメラベースステーションに伝送するシステムを参考展示で発表されていました。カメラベースステーションも2U程度の高さ。8Kなのに現行のベースステーションとあまり変わらない大きさで、着々と8Kスーパーハイビジョンの存在が迫って来ていることを実感しました。これだと今の中継車両に5~6カメラ分をラックマウントに搭載して、光同軸ケーブルでこのショルダーカメラまで簡単に引き回しできますよね?4Kも魅力はありますが8Kを見てしまうと…これもNABの魅力ですね。

ちなみにカメラ内のセンサーはスーパー35のイメージャーより若干大きいセンサーを使用されているようで、感度に関してはまだF5相当と現行のF12クラスの感度を有するカメラとの差はありますが、ここは2~3年で大きく飛躍することは間違いないでしょう。ちなみにこの映像はアストロデザインさんの4K液晶モニターにダウンスケーリング表示されていました。4Kでも充分に綺麗です!解像度が上がると被写体の奥行き感の表現力が向上しますね。このアストロ4K液晶モニターも抜群のクオリティーです。

という訳でNAB2013初日を終えましたが…お腹が空きました。何せ会場も大きいしラスベガスの街全体のスケールが大き過ぎます。明日、明後日と時間の経過とともにダイエットが出来そうな予感…明日2日目もご期待下さい。


Day00 [NAB2013攻略記] Day02

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