飛躍的に進化するノンリニア編集の形
江夏由洋
Adobeブースは連日のセミナーで大勢の人を集めていた。今日はVideo Copilotのアンドリュー・クレーマー氏が登壇することもあって、200人以上の人が集まりものすごい熱気に包まれていた。おそらくNAB2013でもっとも人が集まったセミナーだと言える。今のAdobeの勢いを表しているようでもあった。
さて今回のNABでは話題になっているのが、シェアエディティングだ。これはクラウド型のノンリニア編集の理想的な形で、クラウドサーバーに置かれた素材を複数の端末がネットワークを通じて、同時多発的に編集を行うというものだ。ネットワークの帯域の確保や、セキュリティの問題、あるいはサーバーのディスクスピードやメモリの問題など、そう簡単には実現できない技術といわれていた。ところが今回Adobeが「Adobe Anywhere」というシェアエディティングのサービスを実機デモも交えて発表し、大きな注目を浴びていた。
Adobe Anywhereの特徴はプロキシ(中間コーデック)を生成することなく、アクセスする端末のスペックに併せてサーバーの映像素材を再生させる技術を搭載したことだ。それがMercury Stream Engineである。従来のネットワーク編集の場合、回線の帯域を考えて相応のプロキシを生成し、端末はそれらの軽いファイルを使用することで外部からの編集を可能にしていた。しかし端末のスペックには個体差があり、またそれぞれのネットワークも状況に違いがあるため、理想的なシェアエディティングの形には至らなかった。そんな中Adobeは根本から技術を見直し、2年の時間をかけてMercury Stream Engineを完成させ、見事にAdobe Anywhereを完成させたのだ。
実施にあたり、今のところAnywhere導入の費用を未だ画策しているとのこと。導入には単純な使用料のほかに、初期投資としてサーバーの設営費用が掛かることになる。3人のID発行で年間おおよそ100万円程度とも噂されているが、今回のNABでの反応などを一つ一つ受け止めて、今後の決定に結び付けていくようだ。カフェのWi-Fiを使って4K素材の編集をiPadで行うなどといったことが、近い将来に可能になるのかもしれない。
大手カメラメーカー各社の動きから見る4K市場動向
石川幸宏
NAB2013での日本大手メーカー各社の動きからも、話題の4K市場動向を色々と推測できる。今年プレスカンファレンスを行わなかったパナソニック。NABに先駆けて発表されたSDカードサイズの業務用メモリーカード「microP2カード」と、AVC-ULTRA対応の2/3型3MOS HDカムコーダー「AJ-PX5000G」など幾つかの発表以外に際立った動きはなかったが、もちろん次世代テクノロジーへの開発は色々と進めている。ブースの中央にひっそりと展示してあったのは4Kカムコーダー。写真の通り筐体はAG-AC90そのもので、詳しい説明もほぼ皆無な状況だが、4K画像は投写されている。いつでも作ることは可能だが視聴環境が整わない今、どんな形の製品発表が市場に受け入れられるのか?R&Dの時期であることを明確に示している展示のように思えた。
キヤノンも先のミニカムコーダー「XA20/XA25」とEFシネマレンズ35mm以外に具体的なリリース製品が少なかったこともあり、徹底したワークショップやセミナーによる4K普及を強力に推進。EOS C500では、映画系の作品紹介とともに4K収録によるスポーツイベントなどのライブ放送などを紹介。3月に行われた野球の世界対抗戦WBC(ワールドベースボールクラシック)での収録事例などが紹介された。写真は、5D MarkⅡの映像で有名なビンセント・ラフォーレ氏によるEOS-1D Cの4K作品の解説セミナー。
4Kは、すでにテクノロジーとしてはさほど高い障壁は無いものの、実際の視聴環境を含めた市場への投入方法をどうしていくかが非常に大きな課題となっている。メーカー各社ともにまだまだ暗中模索といった現状で、このNABでのレスポンスが今後の4K推進に大きな影響を与えそうだ。
NABと言う場所
岡英史
何だかんだ今年で3回目のNAB視察(参加)と言う事になったのだが、そもそもそのきっかけは行きたくて来た訳でもない。安いとは言えない金額を”自腹”で来る意味は本当にあるのか?その迷いを吹き飛ばしてくれたのはスイッチャー侍こと小寺信良氏の「NAB来ずに映像ライター何て言ってると潰すぞ!」の言葉に屈服した訳だが(一部脚色)、実際はどうだったかと言えば参加して良かった事しかない。
旅費も1月頃から安価なパッケージを探せば想像以上に存在する。ここに来て良いことは各メーカーの動きをロードマップ通りに見ることが出来る。更に技術者や普段お会いできない人物にも会う事が出来る可能性も大きい。
迷ってる方は是非来年参加してほしい。多少高い交通費もカジノ隣接のホテルに宿泊すれば、簡単にカバーしてくれるかもしれない。
展示物の見せ方
NABは、展示物の見せ方がInterBEE等、日本のコンベンションと明らかに違う。見せ方が本当に上手いのだ。その中でもGoProの展示方法には毎回驚かされる。いつもド迫力の展示をしている。しかし今年は例年に比べるとそれほど派手には見えない。これは目が慣れたのか展示方法を変えたのか良くわからない…。少なくともMTB好きの筆者には展示してある自転車に目が釘付けになった。
この様にビークルはアイキャッチとしてとても効果的だ
もう一つはスライダーの展示方法としてカスタムしたオートバイを使っているブースがあった。起伏やメッキ形状のパーツが多いこの手のオートバイならこの様な展示もありだ。
スライダー専門店?!
筆者はCFRPやアルミの切削物に目がないのだが今回のNABでそのアルミの切削だけでガジェットを作っているメーカーがあった。MYT WORKSと言うメーカーだ。商品は全て削りっぱなし!とは言えしっかりと角はRが付いているので子供にも安全だ。もちろんスライダーとしての動きも形の大小に係わらず間違いなく滑らかに動く。機構単純かつ合理的に作られているので、これならば卓上旋盤程度を使える方なら自作も可能だろう。
同録ガンマイク
収録時の音声を拾うにはガンマイクが一番便利だ。一般的なENGカメラならキャノン入力もあるので音声収録にも特に問題はないが、ミラーレス一眼や民生機からブラッシュアップされたビデオカメラなどは内蔵マイクのみの場合もあり今一不安が残る物だが、SHUREの新製品(予定)ならガンマイク本体にmicroSDによる録音が可能。また同時にミニステレオによる出力ができ、一つは同録カメラに戻し、もう一つはイヤホン等でのモニタリングに回すことが出来る。正に「バックアップが取れるガンマイク」と言う新しいジャンルになるはずだ。
特機好きにはたまらないNAB!
岡田裕介
皆さん、こんにちは。特機大好き、トッキー岡田です。
今回のNABは4Kが放送やムービー世界で本格稼働した印象ですね。各社からは大判センサーで4Kイメージャーを搭載したカメラが登場し、レコーダーの数も増えてきました。私もその辺りをレポートしようかと思いながら会場を歩いていると、ソニーブース前にクレーンやジブ、コントロールヘッド等の特機が目に飛び込んできました。特機好きの血が騒ぐ私は、ソニーやキヤノンは他の三銃士が訪問してるんだろなと勝手に解釈し、そのまま特機メーカー各社のブースへ足を運ぶことに。
Ex fxというアメリカの特機屋さん。JIBオンリーで $1199 約12万円。脚は別売ですがかなりお買い得!オプションのエクステンションパッケージを併用すると最大で約6mまで伸ばすことが出来るそうです。ちなみのこのオプションエクステンションパッケージでなんと$3580、約35万円程度。場面によってJIBかクレーンかで使い分けが可能になるというのは、運用面でもかなり魅力的ですよね。
リモートコントロールヘッドはコントローラー込みで$2999、約30万円とリーズナブル。MAX8kg程度の機材を搭載することが可能なんですが、注目すべき点はこのコントローラーです。
コントローラー右上にあるRampingというツマミを操作することで、動き始めと動き終わりに余韻を残しながら動く。例えが難しいですが動きだしと止まり際のパン・ティルトがやわらかくなるという、この価格帯ではなかなか無い機能かと思います。その他は従来通りのスピード調整、逆相等はしっかりと装備されていますね。
このリモートフォローフォーカスもいい味出してますよ。コントロール部分がオーディオミキサーのスライダーになっているんですね。意外に使い心地は良かったですよ。このコントローラーはフォーカスでもズームでも両方に応用が可能ですね。値段は$699、約7万円です。
アメリカの特機は値段も安いしこのようなアイテムを作っているメーカーさんの数が多い。このような文化が発展を支えているんですね。さてさて、今度はブースの間隔が一気に狭まるエリアに入ってきましたよ。まるで秋葉原ガード下の電気街のような雰囲気が味わえますね。
さっそく目に飛び込んできたのがSHAPEブース。Nikon D4がリグに取り付けられていますが、EOS-1D Cにも取り付け可能かもしれません。それにEOS 5D MarkIIなどで縦型グリップ着けちゃうとしっくりこなかったり、フォローフォーカスの噛み合わせが浅くなってしまったりと色々悩まされますよね。私も幾度となくそのような経験をしていましたが、これはすごくいいシステムですよ。フォローフォーカスをジョイントする為のロッドと、システム本体を支えるロッド部の2段構造、今回のモデルは15mmロッドでした。
更にこの部分も大注目です。デュアルハンドル部ですが…ハンドルサイドの赤いボタンを押すとすぐにハンドルの角度を可変出来るんです。現在主流のハンドルはネジで何回か回して固定しますが面倒ですよね。これならばすぐにボタンをワンプッシュでハンドル角が調整できます。ロック後の強度もしっかりしていました。
ちなみにこのシステム…リグ本体・トップハンドル・ショルダーパッド・デュアルハンドル・マットボックスフォローフォーカスを含めて何と!$2059、約21万円。まだ日本へは商品を卸していないとのことでしたので、バイヤー岡田が只今メーカーと交渉中でございます。近いうちにPROGEAR半蔵門で取り扱いが出来ればと考えています。ご期待下さい!
それにしても面白い!NABって幼い頃に出掛けたデパートのおもちゃ売り場のような場所。新たな発見が目白押しですから、楽しくて仕方がない場所ですよ。皆さんも無理してでも一度は来た方がいいですね。
ロープウェイ!ワイヤーをA地点からB地点へ張り、そのロープ上をモーターを搭載したユニットが走行します。前後移動と可変速が遠隔操作できます。ユニットの下にはやはりGoProが鎮座!もう重鎮の佇まい。
さてこのシステムは、dactylcamというアメリカのメーカーの製品です。スタッフさんに尋ねるとやはり日本にはまだ卸していなとのこと。ということで、またまたバイヤー岡田が出陣!国内で使用できるのかも含めて交渉中ですのでご期待下さい。尚、気になるお値段ですが…何と!$750。約7万円半ばと超低価格。ワイヤーも込みのお値段です。ワイヤーは150mと310mの2種類から選択できるようです。長い… 。GoProとこのシステムを含めて10万円弱とは、これは間違いなく売れる予感です。
カメラのパン・ティルトを可能にするモデルは$12,200、約120万円と一気に高くなりますが、今まで撮れなかったアングルと動きできっと今後のお仕事の幅が広がるんではないでしょうか!ライブやスポーツ関連のユーザーさんは必見です。dactylcamのデモ映像がVimeoにアップされていますのでご覧下さい。
http://vimeo.com/dactylcam
そんなこんなで2日目はやはり特機メインのレポートになっちゃいました。システムファイブのアメリカ支店「PROGEARラスベガス」でも立ち上げようかな?本当にアメリカのエンターテインメントに掛ける意気込みには圧巻です!皆が娯楽を心も体もすべて使って体感しようという意思が伝わりますね。以上、トッキー岡田こと岡田裕介がお伝えしました。
映像三銃士からのリアルタイムレポートはこちら
今年のNAB特集は、石川氏、江夏氏、岡氏の”映像三銃士”とPROGEAR半蔵門の岡ちゃんがラスベガス会場から現地から最新情報をTweetでお届け!毎日更新されるまとめのデイリーレポートもお見逃しなく!