4Kの行先
江夏由洋
今年のNABはやはり「4K」一色。特にカメラは4Kのスペックを持つものが大きな注目を集めており、デジタルシネマ元年というべき、華やかな機材が会場を盛り上げていた。SONYのPMW-F55やCanonのEOS C500、RED Dragon、そしてBlackmagic Production Camera 4Kなど品質の高い4Kカメラが新しい映像制作の世界を広げることになるだろう。
ポストプロダクションの分野でもAdobe Premiere ProやAfter Effectsといった64bitのソフトウエアは、4Kの編集をネイティブでサポートし4Kなどのハイレゾリュ―ションの素材もレンダリングすることなく動かすことができるのだ。
またPCIのキャプチャカードも4K対応のものがいくつか発表されており、スタンドアローンのデスクトップパソコンでも4Kの映像素材をモニタリングできるまでになった。Bluefish444からBluefish444 Epoch | 4K Supernovaが正式にAdobe Premiere Proの4K再生に対応。4096×2160の4K映像を30fpsで再生させられるのだ。Premiere ProのMercury Playback Engineと合わせればレンダリングせずにリアルタイム再生という、次世代の編集環境を作ることができる。Christieからは世界初の4K60fpsを表示できるDLPプロジェクターが発表され、4Kモニターや4Kプロジェクターなども会場では多く見られた。いよいよ4Kのワークフローが撮影~編集~上映と一本の線でつながることになり、次世代の映像スタンダードが新たに確立されたと言っていいだろう。2013年は相当エキサイティングな一年になることを期待したい。
キーワードは、4K R&D
石川幸宏
その規模の大きさから、3日目にしてようやくその全貌が見えてくるNAB。今年の傾向としては昨年までのデジタルシネマへの強い傾倒が鳴りを潜め、どのブースも4Kをベースにした次世代放送に向けて、技術の準備段階とそのリサーチを意識させる、「4K R&D」と言えるような非常に振り幅の広い展示内容を感じさせる。今日は幾つかのキーワードと言えるものをピックアップしてみたい。
一つはULTRA HD。これはこれまでQFHDと呼ばれていたHDサイズ=1920×1080の4倍にあたる、3840×2160のサイズのデータ/コンテンツを指す。この辺りは基本的に放送ベースの展示会であるNABゆえの自負の現れかもしれないが、ここはあえて4Kとは言わずULTRA HDという表現を明確に打ち出すことで、テレビ放送ベースでの次世代フォーマットの切り口を模索しつつも強く意識している感が伝わってくる。
そしてこれを現実的に送信するための伝送技術。4Kは現状では3G-SDI複数本などによる従来の技術を応用したものだったが、ITの世界におけるトラブルの約8割がケーブルトラブルである事実を考えてみると、複数本のケーブルで高画質ゆえの複雑さそのままに伝送していくのは現実的ではない。送出系ではすでに光ケーブルなどのテクノロジーも発表展示されているが、制作系では色々と帯域制限や伝送距離制限は出てくるものの、ブラックマジックデザインから早くも1本のケーブルでこれらの伝送を実現する、6G-SDI対応製品を発表した。実はブラックマジックデザインは話題のシネマカメラ系に目を奪われがちだが、実は今回のテーマは、ハッキリとULTRA HDと6G-SDIと謳っている。現場での使用の現実感はまだこれからという段階かもしれないが、いつもチャレンジングな製品を安価に、そして迅速に提供してくれるのは頼もしい限りだ。
NAB2013のデジタルシネマ
NAB2013をデジタルシネマという括りで見てみると、今年はアナモフィックというキーワードが一つ見えてくる。ARRI/ZEISSは、昨年まで参考出品していたマスターアナモフィックレンズのラインナップを拡大。T2.9のラインナップを35mmから135mmまでの全7種類を発表した。これに同調してARRIのALEXAはXTシリーズが追加、全機種に新発表のオリジナルSSDドライブ XRモジュールを搭載し、アナモフィックを意識した4:3画角のセンサーを搭載している。さらにアンジェニューもアナモフィックレンズラインナップを拡充。デジタルシネマの世界では、4Kとともにシネスコサイズ・コンテンツへの強いこだわりが具体的な製品に反映されてきたようだ。
今年はマルチコプター元年?!
岡英史
今回のNAB前後にFacebook等のタイムラインでその価格と性能の良さでにぎわっていたDJI/Phantom、今回はしっかりとフライトDEMOでその性能をアピール。しかも室内に円筒形のフライト空間を作っての体験操縦まで可能!
ヘリ系の操作では一番難しいその場でのホバリング(静止)を自動制御。つまり1cmでも機体が地面から離れていればその場で静止し、そこから微速度で移動したり回転したり出来る。正にハイテクの極み。
4発プロペラだと一カ所破損したら即墜落の危険が在るが6発以上だとそれも回避できる
ただし実際のフライトには日本の場合色々な制限が在るのでパブリックスペースで飛ばすのは困難だが、例えば閉鎖された室内空間やPV等でクローズされた空間ならかなり面白い映像が取れることが容易に想像できる。が同時に少しでもRCの事を理解できてる方なら、風の影響も容易に想像でき、この手の4発プロペラの弱点もわかるはず。実はDJIはこの小型ヘリ以外にも大型のマルチコプターのラインナップもありこれが中々本格的でこちらも見逃せない。
JVCはNABでも好評
今回のJVCは昨年のHM600/650でセンセーショナルな発表が記憶に新しいが本年は遂に製品番になり今回は650のファームアップに伴い携帯電話の回線で直接ストリーミング配信まで出来るようになった。更に発売時期から細かく指摘された部分を徹底的にブラッシュアップされ個人的には殆ど100%満足できるレベルにまで来た。
同時にWi-Fi機能も大きく進化し今までカメラコントロールとしてはズームしか出来なかったのがフルにレンズコントロールが出来るようになりWB等のカラー部分も変更出来るようになった(γカーブ等は次回持ち越し)また今回の出品としてHM750・790用のカメラコントローラーが出品された従来からあるカメコンより機能限定で小型の物がラインナップに加わった。元々HM750・790のカメコンは日本ではラインナップに外れて居たが、屋外中継や舞台撮影等で色を作りたいときには必須とも言えるパーツなので今後は是非国内でも手に入れられる用にして頂きたいと思う。
GoProの演出
年々ブース周りが大きくなっているのCanonとGoPro。今回も昨年より一回り大きく尚かつ中心部分に移動していたがその展示方法は驚くべき!小道具に使っている自動車は毎回どれも自動車マニアなら喜ぶ凄い車ばかり。GoProの良いところはこれらの物に簡単に取り付ける事が出来ると言うことだ。
今までのアクションカメラ系の一番の弱点はその取り付け方法の難しさ。カメラが小さくともそれらをしっかりと固定する物が無ければ意味がない。GoProが世界的に人気が在るのは、実はこの”取り付け方法”や”用具”が充実して居るからではないだろうか?
悲しみの最終日。会場で見つけた俺の777(大当たり!)
べガス岡田
今日はラスベガス最後の夜…。んっ!待てよ…帰りの飛行機の時間は…朝の7時(ずっと13時とおもっていました)!。しまった、NABで音響ブース見てなーい!ということではじめての海外かつはじめてのNAB参戦で少々疲労が出てきている中、べガス岡田にとってのNAB2013最終日の模様を皆さんへお届けさせていただきます。
魅惑のOdyssey7
nanoFLASHの生みの親Convergent Designさんのブースにお邪魔。目的は、衝撃的な新製品を発表されていましたOdyssey7の実物を発売前に仕様を確かめたく朝一訪問となりました。
こちらが近日発売予定のOdyssey7本体。ディスプレイの映像の鮮明さ、解像度の高さ、さらにはダイナミックレンジの広さから得られる立体感。仕様書にはOLEDと記されておりましたので、次世代パネルとして注目されている有機ELディスプレイとなりますね。
画面の大きさは7.7型(16:9)、解像度はハーフHDにて横1280ドットの縦800ドットとなりますのでやはりきめ細かい。重さは本体のみ重量で540gとかなり軽量なのに驚かされました。このモニターは様々な計測機能が備わっていて、WaveformやVectorScopeなんてのはあって当然、更にはRGB Histogram、Zebra、Peakingと何かと撮影現場で重宝する計測機能が搭載されています。
でっ!ここではまだ終わりませんよ。なんとこのモニターにはレコーディング機能が搭載されているんです!実はモニター上部にはSSDメディアスロットが2つ標準で搭載されており、ここからややこしくなりますが、今後のオプションでメーカーのWEBサイトからレコーディングオプションのキーを購入してPCと本体をUSBで繋げるとなんとハイクオリティーレコーダーに化けます。またその撮影可能なフォーマットは、かなりの数がオプション化されておりまして Odyssey7の中にも2機種ラインナップされているんですね。
ちなみにOdyssey7では、非圧縮HD/2K(10/12bit RGB444)、DNxHD、ARRIRAW、CanonLog+C500 4Kなどに対応。入力系統はSDI2系統(スルーOUT2系統)・HDMI1系統(スルーOUT1系統/さらに1080/60pへアップコンバート可能)
さらにはSDIの入力を4系統有したOdyssey7Qもかなり魅力的!前者のレコーディングフォーマットに加え、単独SDI4系統入力での4K記録に対応。また今旬なハイスピードフレームレート(240fps)でのHD/2Kの収録を可能にしているんですね。
再度、このレコーディングオプションは別売ですので、別途そのライセンスは現在のWEBサイトからダウンロード購入する仕様になっているそうですが、価格はまだ未定でした。ちなみに本体の価格は既に発表されており、Odyssey7 $1295で約13万円、Odyssey7Q $2295で約23万円と大変お得!このモニター&レコーディングデバイスは、2013年下期の大ヒットアイテムになること間違いですね!補足ですが操作はタッチパネル方式でした。直感的に操作が出来ますので私的には好印象ですね。絶対おすすめ!
4Kから8Kへ恋する瞬間5秒前
何気にパッと日本語が聞こえてきまして、振り向くとアストロさんのブースがあったので急遽予定を変更して突撃させていただきました。でっ!やはり一番気になるのはこのカメラですね。NAB会場内では次世代4Kの大判や4K対応のハイスピードカメラが目立つ中、ひょこっとアクリルケースの中に納められていたカメラがこの8Kカメラですね。
広い会場内でも日立さんとアストロさんしか8Kカメラの展示がありませんでしたのでもはや高い日本の技術力でしかまだ8Kは難しい技術なんだなぁーと感慨深い気分になりました。ちなみにこの8Kカメラ単体。早くて今年末に発売を予定されているそうなんです。レコーダーは?となりますが現時点ではカメラ背面の光ファイバー出力から8K/60Pで出力し専用のベースで受けて大容量HDD等のストレージに記録をするそうです。会場には実際に撮影された8K動画がアストロさんの4Kモニターへ8K/4Kダウンスケーリングされて映し出されておりましたがもうめちゃ綺麗でした。
初日の日立さんブースで見た8Kのダウンスケーリングと同様に、4Kモニターに映し出される映像は解像感が高すぎて立体的に見えるんですねぇー。やはりもう来年のNABは8Kカメラを基軸に8Kカメラとレコーダーが完全一体化、もしくは8Kカメラとレコーダーがセパレート化されていてもレコーダーはとてもシンプルに。また単体8K対応のプロジェクターが誕生して、シネマの世界がいきなり8Kへ…なんてことも起きるかもしれません。ほんの少し未来を体験出来ました。でもほんとアストロデザインさんの技術力には脱帽です。
NABを見て我が振り直せ!
3日目も刺激的な短い1日でありました。他にもたくさんのブースを見て回りましたが時間がほんとない…。それに今回のNAB2013をまとめなきゃ!今回はじめて世界の放送機器展であるNABに参加して感じたこと。それはひとつ!「娯楽を楽しもう」ということです。
アメリカだからということではなく、このような映像音響機器というアイテムは生活の必需品ではないと思います。しかし、人間が長い人生を生きて行くにはやはり楽しむことは必要ですよね。それが映画であったり音楽を聴くことであったりスポーツすることであったり車をドライブすることであったり…。
その中でもこの映像音響機器の技術でもたらせるエンターテインメント(娯楽は)きっと皆さんの日常になくてはならないものになっていると思うんです。この娯楽でお金を儲けようと考える方もいらっしゃるとは思いますが、このアメリカの地に来て外国の方と話した印象は「この機械でこんな風に撮れるんだぜっ!いいだろぉ〜」「これで撮った映像すごいでしょービックリした?」もうみなさん楽しんでますね。エンターテインメントの製作者側が楽しめないと視聴者には楽しんでもらえないですからね。そんなこんなで何か原点に戻らせてくれた気がしました。
NABはおもちゃ箱。大きすぎて歩くのも大変ですが、全世界の英知が結集した最先端の技術やノウハウを少しは吸収できたかなと思います。バイヤー岡田の仕事もまだ帰国後も残っていますので、国内のプロユーザーさんへいち早く新しいアイテムをお届け出来るよう今後も頑張って参ります。
ではラスベガスからトッキー岡田と、バイヤー岡田と、ベガス岡田がお送りいたしました。2014も行きたいなー!