欧州最大の映像放送機器展示会IBC開催中!

今年もオランダ・アムステルダム/RAI国際展示場で、欧州最大の映像放送機器の展示会、IBC2013が9月12日~17日の日程で開催されている。今回は「4Kを実際に使う」という点に注目したイベントだった。ワークフローの改善やサポート機器の発表、そして何より、各社からの4K Liveシステムの提案があったのはもちろん、4K時代に旧来のフルHDをどう生かすか、という点まで考えられた総合的な技術蓄積の見られるイベントで、派手さは無いものの、後から振り返るとあれがターニングポイントだったと語られるようなイベントであったと思う。ARRIのAMIRAも、結局は4K時代だからこそ2Kの映画で培った技術資産をミドルレンジのENG系ユーザーにも提供しよう、というコンセプトのモデルだ。

IBC2013_ibc02.jpg

また、3DCGも含んだ全ての映像制作リソースの集約化が進んだイベントでもあった。来年はさらにこの傾向が推し進められるのだろう。今後の展開という点では、韓国での冬季五輪が2018年、そして2020年にはいよいよ東京オリンピックということで、アジア&オリンピックという色が強烈に打ち出されていた。これから7年間のスポーツ映像の盛り上がりにも注目したい。

ではこのVolでは会場から気になった物を見て行こう!

実用できる4Kがブースに集う!

■ARRI
ARRIブースは人気のあるブースの一つ

IBC2013会場を沸かせていたのは、やはり、ARRIの新型カメラ「AMIRA」の展示発表だ。同カメラは、発売日や価格はまだ未定であるものの、いよいよARRIのカメラが一般ユーザーの手に届くレベルになってきそうだ。

新型ENGスタイルドキュメンタリーカメラ、AMIRAが話題をさらっていた

同じEUからの参加者のみならず、現実的な価格帯らしいと言うことで中国のテレビ局や制作会社なども積極的に質問を行っており、世界の参加者たちの注目を集めていた。AMIRAはENGスタイルを取っており、映画向けと言うよりもドラマやドキュメンタリー映画を意識しているという。Prores444、422などでの撮影が可能で、また、もちろんARRIの3D LUTにも対応している。スタイルから一見してENGを意識しているだけあってNDフィルタを内蔵しており、三脚に固定するだけでは無く、ショルダースタイルなどの自由な撮影が出来るだろう。

AMIRAは複数台置かれ、どれも黒山の人だかりであった

センサーは35mm。14ストップ以上のダイナミックレンジを保持し、200fpsのフルHD、もしくは2K撮影が可能。レンズマウントは、PL、B42/3マウントの他、低予算映画での利用も意識して、EFマウントにも適合するという。発売が非常に楽しみなカメラだ。

■Canon
ブース全景。製品そのものよりも使い方紹介に主眼を置いたブース構成

Canonブースでは、IBC2013会場において、Cinema EOSシリーズの利用方法の提案として、RIGの紹介と4K Liveシステムの提案を行っていた。RIGの案内は、日本やNABの展示では見られなかったもので、Cinema EOSシリーズの実用を考えると非常に面白い。

RIGの提案。カメラメーカー自らのブース前面でサードパーティ製RIGを提案するのは珍しい

また、4K LiveシステムはCinema EOS C500をテレビカメラ代わりに使える可能性を示すもので、2020年東京オリンピック開催国である日本の企業としては必要不可欠な提案であるということが出来るだろう。また、C100、C300、C500の新ファームウェア機の実機展示も行っており、大幅に機能強化された色域の拡大や高感度対応などをブースで一足先に実体験することも出来た。

4K Liveシステム。同社C500でも、4K生放送を行えることを実証したシステム紹介展示
■SONY
SONYブースはとにかくお洒落。会場内で唯一、独立した2つのブースを運用

SONYのIBC2013ブースでは、4K映画撮影システムの具体的な提案展示を行っていた。「F65」「F55」などのCineAlta製品群だけで無く、既にベルリンIFAで発表された4Kハンドヘルドカメラ「PXW-Z100」など、同社製4Kシステムは既に実用領域に入っている。そこで、IBCにおいて同社では具体的な4Kシステムの運用方法を示した展示を行い、話題をさらっていた。

ブース内には実際にベースが組まれ、そこでの現場グレーディングや仮編集が実体験できた

ブースには実際にベースが組まれ、そこでは映画での実運用を想定したオンセットカラーグレーディングや屋外編集が実体験できた。また、新しい提案として、マルチビュー4Kシステムも参考出展され、横長の4K映像の中から指定して各選手を拡大してみられるサッカー映像など、新しい4Kの利用方法も体験することが出来る。一歩先を行く同社ならではの展示方法と言えるだろう。

4Kならではの提案として、切り出しマルチビューシステムの展示もあった。東京オリンピックを視野に入れた展示
■Panasonic
IBC2013_panasonic00.jpg

PanasonicのIBC2013発表は、4K関連新製品のモックアップ展示もさることながら、ワークフローの大幅な改善提案が大きな目玉となっていた。

Panasonicブースではワークフロー関連展示に力を入れていた

中でも注目されていたのが、クラウドを用いた転送システムで、従来の、カメラからプロキシを局に先送りしてカメラマンが局に帰る前に仮編集を先行して行う、というだけのクラウドシステムでは無く、そこから一步踏み込み、仮編集したデータから必要なオンライン映像をネットワーク経由でカメラに要求し、本番データのうち、必要な部分だけを切り出して送出。最低限のデータ転送量とすることで、カメラマンが局に戻らなくとも局でのオンライン編集をすることが出来るようになった。

つまり、クラウドシステムが今までのような単なるカメラ付属のネット利用おまけ機能では無く、ワークフローそのものを変貌させる可能性のある、いわばゲームチェンジ提案展示ということができる。同社ブースでは「これはカメラを持っているPanasonicだからこそできる事」と、自信を見せていた。

4Kバリカム機のモックアップもだいぶ形状が整ってきた。来年NABで詳細が見られるのでは?
■Adobe
セミナーコーナーはいつも満席だ

Adobeブースでは「Adobe Creative Cloud」のビデオ系ソフトウェアに関する新バージョン情報が登場していた。10月中旬に公開される新バージョンでは、4Kカメラに広く対応。SONY F65やF55などの4Kベースの新Sony-RAWや、高速4KカメラPhantom FLEX 4Kに対応する他、ついに、Canon Cinema EOS-1D Cにもネイティブ対応し、ファイルコンバートやQuickTimeベースではなくPremiere側の内部処理によって再生・編集を行うことが出来るようになった。これにより、マーキュリープレイバックエンジンの適応性が上がり、作業効率が劇的に上昇するものと思われる。

AdobeCCの目玉は、10月のビデオ系ソフト更新。メタデータ取り込み専用機能も入る

また、After Effectsでは、2Dマスクトラッキング機能も搭載され、簡単なマスク追跡であれば外部プラグインを使わなくとも内部処理できるようになった他、Photoshopベースのディテール維持拡大機能もエフェクトとして追加され、従来の手法よりもより自然なピクセル補完が実現した。これによって、HDコンテンツを簡易的に4K対応させることが出来るようになる。また、MAXON社の3DCGソフト「Cinema4D」との連動も強化され、Cinema4D製品版ライセンスを所有しているユーザーにはレンダラーにCinema4Dを指定することも出来るようになる。これによって、より高度な設定の3DCGとのマッチングも可能となる。2Dと3DCGの垣根が徐々に低くなるのを感じる製品発表であった

■MAXON
Cinema4D一色。EU企業ということもあり一般ユーザーも集まっていた

MAXONは、IBC2013において、ミドルレンジ3DCGソフトの雄「Cinema4D」の新製品R15の製品発表を行った。同社はドイツに本社を置く会社で有り、そのため、欧州での展開に力を注いでいる。今回のアムステルダムにおけるIBCでの発表は、本社から電車で2時間程度の距離のいわばお膝元での発表であり、多数のプレスを集めて大いに盛り上がっていた。

プレスイベントでは新製品Cinema4D R15の新機能プレゼンが行われた

新製品R15では、プレビューレンダリングが大幅に強化されて細部以外は本番とさほど視覚的な差が無くなった他、レンダラー自体も大幅に高速化され、作業時間の大幅な短縮が見込まれるようになった。AdobeCCとの連携強化を考えると、このバージョンアップによる高速化は欠かせないものとなるだろう。また、テクスチャマネージャーが強化搭載されるなどワークフロー改善に力点が置かれ、より、業務向けに適合した製品へと進化したということが出来るだろう。

■VARAVON
VARAVONブースは小型ブースながら黒山の人だかりであった

IBC2013 VARAVONブースでは、新製品の高速移動ワイヤーカメラ「WIRECAM」や、「GIMBAL for GOPRO」「GIMBAL STEADY」などのジンバル製品群を実機展示して話題をさらっていた。安価で実用に耐える性能のスライダー類で知られる同社が、ついに話題のワイヤーカメラやジンバル製品群に乗り出したのだ。

新しい小型ジンバルシステムGIMBAL for GOPROは、その手軽さが売り

ワイヤーカメラは、同社の本社のある韓国の平昌で行われる2018年冬期オリンピックや、その後隣国である我が国日本で行われる2020年東京オリンピックを視野に入れれば、今のうちから実体験を積むべき製品で有り、また、映画などの新しい撮影方法にも広く転用できる機材だ。ジンバルシステムは、最近流行の要素を押さえつつも、GoPro専用の小型ジンバルGIMBAL for GOPROはその価格をIBC会場予約特価で1000ユーロ強、Canon EOS-1D Cまで搭載可能なGIMBAL STEADYは同じく3000ユーロ強としており、その価格で実際に発売されるのであれば、カメラジンバル系従来製品の価格帯を大幅に引き下げる画期的な製品となるだろう。

同社社長自ら動かすワイヤーカメラシステムは素晴らしい速度を誇っていた

GIMBAL for GOPROはすでに完全動作をしており実機での実用に耐える動作を確認することが出来た。GIMBAL STEADYはまだ追従性の足りない試作品であったが、その小型軽量さと3000ユーロ強という破格でありながらCanon EOS-1D Cまでの対応を謳っているのは驚きだ。ジンバル製品群などは10月発売を目指して目下開発を続けているという。

txt:手塚一佳 構成:編集部


Vol.01 [IBC2013]

WRITER PROFILE

手塚一佳

手塚一佳

デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。