あらゆる常識を変える!映像制作IT大作戦

小寺信良

NAB2014会期初日の今日は、Blackmagic Designのプレスカンファレンスから取材をスタートした。例年社長のPetty Grant氏自らドヤ顔で全製品を説明するわけだが、久しぶりにお目にかかったGrant氏が別人のように痩せていてまずそれにびっくり。

さて、カメラもびっくりするものが飛び出したのだがそれはカメラの専門家に任せるとして、ポスプロ業界が長かったオジサン的にヒットしたものをピックアップする。

個人的に驚いたのは、今の技術でテレシネ機をもう一度出してきた事である。2年ほど前に同社が買収したCintelインターナショナルは、テレシネの代名詞ともなったランク・シンテルを製造していた会社で、事実上その後継機となるわけだが、壁掛けにも出来るほど小型で静かなテレシネマシンとして生まれ変わってきた。

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コンパクトなCintel Film Scanner

Thunderbolt 2端子でコントロールとキャプチャ、HDMI出力で映像をモニターできる。Macのコントロール画面で35ミリフィルムがぐんぐん動く様は、昔のテレシネ機を知っている世代からすると驚愕である。

新しいATEM 2 M/E Production Studio 4Kも、なかなか凄い。同時に発表されたBlackmagic Studio Cameraと組み合わせると、スイッチャーの入力側でカメラのカラーバランスを自在にコントロールできる。手元に全カメラもCCUがあるようなものだ。ここまでオールインワンにしてしまうのかと、舌を巻いた。

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カメラのカラーバランス調整をすべて手元で

午後はソニーを集中的に取材。これもまた数多くの目玉があるが、技術的に面白いのはIP55の技術を使ったIPルーターである。一般にルーティングスイッチャーとは、HD-SDIのようなデジタル映像信号をブランキングで切り換えるものだが、参考出展されていたIPルーターは、SDI信号をIPで伝送し、ルーティングも業務用IPルーターをコントロールしてスイッチング・分配する。

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IP55を基板化したボードを参考出展

IP上で切り換えても、ノイズが出ずにきちんとブランキングでスイッチングするという技術の延長線上には、ライブスイッチャーもIPベースになる可能性がある。つまり、カメラから直接Etherで線を引っぱってスイッチャーにEtherのまま入力、ライブ映像制作がIP上で完結してしまうという世界が実現できるわけだ。

速度的な限界が見えてきたメタル線のSDI規格が、将来的にEtherにまるごと置き換わってしまう世界が、深く静かにスタートしているのだ。

展示会初日~移行するカメラトレンド~

石川幸宏

昨日のレポートに書いた「業界再編」が、まさに現実のものとなってしまったような2014NABSHOWの展示会初日。恒例のブラックマジックデザイン(BMD)は、またしても新たなコンセプトのカメラシリーズを登場。Blackmagic URSAは、センサーとレンズマウントを交換できるこれまでにない新しいコンセプトのカメラ。Blackmagic Studio Cameraはユニークな筐体が特長的だ。

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本日発表になった、AJAの4KカメラCION。意表を突いたセンセーショナルな登場にプレス発表の会場は拍手喝采だった

このBMDに続き、コンペディターであるAJAからもカメラが発表された。$8,995という驚愕の価格で登場した4K・ProResカメラCION(サイオン)は、KiProで培われたレコーダー部分を活かしたカメラを開発。まさにProResワークフロー主流の時代にふさわしいカメラの誕生だ。ブロードキャストへの進出へも動き出したRED Digital Cinemaの動きも加えて、これまでソニー、JVC、池上通信機、パナソニック、そしてキヤノンといった日本のカメラメーカーがカメラ界を先導して来たセントラルホールから、RED、Grass Valley、AJA、BMDといった新進の海外カメラメーカーが軒を並べるサウスホールへと、カメラの話題の中心が移って来ていることにも注目だ。

また、カメラに連動して各製品のポジションも大きく変化して来ているようだ。「業界再編」というほど大げさではないのかもしれないが、要は個々のメーカーが自社製品を作るだけという技術主導のものづくりの時代が終焉を迎えつつあり、代わって周辺機器のビジネスとも密接に関連しつつ、ワークフロー=マネタイズ重視の有機的な方法を模索する企業が増えているということ。そしてユーザー側もそれを求めているのは確かなようだ。

こうした産業構造の変革を受け入れられるのか?そうでないとこれからの映像業界は生き延びられないということか?これまでNABでのメインメーカーであった会社のブース面積が軒並み縮小になり、変わって映像業界には縁のなかった新進企業が2年~3年目で大きくブース面積を拡張したりと、目に見える形でこの業界を体感できるのも、毎年NABの面白さなのかもしれない。様々な見方ができる今年のNABは、まさに“豊漁”。明日以降、会場に来られる方はお楽しみに!

大量の新製品群にむせび泣く!

岡英史

昨日は、「帝国の逆襲」と一人勝ちの様に書いたが、撤回させていただく。それは全くの間違いである事を思い知らされた初日だった。

AJA(CION)
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正直このメーカーがカメラを出してくるとは思っても無かった。そのスタイルは一見ARRIの雰囲気。制作系なのかと思ったが、プレゼンでは各種色々なマウントに適合し、もちろんレンズもPL系からB4マウントのENG系まで広く、その守備範囲となっていた。面白い機構はバックフォーカスを本体側のボディーを開けて調節が出来るところ。もしかしてレンズのフランジバックに対して撮像板を移動することによりそれらをクリアしてるのかと思わせるほど。しかも予価で$9,000以下、今後気になるカメラなのはいうまでもない。

Blackmagicdesign(URSA)
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既に面白いコンセプトのカメラは作っている同社からも発表があった。URSAはその外観が今までの物とあまり変化が無いデザインなので正直スルー気味だったのだが、次に発表されたこのカメラは完全に別デザインの物。マウントはPLを筆頭にEFレンズもリリースしている。面白いのはこれらのマウントを捨ててHDMIからの映像を受け止める収録機として成り立つモデルも在る。

JVC(4Kカメラ3機種)
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一番の見所がJVCで展示されていた3種類のカメラ、その全てが4Kと言うことにびっくりした。共にスーパー35を心臓部に持つ生粋の4Kカメラで、PLマウントの王道的なスタイルはむしろJVCらしくない所がまた良い。2台目は同社のHMQ30の流れを組む小型ハンドヘルドだと思ったが完全別設計で4/3マウントを持つもの。4/3レンズが余っている方にはお勧めかも?

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最後は4Kギンバル付きカメラ。カメラにOPで付いているのではなくギンバルにレンズユニットと撮像素子を積んだ小型4Kカメラに収録機能を付けたと言った方が表現的には正しいかも?どちらにしてもダークホース的な場所から3種類の4Kカメラが出て、そのどれもが技術発表ではなくて量産に向かっている所が実に頼もしいと感じた。

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Day00 [NAB2014攻略記] Day02