ようやく時代が追いついた放送とIT技術の融合
小寺信良
NAB2014の2日目となる本日は、JVCの新商品をゆっくり見る事ができた。新しいイメージセンサーを使った4Kカメラは昨日の岡氏のレポートを見ていただくとして、ここでは敢えてHDカメラに搭載される伝送技術の話をお伝えしよう。
JVCではGY-HM650でカメラハンドル部分にUSBポートを搭載し、そこにUSBタイプのワイヤレスモデムを差し込めば映像をWAN経由で送信できる機能を備えていた。
IP化されたデータを受けるVIXIのサーバ(中央2列目)
HDのカメラとして今年登場したショルダータイプのGY-HM850およびHM890も同じ機能を搭載しているが、新たに強力なエラー訂正技術“VIXI”を搭載。ライブ中継中にパケット落ちしても、それを補正してくれる冗長性を持たせている。IP伝送を受けるのは、VIXIのサーバ。複数台のカメラからのIP伝送を受け付け、IP上で簡易スイッチングもできる。
展示では、1%のパケット落ちを人工的に作り出し、それを補正するというデモを拝見したが、1%落ちただけで映像がブロック状に崩れたり、音声が途絶えたりするのに比べ、補正後の映像はまったく問題ない映像が得られていた。バッファ容量を増やせばさらに5%、10%といったパケット落ちにも対応できるという。
東海岸とのライブ中継がVerizonのモデム1個で実現
またラスベガスと東海岸をVerizonのUSBモデム1個付けただけで掛け合い中継をやるというデモも行なっていた。映像も音声もなかなかクリアで、遅延も少ない様子が確認出来た。
例えば従来災害地からの中継では、中継車を災害地に派遣すると、災害余波で中継車ごとヤラレたらどうするんだというリスクがあり、なかなか中継できなかった。しかしHM850・890とUSBモデム、そして一般のLTE回線が生きていれば、カメラ一つで中継ができる。いやもちろんカメラマンの人命第一だが。放送では音声が一定時間途切れると放送事故となるので、音声の冗長性のほうにプライオリティが高く設定してあるという。
なおこの機能は、HM650にもファームウェアのアップデートで提供されるという。このようなソリューションは以前から存在するが、なかなか放送で使われた事例がなかった。しかしアメリカでは報道で最近使われ始め、導入事例はどんどん増えているという。
日本では主要3キャリアのLTE網が充実しており、放送業界も最近では通信との融合もやむなし感が出てきている。以前TVUパックを使った中継を試みた番組もあったが、さらに少ない機材でのライブ中継も実現しそうな気配だ。
話題の製品群の裏側もまた一興
石川幸宏
次から次へと話題の製品、テクノロジーが湧いて出てくる今年のNAB。いつもながら2日目あたりはすでにバテ気味で体力気力ともにかなり憔悴しているのが常だが、今年はまだ見れていない話題の製品やブースも多いので、会場を回るのが待ち遠しくて仕方がないといった感じだ。
キヤノンは業務用ビデオカメラシリーズのXF305とXF105の間に当たる最新機種「XF205」を発表。単版CMOSとはいえ、サイズ感と操作性に優れたコンパクトなボディと、AVCHDを排除してMXF+MP4の同時記録ができ、さらにEOS C100で好評だったワイドDRガンマを搭載し、ダイナミックレンジを活かした撮影が可能なカメラだ。またサーボ付きタイプのEFシネマレンズ「CN7×17 KAS S/P1」「CN7×17 KAS S/E1」、そして放送用レンズの「HJ18e ×7.6B」を発表。しかし、ブース全体の展示の方向は、いわゆる“キヤノンのレンズ技術”にフォーカスされており、レンズ関係の展示が多くの面積を占めていた。
またこのところCINEMA EOS SYSTEMの活況で、ユーザーの目もやはりシネマ関連への興味が大きい。そんな中でブースの一角の小さなコーナーに設けられていたインテルのコーナーに注目。なんとEOS C500で撮影された4K Cinema RAWのデータを、ノートPC上でコマ落ちなくリアルタイムプレビューできるソリューションを展示。これまでのCPU再生(画像右)ではかなり間引かれたフレーム再生しか出来なかったものが、最新のIntel Core i7上のGPUによる強力なエンジン搭載のマシン(画像左)では、4K RAWデータ(24p)をコマ落ちなく再生できる。新規発表以外でもよくよく見ると驚くような最新技術が展示されていたりするのもNABの醍醐味だ。
サウスホールに足を運べ!あ、運べてないや…
岡英史
なぜか今年は二日目になってもバタバタ感が消えない。しかも未だセンターホール以外の展示物を見に行けていない。逆に言えば今年はセンターホールの大手メーカーの新製品が非常に面白いから一カ所に留まってしまう現実だ!しかし、初日のプレス発表に在ったように今年はサウスホール(南館)が面白いカメラを連発リリース(AJA・BMD等)!多くの人が南館に足止めしてしまっていて両方のホールの行き来が少ないのかもしれない。丁度折り返して後半で巻き返したい。
■三軸ジンバル
E-BIKE(電動バイク)は1次減衰にステディアームを使用。昨年のInterBEE2013からジンバルを用いた特機が非常に多く出品されている。小さい物はiPhoneやGoPro、大きき物でEPICクラスの物を詰めるようになっているが、そのド本命のMoVIが提唱していた出品サンプルがやはり一番目を引いた。ラジコンやモービル系に搭載し、その基本的な撮影スタイルはやっぱり見ていて納得できる。しかし、このRCもE-BIKEもMoVI以上に良く出来ている、お見事!
アルミ切削の巧みさ
王道のRCスタイル
4年前のNABにトルコから来たメーカーが出してきた小型のRIG、その精度は高く、ズレやガタなどは一切無い。その出来の良さにNABが終わってからすぐさま手に入れたが、その後はコンパクトなスライダーが注目を浴びた。今回は遂にレールではなくアームを使うことにより精巧なスライディングをさせる製品をリリース。
アームにより常にカメラ位置は同じ場所(高さ)に留まるのが非常に興味深い
今年は更にそのコンパクトなポケットシリーズが沢山出てきた。特著的な切削跡と複雑なギミックによりコンパクトに折りたためるガジェットは他に類を見ない精巧さだ。
■ポケットスケーター!これまた見事!
今年は更にそのポケットシリーズが充実しており沢山の物が展示されていたが特に注目したのはこの2機種。ポケットスケーターは小型のテーブルトップスライダーへ変身、しかも折りたたみはなんだか良くわからない形状に。ポケットスライダーはこのサイズに良くもこれだけのギミックを装備!低価格と言うのも非常に嬉しい。
後半戦折り返し地点を過ぎたNABSHOW2014。明日からも全力で駆けなくては…。