まだまだ紹介したい新商品がある!
今年のNABは各社から発表になった4Kカメラに話題が集中してしまったが、景気の回復基調もあってか、バッテリーやモニター、レンズなど様々な新製品が登場している。バッテリーは数年前から新興メーカーの安価な製品が出回ったが、今年は老舗のAnton Bauerから新たなデザインのバッテリーが登場した。比較的容量の大きなラインナップをそろえており、カメラやモニター、レコーダーなどを併用するデジタルシネマを意識した製品といえるだろう。デザインはハンドリングの良い丸みを帯びた形状になっている。
同じVitecグループのsachtlerからもOEMと思われるバッテリーが参考出展された。リチウムイオンバッテリーで大容量となると内部のバッテリーセルを直並列に接続する必要があり、充電器も急速充電用の安全対策が必要になることからそれなりにノウハウのあるメーカーだからこそ商品化できたのであろう。
PLマウントのレンズも数年前から新製品が登場しているが、今年はズーム比の比較的大きな製品と、アナモフィックレンズがAngénieuxやZeissから出展されている。PLマウントレンズは単焦点のセットものが多かったが、デジタルシネマの普及により、ビデオライクの撮影スタイルになってきたようだ。現在のデジタルシネカメラは4:3か16:9が多く、劇場用のワイド撮影をする場合は、上下をカットして使うことになる。
アナモフィックレンズはそうした無駄をなくし、センサーをフルに使うことができる。フィルムでは左右の幅は決まっていたが、上下(天地)方向はフィルムの長手方向になり、かなり自由に設定できるため、2パーフォレーションや3パーフォレーションなど様々なバリエーションがあった。デジタルシネマではセンサーで決まってしまうため、特殊なアスペクト比はコスト的にも作り辛いのだろう。アナモフィックレンズは、ある意味最適な解決策といえそうだ。
4K対応のモニターやシネスタイルに適したオンボードのモニターも有機ELを採用した製品や高輝度タイプ、様々なビデオ入力に対応したものなど様々な現場に応じた製品が出てきている。
4Kはすでに実用機に入ったといえるが、2020年には8Kがロードマップ上にあり、NHKはノースホールに大きなブースを構え、撮影から伝送、配信、放送など実用化試験放送に向けてキーとなる機材をメーカーなどと協力しながら開発。ケーブルTVを初めとして試験電波を使った放送試験も進んでいる。伝送フォーマットや放送方式など既存のインフラをどこまで流用できるのか、撮影時のノウハウなど本格的な実用化に向けてかなり現実的なフェーズに入ってきたという印象だ。
さて、今回の特集の最後にメインストリーム以外にも注目すべき製品をランダムにあげてみよう。
8K ー来るべき時代に備えてー
NHKはノースホールで8Kを前面にアッピール。8Kの高精細画像だけでなく撮影からディスプレーまで一貫した技術を各メーカーの製品とともに出展した。すでに放送のためのコーデックや送信や受信方法なども固まりつつあり、2020年の実用化試験放送に向けて具体的になって来たようだ
NHKブースのソニーベースバンド処理部BPU-8000。ソニーのカメラF65からの8KのRAWデーターを元にHDから8Kまでプロセッシングできるシステムを展示
アストロデザイン単板8KカメラAH-4800。NHKが開発した3300万画素2.5型CMOSセンサーを採用した8K小型カメラヘッド
HEVCリアルタイムエンコーダー。映像符号化方式MPEG-H HEVC/H.265というMPEG-4 AVC/H.264の約2倍の圧縮性能をもつ圧縮コーデックを採用。三菱電機との共同開発で、入出力インターフェイスは3G-SDI×17、最大ビットレート340Mbps
超多値変調技術(4096QAM)と2つの偏波(偏波MIMO技術)を利用した8K送出システム。地上デジタル放送の約4倍の91.8Mbpsという伝送容量を実現。映像符号化はMPEG-4 AVC/H.264を採用し、8K信号を伝送している
レンズーレンスにまつわる新しい動きとは?ー
Angénieuxは写真のOptimo Style 25-250mmのほか16-40mm、30-76mmなどOptimo Styleシリーズのズームレンズを出展した。25-250mmは広角25mmからの10倍ズームだが小型軽量化が図られている。また、従来のOptimoシリーズにも15-40mm+ASUや28-76mm+ASU、45-120mm+ASUといったサーボコントロール対応レンズがラインナップに加わった
Angénieux Optimo Anamorphic 56-152 mm 2S(2x squeeze)T4。シネマスコープ用の望遠系アナモフィックレンズで画像歪が少なく高いレンズ性能を備えている。オプションでPVマウントが用意されている。なお、フォトタイプのOptimo Anamorphic 30-72mm 2SがIBCで出展される
Zeiss Master Anamorphic MA 135/T1.9。35mm/40mm/50mm/60mm/75mm/100mmと計7本のアナモフィックレンズのラインナップがそろった。明るさはすべてT1.9にそろえられている
Zeiss 15-30mm Compact Zoom。Compact Zoom CZ.2シリーズのレンズで、PLマウントのほかキヤノンEFやニコンFマウント、MFTなどに対応可能。イメージサークルは36×24をカバーしており、28-80mm、70-200mmがラインナップされている
シネ用のレンズは単焦点の物が多いが、富士フイルムはPLマウントの高倍率ズームレンズをとしてフジノンPLマウントレンズ25-300mを参考出展。電動ズーム対応でデジタルシネマでもビデオ同様のズーミング操作が可能
フジノンPLマウントレンズZKシリーズ。14.5-45mmT2.0、18-85mmT2.0、24-180mmT2.6、75-400mmT2.8-3.8。PLマウントのズームレンズとしてすでに実績のあるラインナップ
フジノン箱型ズームレンズXA55x9.5。0.7秒のデジタルクイックズーム機能やオプティカルイメージスタビライザーなどを装備したほか16bitエンコーダーによる高精度なズームや焦点位置などのレンズデータ出力に対応したDIGIPOWER55。レンズサポートブラケットが付属しており、2/3ENG用カメラに装着可能
富士フイルムImage Processing System IS-mini。単体でモニタキャリブレーションやカメラプレビューが可能なほか、「IS-100」と連動することで、マルチカメラにおけるモニタマッチングにも対応している。1DLUT/3DLUTなど色変換テーブルインポートすることで、高精度な色再現を実現できる
トキナーデジタルシネマ用PLマウントレンズ。左から50-135mm、16-28mm、11-16mm
トキナーHydrophnic Coating Filter。水がかかっても水滴ができない特殊なコーティングを施したフィルター
ALPHATRONは、Alphatron EVF-035W-3Gやユニバーサルフォローフォーカス、オンボードLEDカメラライトLED Pro E6、Zunewデジタルシネマレンズ、Triadカメラサポートシステムなどを出展
バッテリー
Anton Bauerは新たなバッテリーシリーズとしてデジタルバッテリーとパフォーマンスチャージャーシリーズを発表した。写真のパフォーマンスチャージャーシリーズは4連だが2連タイプもあり、いずれもタッチスクリーンによる操作とWi-Fiによるバッテリーマネジメントなどに対応しており、エルゴノミックデザインの採用により片手で簡単に持ち運びできるようにデザインされている
Anton BauerデジタルバッテリーはDigital 90、Digital 150、Digital 190の3タイプがラインナップされており、バッテリーの使用時間や残量表示が可能なほか、オートバイのヘルメットのなどで採用されている耐衝撃性ポリマーをボディに採用しており、衝撃に強くなっている
Anton Bauerと同じVITECグループであるsachtlerもAnton Bauerのデジタルバッテリーと同様なものを出展した
PAG linkシリーズ。バッテリーを連結して使用できるようになっており、1個で大容量化するのではなく連結して容量を稼ぐ。充電も連結して行うことができる
モニター
SmallHDは7型クラスのオンボードモニターDP7-PROシリーズを新製品として出展。ラインナップにはローコストタイプのDP7-PRO LCDと有機ELタイプのDP7-PRO OLED、明るいところでの視認性を高めたDP7-PRO HIGH BRIGHTの3機種があり、いずれも1280×800、3D LUT、波形/ベクトル表示などの機能を搭載している
TVLogic5.5型オンボードモニターVFM-058W。HD-SDIとHDMI入力に対応しているほかHDMIからHD-SDIへのコンバーターも装備されている。波形&ベクトル表示が可能なほか、フォーカスアシストや各種マーカー、ズーム、表示反転機能などを搭載している
TVLogic55型4KモニターLUM-550A。UHD(3840×2160)表示が可能なLCDモニターで、入力は3G-SDIおよびHDMIをそれぞれ4系統のほかDisplayPortを2系統備えている。一回り小型の31型のLUM-300A/Wも新製品として出展された
Marshallラックマウントタイプデュアル7型LCDモニターM-LYNX-702。1024×600のパネルを採用したHDモニターで3G-SDIのほかHDMIやコンポーネント、コンポジット入力に対応している
LEADERラウドネスオーディオモニターLV5838。3G/HD/SD-SDIにエンベデッドされた音声信号やAES/EBU信号に対応。ラウドネス測定やレベル計表示、リサージュ表示、サラウンド表示、音声ステータス表示を単独または組み合わせて表示することが可能で、時刻やビデオ信号にエンベデッドされたタイムコードと関連付けてエラー/ログ情報記録できるほか、外部メディアに保存することも可能
Tektronixマルチフォーマットポータブル波形モニターWFM2300。SDI-SD/HD/Dual Link/3G(オプション)、SFP光インターフェース(オプション)、Discrete AES/EBU、LTC、Composite Syncの各種インターフェースに対応
Tektronix WFM8300型波形モニター。アップグレードすることで、UHDTV1(3840×2160)に対応でき、既存の製品を入れ替えることなく4Kフォーマットに対応することが可能
その他~まだある注目すべき製品~
Harmonicはアセットマネジメントや様々なフォーマットに柔軟に対応できるソフトウェアベースのエンコーダーなど、一連のワークフローを実現するVOSシステムのほか、Ultra HD対応のユニバーサルマルチファンクション/マルチフォーマットエンコーディングプラットフォームElectraなどを出展
東芝ビデオストリーミングサーバーExaEdge。ExaEdgeは4K HEVCとMPEG DASHコーデックに対応しており、大容量のコンテンツの配信が可能。また、ファイル対応フラッシュメモリーサーバーON-AIR MAX FLASHなどを出展
NTT Super High Speed IP Video Syatem viaPlatz 4K。低遅延、非圧縮で4KをIP伝送することが可能。メディアサーバーviaPlatz XMSやメディアゲートウェーviaPlatz 4KGW、viaPlatz PCGWなどで構成されたシステムによりインジェスト、プレビュー、クオリティチェック、リモート編集などに対応可能
AbekasはインスタントリプレイサーバーMiraやビデオクリップサーバーTria、ソースディレイシステムAirCleanerなどを出展。Miraは4K、Ultra HDの記録、再生、4Kメディアファイルのインポート/エキスポートが可能でファームウェア5.0になり、オーディオとビデオを個別にトリム可能なるなどの機能アップが図られた
池上通信機高感度カメラHDL-4500&UnicamHD HDK-5500。2/3型高速マルチサンプリング型CMOSセンサーを採用しており、0.001lxという星明かり程度の明るさでカラー動画撮影が可能。さらに日中でも撮影できるようにNDフィルターを搭載することで夜間撮影だけでなく、昼連続監視に対応している
txt:稲田出 構成:編集部