欧州映像関連展示会の当り年!?
今年のcinecは、9月上旬のIFA(ベルリンで開催されるコンスーマ機材ショー)、アムステルダムのIBC、そしてケルンのPhotokinaと、それぞれの会期が間を開けずに連続したため、これらを連続して訪れるユーザーも少なくなかったようだ。cinecは趣きとして、アメリカ西海岸で6月に行われるCine Gear Expoの欧州版といった感じ(ただし室内展示がほとんど)で、映画撮影機材に特化されているため、IBCを終えてそのまますぐこちらへと向かったメーカーも多く、展示方法や資料などもそのままというメーカーも少なくない。
ただ特機に関してはこちらをメインに考えている会社も多いようで、cinecのみの出展やあえてcinecで自社ブースを構えるメーカーも多かった。ポストプロダクション製品、ソフトウェアに関する展示はほとんど無い。一部は先のIBC2014でも出展されていたものもあるが、あえてcinecでの最新情報としてお伝えしよう。
cinec2014の会場から
■ZEISS | Compact Zoom Servo
ツァイスのコンパクトズームサーボは、CZ.2コンパクトズームシリーズ対応する装脱着可能なモジュールタイプのズームサーボユニット。現行の3種、15-30mm T2.9、28-80mm T2.9、70-200mm T2.9はどれもギア位置が異なっているが、このどれにも装着することが可能。
このサーボユニットの大きな特徴として、基本ユニットはズームとアイリスに対応したものだが、下部のシリンダータイプのギア部分を装填することにより、フォーカスにも対応できること。すでに今年のNAB2014で新製品として発表されていたが、今年の展示の回数を追う毎に細かいバージョンアップがされている。すでにIBC(9月10日)時点から、cinec(9月21日)に至る時点で、液晶部分などに細かいバージョンアップがなされていた。来年4月のNAB時期の実発売を目指している。
■FoMa Systems | Maxima MX30
こちらも地元ドイツのメーカーFoMa Systems社の、カメラ重量30kgまでの装着が可能、駆動箇所に工業用ロボットのためのステンレス鋼ベアリングを使用した、ジンバルシステム利用の強力な最新カメラバランシングシステム、Maxima MX30。cinecで自社ブースを構えた。横向き以外に、90°の前後上下の垂直角動作が可能で、そのまま手持ちも出来るが、カメラ重量も考えると専用のワイヤーショルダーリグやクレーン装着での利用が理想的。
FoMa Systems代表Rainer Martin氏
ラジオヘッドコントロール側には、1.5インチの内蔵OLEDモニターが付いており、2.4GHzの無線操作で遠隔コントロール可能。また耐高熱設計で120°Cまでの高温耐性があり、リチウム電池で約2.5時間の連続駆動が可能。Maxima MX30の重量自体は4.8kg。写真は、この開発者でFoMa Systems代表のRainer Martin氏。
■Kinefinity | 4K RAWシネマカメラ
わずか1.9kgの小型ボディサイズの4K RAWシネマカメラ、Kinefinityは、13ストップのダイナミックレンジと、120fps(2048×864)までのHS撮影ができる。CinemaDNG RAW、Cineform、KineRAW(3:1ロスレス圧縮)の3つのモードで収録可能。
収録したRAWデータは、“Kinestation”という独自のディベイヤーソフトにより現像しCineform RAW、またはCineform RGB444へ変換する。アナモフィックモードにも対応。キヤノンEF、ニコンF、B4、OCT-19レンズマウントに対応。€3,499(約485,000円)とかなり格安なのも気になるところだ。
■Transvideo | 5インチStarlite HD
フランスのモニターメーカーTransvideo社の、わずか190gのスマホサイズ=5インチのStarlite HDモニターは、OLEDのミニフィールドモニター。小型軽量でありながら、高解像度の波形モニターやベクタースコープも搭載。新たにデザインされたメニューをタッチスクリーンパネル操作が可能。サンシェードやバッテリーホルダー、マグネット式のカバーとアイカップ型ルーペも同梱される。
■シュナイダー | Xenon FF Primeレンズ
フルフレームセンサー / DSLRなどのデジタル撮影向けに開発され昨年から市場に投入された、シュナイダー・クロイツナッハのXenon(クセノン)FFプライムレンズシリーズ。同寸外形と1.18kgという同重量で、これまでの25、35、50、75mmに加えて18、100、135mmが新たにラインナップに加わった。キヤノンEF、ニコンFマウントに対応。
■DENZ HEAD | アナモフィックファインダー
地元ドイツのPRÄZISIONS-ENTWICKLUNG DENZ(DENZ)社は、映画機材の専門メーカー。今年のNABやIBCではBlackmagic Cinema Cameraの専用リグなどを販社ブースで出品していたが、ここcinecでは自社ブースを出展。DENZ HEADは、カメラの180°横方向ロールを可能にして、いわゆるダッチアングル的なショットを撮影するための専用ヘッド。
レンズを一定方向への光軸で維持しながら、カメラのみをロール回転出来る。ヘッド自体の重量は3.75kgだが約10kgのカメラ重量まで搭載可能。一般的に使用されているARRI、Preston Cinema、EMOTIONなどのレンズモーターヘッドとの互換性を重視、投資を最小限にする工夫がなされている。
もう一つは同社のビューファインダーラインナップの新製品で、ディレクター向けの光学アナモフィックのディレクターズファインダーOIC 35-A。横部についているツマミを回転させることで元の4:3画像からシネマスコープサイズへの切り替えが可能。PLとパナビジョンマウントがある。
■ソニー | PXW-FS7
日本のカメラメーカーで唯一、独自ブースを展開したソニー。新製品のPXW-FS7を中心に、F65、F55などのシネマカメラを展示。中でもPXW-FS7に関してはcinecでもかなり関心が高く、連日多くの来場者を集めていた。
■Preston Cinema Systems | The Light Ranger 2
オートフォーカスコントロールの代名詞、Preston。今年のIBCとcinecでは、Cine Gear Expoではイントロデュース製品として参考出展していたプレストンの新しいカメラアシストシステム、The Light Ranger 2のよりブラッシュアップされたバージョンを公開。
The Light Ranger 2は、フォーカス対象との距離を、Light Rangerセンサーを使用して、撮影対象を同時に水平に整えられた検知ゾーンに沿って、モニターで視認確認しながら距離を測定できるフォーカスアシスト機材。オートフォーカスモードとマニュアルフォーカスモードが装備され、マニュアルのときは、モニターに距離毎に16段階のゾーンが表示、グラフィックでピントがあった部分のゾーンがグリーンで示される。オートフォーカスの場合は、レッドの枠によってフォーカス位置を確認できる。
会場では同社の代表であり、プレストン製品を作り出して来た天才デザイナー、ハワード・プレストン氏自らが機材を解説。4Kになれば、さらなるピントのシビアさが要求される時代になっていく。こうした機材は撮影現場にますます必要不可欠になってくるだろうと語った。
txt:石川幸宏 構成:編集部