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txt:江口靖二 構成:編集部
テレビが主役ではなくなった!?
ほんの何年か前までは、CESの話題の中心は常にテレビだった。HD化や日本や韓国のメーカーがWorld’s Largestを競い合っていた。その後は3D、スマートテレビ、そして4Kが注目されてきた。CESは家電ショーであるのだが、テレビがいつもその中心であった。ところが、数年前から徐々に変化が始まっていた。自動車メーカーが競いあうように出展をするようになり、スマートウォッチやセンサーデバイスが数多く見られるようになった。
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フィットネスクラブのような展示
2015年、今年のCESの話題の中心は、自動車、デジタルヘルス、フィットネス、ホームセキュリティやアプライアンス、ロボティクス、3Dプリンターなどの出展が激増している。今回のレポートにも繰り返されているが、いわゆるIoT(Internet of Thing)と呼ばれる領域だ。スマートフォンやタブレットですら押され気味だ。これらIoT製品の多くは小さなガジェットで、センサーや通信モジュールの組み合わせで構成されるために、参入が比較的容易だ。そのためにスタートアップやベンチャー企業が数多くこの領域に集まっている。
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ロボットもあちこちにたくさんいる
またこうしたIoT関連製品は、スマートフォンを母艦としており、スマホアプリで機能を実現させているものがほとんどである。これらはスマートフォンがかなり普及したことで、スマホアプリ開発さえできれば、製品やサービスとして機能する。ある種の分業が成立しているので、このことが更に呼び水となり、活況を呈していると思われる。だが正直に言えば、キラリと光るものはさほど多いとは言えない。
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安眠のためのベッド。まるで家具屋のようだ
単純には比較できないが、こうしたIoT関連の出展企業は、感覚的には面積比で行くと会場の半分を超えていると言えるだろう。LVCCセントラルのサウスホールの半分くらいと、サンズの全部がIoT系で占められている感じである。ノースホールには自動車メーカーが電気自動車や自動運転技術を競い合っている。数年前まで非常に多かった、携帯電話ケースやケーブル類の展示があっという間に消え去り、そこがIoTに一変した感じだろうか。中華タブレットさえもかなり少ない。それくらいCESは変化しているのだ。
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アウディの自動運転車
本当に主役じゃなくなったのか?
もちろん、だからと言って“テレビ業界が衰退した”ということでは全くない。しかしCESという家電ショーという場においては、テレビはかなり押され気味と言わざるをえない。
そうしたテレビの話題はというと、4Kについてはすでに落ち着いてしまった感が否めない。カーブド(湾曲)テレビは、韓国や中国メーカーは昨年に引き続いて非常に熱心だが、日本メーカーはそれには追従していない。8Kに関してはシャープやパナソニックなどが展示を行っているが、まだブレイクする気配はほとんど感じられない。ソニーは最薄部が4.9ミリの65インチ4Kテレビを展示した。圧倒的な薄さには驚くばかりであるが、新鮮味が感じられない。それはモノとしての素晴らしさに対して、サービスとしてのテレビが伴っていないからなのかもしれない。
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ソニーの65インチ4Kは最薄部が4.9ミリしか無い。写真では伝わりにくいが、実機を見るとまさにベニア板のようである
技術的にはハイダイナミックレンジ、HDRについて言及をしたメーカーも多い。しかしPRONEWS読者はともかく、コンシューマーベース見ると、HDRはマーケティングキーワードとしてはわかりにくい。規格化がはじまっている欧米マーケットだが、日本国内では、HDRに関して何も決まらないまま、すでに4K放送が始まってしまった事情もある。
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シャープのAndroidTV
今年のテレビ関連のトピックを上げるとすれば、使いやすいスマートテレビのためのOSに関してだろう。ソニーとシャープがAndroidTV、パナソニックがFirefox OS、LGがWebOS、そしてサムスンがTizenといったように、各社バラバラの対応となった。これら第二世代のスマートテレビについては、改めて別途レポートをしたい。
txt:江口靖二 構成:編集部
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