txt:稲田出 構成:編集部
2015NABshowが終了してはやくも1ヶ月
今年のNABは昨年以上に右を見ても左を見ても4K三昧だった。ちょっと前までの4K=デジタルシネマという図式も4K放送が目前に迫ってきた今年は放送を対象とした4Kがキーワードとなっており、多くのブースに4Kが掲げられていてもその内容は異なっている。デジタルシネマでは収録、カラーグレーディング、編集、上映と比較的シンプルなワークフローで進めることができたが、放送ではライブ中継やマルチカメラによるスタジオ収録、報道など目的に応じた機材が必要とされ、それぞれの現場に応じた機材が必要とされる。
また、放送では設備としてどうまとめるか、マイクロ波や衛星を使った回線なども必要となってくるので、デジタルシネマより、多くのメーカーが4K対応をしていくことになる。デジタルシネマには不慣れなメーカーもようやく本領を発揮できる時代となり、勢いのよい新製品ラッシュとなったといえよう。もちろんこうした背景には世界的に景気が上向いて来たことも大きな要因といえる。広告収入を糧としている放送局では収入が確保できる見通しが立つことで今まで機材更新を見送ってきたところも新たな設備投資に動く可能性が高いからだ。虎視眈々とそのタイミングを図ってきたメーカーもこうした好機を逃すまいとしているようだ。
もはやデファクトスタンダードの4K、早くも次を見据えて
一方、こうした新製品ラッシュの裏では規格化が進んでおり4K放送への道筋を支えている。それは、3840×2160だったり記録フォーマットや6G-SDIや12G-SDI、IP伝送など多岐にわたっており、すでに何年も前から規格化に合わせて製品化は進んでいたものの、必ずしも4Kを表に出していなかったため目立つ存在としてあまり注目されていなかったものもある。これらは、4Kの伝送実験などで使われ実績を積み重ね、実践投入に向けて改良が施され、それが規格にも反映されながらブラッシュアップしている。
放送に向けた4Kが進む中でデジタルシネマの4Kも次のステージへとコマを進めつつあるようだ。アナモフィックレンズに対応したカメラやセンサーのアスペクト比など、従来HDと同じ16:9が多かったがシネマスコープなど2:1以上の撮影に対応したものが出てきている。こうした流れはカメラだけでなくレコーダーやレンズなども同じような動きとなっている。すでに2:1のアスペクト比をもつモニターなども市販されており、ある程度視聴環境が整ったということも背景にあるだろうが、4K放送とは差別化を図っていこうという流れだと思うのが自然だろう。
今回のNABはデジタルシネマの4Kと放送の4Kの分岐点でもあり、デジタルシネマは上映用の4Kの方向へ、放送の4Kは放送システムとしてより現実的な方向に向かっているといえよう。
総務省のロードマップによれば4Kの本放送を今年から来年にかけて行うとしており、すでにCS(3月より4K本放送として「スカパー!4K」がスタートしている)が先行して放送を開始しているほか、来年にはBSによる放送もスタートする予定となっている。また、8Kも2016年から試験放送を開始し、2020年のオリンピックには4K/8Kともに一般家庭でも視聴できるようにする方向だ。
今年は4Kの本放送が始まった年でもあり、国内メーカーを始めとして様々な4K対応の製品が出たわけだが、来年には8Kの試験放送も控えており、ノースホールのNHKブース以外にも8K対応の製品も出始めている。ただ、8Kに関しては日本以外の国で積極的な推進を表明しているところはなく、未知数な部分も多い。
今回のNABで見えてくる4Kの方向について、デジタルシネマや放送、IP対応といった切り口で各メーカーの新製品を中心に見ていこう。今回の特集のラインナップは以下の通り。
キヤノンはレンズはもちろんカメラやモニターなども4K対応の製品を出展。レンズは放送に対応した箱型レンズや2/3インチENGレンズなどを出展
キヤノン8K対応7倍スームレンズ。4Kの4倍となる8Kではさらなる高解像度が必要になることから、対応したレンズを参考出品していた
ソニーは毎年ブース奥に中継車を出展。今年は4K対応の中継車でIP伝送を取り入れたシステムを出展
ソニーのIPソリューション。今回スイッチャーの出展もあり、4K対応のキーとなる機材はひと通り揃ったといえる
パナソニックはカメラなどの放送機器だけでなくサイネージ用のディスプレイやプロジェクター、PCなどを出展
パナソニックのクラウドソリューションP2Cast。他社製品とのコラボで達成を目指しているようで、餅屋は餅屋というスタンスで対応
朋栄は4K対応としてハイスピードカメラやスイッチャー、伝送装置などシステムの要となる機器を出展
富士フイルムの4K UHDレンズのコーナー。2/3インチセンサーに対応した箱型レンズやENG用レンズなどを出展
Red Digital Cinemaは1台のカメラでデジタルシネマや放送、スチル対応をアピール
GoProも4K対応のカメラを出展。スポーツカムのメーカーとして不動の地位を保っている
NTTではAVC/H.264に対して理論的に2倍のデータ圧縮率を達成した4K放送の圧縮コーデックであるHEVCエンコーダーを披露していた
アストロデザインは早くから8K対応の製品に着手しており、カメラやレコーダー、モニターなどを出展した
池上通信機8K対応カメラ。2002年からNHKと共同で開発しており今回のカメラは第4世代となる。初代に比べて1/10の小型軽量化を実現
日立国際電気の8Kカメラ。ドッカブルタイプとなっており、レコーダーやCCUなど組み合わせで様々な運用が可能(NHKブース)
パナソニック8K対応レコーダー。P2メモリーカードを4枚1セットで使用することで約60分の記録が可能(NHKブース)
txt:稲田出 構成:編集部