txt:稲田出 構成:編集部
定番となりつつあるAfter NAB Show
さる5月21、22日の2日間、東京・秋葉原のUDXにおいてラスベガスで開催されたNAB Showの公認イベントでもある「After NAB Show TOKYO 2015」が開催された。After NABは日本の放送局、映像制作プロダクション、ポストプロダクションといったユーザーに向けた展示会となっており、出展物も国内で販売されるものばかりである。本家のNABでは英語表記が標準となっているが、ソフトウェアのメニューなども日本向けとしてローカライズされたものが出展されていたほか、スタッフの説明ももちろん日本語なので製品の詳細を聞くには絶好のチャンスの場といえよう。もちろん価格や納期なども国内ベースの話ができるので、購入(導入)を検討するにもいい機会だ。何よりも秋葉原というターミナル駅前というロケーションも足を運ぶのに都合が良い。
今年は、昨年の入場者数2,298名に対し、初日1,370名、2日目1,368名の合計2,738名と昨年を上回る来場者数となり大盛況であった。今回はAfter NABの特集の一環としてラスベガスで開催されたNAB2015のレポートでは拾いきれなかった製品や、より詳細なレポートを4KやIPを主なキーワードにお届けしたいと思う。
キヤノン
4KカメラXC10。1型CMOSセンサー、DIGIC DV 5、4K対応の光学10倍ズーム、新ビデオフォーマットXF-AVCなど、キヤノンの技術が小さなボディに凝縮されている。4Kとなるとピント合わせが難しくなるが、人物の顔を検出してピントを合わせるフェイスキャッチや自動追尾、パネルをタッチした部分にピントを合わせるタッチフォーカス機能を搭載しており、正確なピント合わせが可能。最大1/4のスローモーションや最大1,200倍のファストモーション、タブレット端末やPCからWebブラウザーを利用してカメラリモートを行う機能、レンズシフト式と電子式を併用した手ブレ補正機能なども搭載している。新しいXシリーズとなっていることから今後どのようなカメラが発売になるか期待したい。
キヤノン24型4K対応リファレンスモニターDP-V2410。映画業界の制作現場をメインターゲットとした4KディスプレーでDCIが定める色域の規格やASC CDL規格をクリアするためRGB各色の濃淡を1024段階で表現できる高品質の液晶パネルやRGB LED、新開発の画像処理エンジンなどを採用している。
AJA Video Systems
4K/UHD/HD対応プロダクションカメラAJA CION。HDMIでSmall HD502が、HD-SDIでOdyssey7Q+が接続されているが、CIONにはモニターや映像出録端子が複数あり、分配器などがなくてもこうした周辺機器を接続できる。さらに、電源供給用にDタップも装備されている。記録は本体にAJA製のSSDベースPak MEDIAにApple ProRes 4444(最高4K 30fps)やProRes 422(最高4K 60fps)へ直接収録可能で、Thunderbolt外部出力を利用すれば、最大4K 120fpsでのCinema DNGフォーマットのAJA RAWデータを収録ができる。
センサーは4K APS-Cサイズのグローバルシャッター方式CMOSセンサーを搭載し、12ストップのダイナミックレンジとなっており、4K(4096×2160)、UHD(3840×2160)、2K(2048×1080)、HD(1920×1080)での収録が可能。LANポートにより、Webブラウザーを介して現場またはスタジオでさまざまなパラメーターを設定できるほか、Pak MEDIAの容量をリアルタイム監視やリモートコントロールが可能。また、最大で20件のプリセットを保存することができる。
ATOMOS
4K対応レコーダーATOMOS SHOGUN。Apple ProResの10bit 422記録とAvid DNxHD/DNxHR形式での収録に対応しており、AJA RAWで最大60fpsまでの4KとUHDで収録する事が可能なほか4Kでは30p、HDで120pに対応。先のNABでバージョンアップが発表され、パナソニックのGH4のアナモフィックスクイーズ対応(GH4 Ver.2.2)やプリREC機能(HD約8秒間、4K約2秒間)、タイムラプスビデオ収録、カスタムプレイリスト作成/再生、HDMI/SDI出力に3D LUTを適用可能となる。なお、本体下部に装着されているのは、新発売となったPOWER STATION。
ATOMOS SHOGUNはHDMI接続でREC連動が可能となっており、今回バージョンアップでHDMI RECに対応したニコンのDSLRと一緒に展示されていた
テクノハウス
4K収録可能なレコーダーOdyssey7Q+。今までのProRes422(HQ)のほか、ProRes422とProRes422(LT)の記録に対応となった。4K/UHD/2K/1080/720すべての解像度に対応しており、4K/UHDでは30p、2K/1080/720では60pまでのフレームレート収録が可能。非圧縮DPX連番ファイルによる12bit/10bitのRGBファイル収録に対応しており、ソニーF35とはDual-Linkによる接続が可能。
ブラックマジックデザイン
写真上からBlackmagic Design Smart Videohub 40×40、Teranex Mini、HyperDeck Studio 12G、UltraStudio 4K Extreme。いずれも12G-SDIに対応した4K対応製品となっている
Smart Videohub 40×40は最大2160p60の高フレームレートに対応しており、SD、HD、UHDビデオを1台のルーターで同時に接続/ルーティングが可能なほかルーターの接続をLCDで映像として確認できる。Teranex MiniにはHDMI to SDI 4K、SDI to HDMI 4K、SDI to Analog 4K、Analog to SDI、Audio to SDI 4K、SDI to Audio 4Kがあり、SDIまたは光ファイバーモデルから選択可能。Teranex Mini Smart Panelを装着することで、ビデオ変換をLCDで確認することができる。
HyperDeck Studio 12Gは12G-SDIとHDMI 2.0を搭載しており、2160p60までのSD、HD、UHDフォーマットに対応。非圧縮10-bit 4:2:2の収録・再生が可能なほか、ProResまたはNDxHDフォーマットを選択可能。
ATEM 2M/E Broadcast Studio 4K。2系統のUHDマルチビューアや6系統のキーヤー、DVEトランジション、SuperSource、最大2160p60のUHDの入力とリシンク等に対応しており、2台のスクリーンで最大16台のカメラ入力を同時にモニタリング可能なほか、32個のUHD RGBAスチルフレームグラフィックおよび180フレームのリアルタイムUHDビデオまたは720フレームのリアルタイム1080 HDビデオをサポートしている。
Blackmagic Studio Cameraのコントロールができるようになっており、カメラの設定やカラーコレクターをATEM Software Controlパネルから設定可能。
ローランド
ローランドマルチフォーマットビデオスイッチャーV-1200HD。2つの7インチタッチモニターを装備しており、他のVシリーズスイッチャーと同様直感的な設定と操作が可能。コンパネと本体の2ピースとなっており、本体には2つの拡張スロットを装備している。
このスロットにXIシリーズ拡張インターフェースを装着することで、HDMIのほかDVIやSDIに対応可能。HDMIでの4Kには対応していないがSDI入出力4系統を1つにまとめることで、4K/60pのルーティングスイッチャーとして使用可能なほか、SDI拡張カードXI-SDIを装着すれば、最大3入力2出力の4Kルーティングが可能。
O・H・R・C・A M-5000およびV-1200HD用インターフェイスボード。現在REAC拡張インターフェースXI-REAC、DANTE拡張インターフェース XI-DANTE、MADI拡張インターフェースXI-MADI、SDI拡張インターフェースXI-SDI、DVI拡張インターフェースXI-DVI、SFP拡張インターフェースXI-SFPの6種類のXIシリーズ拡張インターフェースが用意されている。
ローランドライブミキシングコンソールO・H・R・C・A M-5000。最大300入力/296出力をセットアップ可能で、12インチのタッチスクリーンにより、煩雑になりがちな設定を簡単に行うことができる。スクロール/アイソレート自在の24フェーダーとアサイナブル4フェーダーや設定自在のユーザーアサイナブルセクションをパネル面に装備しているほか、パーソナルミキサーM-48を使用してのモニターシステムを構築する場合本体の右上に設置可能。また、専用アプリ「M-5000 Remote」による、iPadからのリモートコントロールにも対応しており、パネル面左上に設置することができる。写真はそれらを設置した状態。 アナログ入出力と、AES/EBU入出力に加え、REAC-A、REAC-B、SPLIT/BACKUP端子を装備し、さらに2基のXIシリーズ拡張インターフェースオプションスロットを用意が装備されている。
アビッド テクノロジー
アビッド テクノロジーは共有ストレージAvid ISISやPro Tools、Media ComposerなどNABで発表された新製品を出展。ISIS | 1000やArtist | DNxIOは展示されていなかったが、4階のUDX THEATERにおいて共有ストレージAvid ISIS | 1000や4Kなどのメディアの取り込み/モニタリング/出力が可能なAvid Artist | DNxIOなど、Avid Everywhere構想の次の段階となる新製品とソリューションのプレゼンが行われた。
エレメンタルテクノロジーズ
エレメンタルテクノロジーズの4K対応ライブエンコーダーは映像処理と配信の環境をソフトウェアで提供しており、環境に合わせてリソースを組み合わせて展開することができるので、新しいサービスやビデオフォーマットの対応もソフトウェアアップグレードで対応可能。
1RUサイズ4K対応ライブエンコーダーL601。計測技研の4K対応ディスクレコーダーUDR-N50Aからの信号をL601でリアルタイムにHEVC形式(10bit、4:2:0)にエンコードし4K/HEVC対応セットトップボックス(STB)にビットレートは25MbpsでIP転送、60fpsの4K(3860×2060)テレビで再生していた。
アイティアクセス
Wi-FiビデオトランスミッターScalar VT-200。ハイビジョンカメラ、内視鏡、顕微鏡などの映像をiPhone/iPad/iPod touchの端末にWi-Fiで無線伝送し、リアルタイムで映像を共有しモニタリングできるWi-Fiビデオトランスミッターシステム。
フォトロン
ハイエンドファイルベーストランスコーダTelestream Vantage。XDCAM、P2等のプロフェッショナルビデオフォーマットの変換・出力に対応した放送局向け送出サーバーVantage Transcode ProおよびIPテレビ、ビデオオンデマンド、ケーブルテレビ向けのH.264、MPEG-2、MPEG-1のトランスポートストリームを高効率で作成する機能を追加したVantage Transcode IPTV VOD。
Z3テクノロジージャパン
4Kエンコーダー/デコーダーZ3-HE4K-01。H.264ハイプロファイルに対応したエンコーダー/デコーダーでISDB-TやDVB-H、MPEG-2 TSなどのほか4K UHD、1080p/i 1080p30、720p60に対応。
ヴィレッジアイランド
DekTec社のユニバーサルマルチスタンダード変調DTU-315、H.264/MPEG2エンコーダーPCI ExpressカードDTU-2180など。VillageSTUDIO 4Kによる4K再生やVH-2000によるHEVC HDリアルタイムデコードなどのデモを行った。
伊藤忠ケーブルシステム
TurboSystems XJive SDI。H.264/AVC、H.265/HEVC、XAVCに対応したプレイヤーで、外付USBストレージなどに保存した4Kコンテンツファイルを、テンキーの簡単な操作により、ファイル一覧表示、プレイリスト編集、各種モードの再生(再生/停止、早戻し/送り、スロー/ループ再生など)が可能。
ヴァイテックビデオコム
TERADEK VIDIU mini。HDMI入力された1920×1080のフルHD画像を250Kbps-4MbpsのH.264コーデックでWi-Fiや3G/4G LTEで無線伝送できる。TERADEKはBHAがルーツとなっており、同社が破綻後にIP伝送を扱っていた部署が独立。現在はヴァイテックビデオコムの傘下になっている。
共信コミュニケーションズ
Mistikaはオンライン編集、VFX、カラーグレーディング、ステレオスコピック3D、デリバリーをひとつのシステムにおさめたトータルポストプロダクションシステムでHD、2K、4Kの編集作業などをリアルタイムに行う事が可能。
日本デジタル・プロセシング・システムズ
DPSJはSkype TXをベースとした、Skypeをプロ仕様のSDI信号へと変換するライブ中継向けソリューションQuicklink TXやストリーム品質を安定化させた拠点間伝送を行うトランスミッターレシーバーDozer、IPストリームのスプライス(広告挿入など)やロゴ挿入、録画等を可能にするInStream、伝送されたIPストリームのパケロスを修復し、画質の安定化を実現するZixi、4K HEVCリアルタイムエンコーダーExcel 4000などを展示していた。
txt:稲田出 構成:編集部