txt:稲田出 構成:編集部
前回に続いて会場の各社ブースを紹介して行こう。
EIZO
EIZOはIMAGICAと共同開発した3D-LUTデータ装備のColorEdge CG248-4Kを出展。4Kの色域であるRec.2020からHDなどで使われる色域Rec.709では再現できない部分を画面上でグレー表示できる機能の搭載や、カラーキャリブレーション作業を自動化する機能、複数のモニターを一元管理する機能などのを搭載。4K素材をHD化するための作業の効率化や複数のモニターを使って作業を行う場合の各モニターの色合せ、管理などの簡素化が行えるようになっている。
デジタルシネマ系のDCI-P3やRec.2020などの規格で定められる色域やガンマを再現するカラーモードや3D-LUTをプリセットすることができる。モニターにはキャリブレーション用のセンサーが内蔵されており、モニター単体でキャリブレーションをすることができる。
各モニターをイーサネットで接続することで複数のモニターをまとめて設定、管理することができる専用ソフトが用意されており、各種設定を統一したり設定した日時に自動的にキャリブレーションを行うことが可能。また、モニター使用者がこうした設定を変更できないようにすることもできるようになっている。
エーディテクノ
エーディテクノはBridge MiniやBridge Microシリーズの上位機種にあたるSDI/HDMIコンバーターX_NEO1やmabcoのHDMI分配器などを新製品として出展。X_NEO1は、5型タッチコントロールパネルを搭載しており、アップ/ダウン/クロスの各種設定や入力映像のプレビューのほか、入力信号のエラー情報表示、最大8chまでの音声レベルを表示するオーディオレベルメータの表示が可能。SD/HD/3G-SDIとHDMIの入出力端子を搭載しているほか、HDMI信号のHDCP有無の確認、カラーバーなどの信号発生器の機能も搭載している。
4K(3840×2160)出力や、36bitまでのDeep Color、3D映像やPCからのVESA解像度の映像分配にも対応した分配器。厚さ11mmで小型軽量を特徴としており、自由な設置が可能。オートEDID機能を搭載しており、接続機器を順次サーチすることでEDIDの喪失による画面表示トラブルを回避できる。2分配のmabco HMS-0102、4分配のHMS-0104の2機種がある。
RAID(FREEFLY SYSTEMS)
RAIDはFREEFLY SYSTEMSのドローンやジンバルシステムを出展。国内ではドローンによるトラブルが増えており、飛行禁止が相次いでいる一方、ドローン特区を設け撮影機材としてだけでなく災害時の情報収集など様々な分野での活用が模索されている。政府の成長戦略に小型無人機・ドローンを使った地方の活性化もあり、今後成長が期待できる反面、競争が激しくなると予想される。すでに、ミュージックビデオや火山噴火の情報収集などで活躍しているドローンだがFREEFLY SYSTEMSのようなこの分野では老舗といえるメーカーの今後が注目される。写真はARRI ALEXAなどに対応したMoVI XLで、搭載重量が大きくなっている。
ドローンを撮影で利用する場合に必須となるジンバルシステムは安定した撮影を可能にするスタビライザーとしてだけでなく、ワイヤレスリモートシステムとしても進化している。ジョイスティック、ノブ、ホイールでコントロールしない新しいジンバルシステムMIMICは、センサーが搭載されたハンドルバーを操作することでパン/ティルト/ロールをコントロールすることができる。
オートデスク
オートデスクはSHOTGUN、Flame、Mayaなどの最新バージョンをPR。同社は単独で開催しているセミナーに重点をおいているようで、ブースは必要最小限の小じんまりとしたものとなっていた。ソフトウェア単独の機能も多様化しており、最近ではソフトウェア同士の連携やネットを利用したワークフローなどを指向しており、簡単に説明しきれないという事情もあるようだ。とはいえ、説明用のムービーを見せながら個々の機能の説明を行うなどかなりディープなやりとりをしている来場者もあり、個別の事案に対応していた。
プロジェクト管理ツールSHOTGUNの新バージョンやパフォーマンスの向上や各種ツールの拡充が図られたFlame、Bifrostという液体シミュレーションアニメーションプレビューの高速化を搭載したMayaなどの解説を行っていた。
エム・アンド・アイネットワーク
SDIリピーターDatavideo VP-633/VP-634。最大2台までカスケード接続して長距離伝送をすることが可能。VP-633からの電源供給によりVP-634には電源不要となっており、5CFBでケーブル間200mほどのHD伝送に対応可能。
TC-200は付属の専用ソフトウェアCG-200と一緒に用いることで、映像信号に文字などの情報を表示することができるキャラクターゼネレーター&スーパー装置。パソコンと組み合わせて使用するようになっており、文字情報のほかJPG、TAG、GIF、BMP、PNGなどの画像も扱うこともできるので多彩な情報表示が可能。
ビジュアル・グラフィックス
ビジュアル・グラフィックスは国内外の映像システムを扱うインテグレーション会社として様々なメーカーの製品を扱っており、EditShare社のプロジェクトマネージ・共有サーバーや朋栄のLTOによるバックアップシステムLTR-200HS6などを展示。
朋栄のLTOにバックアップシステムLTR-200HS6はApple ProResに正式対応したモデル。
総括
地デジもつい最近アナログ再送信を終了したばかりで、SDからHDへの移行はかなり長い時間がかかっている。4Kや8Kは国内の電機メーカーや総務省などの官民を挙げて推進しており、テレビやビデオカメラなど一般家庭に普及しつつある。
放送に関してもCSがすでに4K放送を開始しており、来年からBSでの放送もスタートする予定で、SDからHDより早い普及となりそうな気配もあるが、そのためにはやはり4Kならではのコンテンツが不可欠だ。オリンピックの開催をそのきっかけにしようという思惑は50年前の東京オリンピックによりカラーテレビが爆発的に普及したという実績から、夢よもう一度といったところだろうか。
テレビの普及は街頭テレビや街の電気屋さんから始まりメーカーもバスや飛行船、SLを使ったプロモーションを行うなど普及に向けて様々な試みを展開していたが、4K/8Kでもこうしたプロモーションが展開されるのだろうか。もっとも、映像メディアは当時と比べ物にならないほど多様化しており、特にネットは従来の放送と異なりチューナーやSTBなどがなくてもソフトウェアベースで対応できることからフレキシブルな対応が可能で、すでにYouTubeなどでは4K/8Kに対応している。視聴の形態もテレビだけでなく携帯端末など様々なものがあり、インタラクティブ性を活かした様々な取り組みがなされている。
テレビ局も地上波だけでなくCSやBS、ネット対応などに積極的なところもあるが、新たなメディアに対しては現行の放送への誘導やコラボレーションを中心とした取り組みが多く、別物として進めている事例は少ないだろう。出版業界でも同じような方法論でネット対応したが、軌道にのった事例は少ないことから放送業界での成り行きが注目される。
一方、メディアの多様化や4K/8Kへの対応に伴い、従来の一方通行的な伝送から双方向への対応、様々なフォーマットへの柔軟な対応が必要となり、その解決策の一つとしてIP化が有力な候補となり、今年のNABでは空白地帯となっていたスタジオ機器のIP化に対応した機器やシステムが主な放送機器メーカーから出展された。これにより制作から伝送、視聴までIP化することが技術的に可能になったが、今後どのようなサービスが可能になり収益へ結びつけることができるかが課題といえよう。
今年は4K/8K、ネット、IP化をキーワードに放送やメディアのあり方が大きな変革期を迎える元年といえるといえるだろう。
txt:稲田出 構成:編集部