[InterBEE 2015]会場出口インタビュー
4Kから8Kへ進化する過程を垣間見る
4Kの放送も始まり8Kもそろそろ射程距離に入ってきたといえよう。SDからHDへの移行は解像度だけであったが、HDから4K/8Kでは解像度だけでなく色域がRec709からBT.2020へと拡大している。当然制作のワークフローもHDとは技術的に異なる面もあり、カメラだけでなくモニターや測定器、レンズなどの周辺機器もHDとは異なった性格の製品が必要になってくる。
SDやHDは地上波であり、民放に関しては無料で視聴できるものであった。4K/8Kは当面、ネットか衛星放送での視聴ということになり、CM中心の収益構造だけでなく、視聴に関して課金する方向性も見えてくる。特に最近の地上デジタル放送の視聴率は低迷しており、茶の間で家族がそろってテレビを見る時代からスマホなどで視聴する方向に向かっているといえる。番組の魅力がなくなったという見方もあるが、視聴形態がテレビだけではなくなり、様々な方法で視聴できるようになり、視聴者が分散した結果ともいえるだろう。
こうした流れから制作機材も4K/8K対応の大画面かつHDRでの視聴に適した番組を制作できる機材とそれ以外という見方をするとすっきりする。見方を変えると早くも2極分化が進んでいるといえるだろう。番組を制作する放送局なども従来通りCMを中心とした収益から視聴による課金も視野に入れたものへと収益形態を変えていかないといけない時代になってきたといえよう。
機材的にもゴルフや野球、音楽物など視聴による課金に比較的可能性が高いものを制作するカメラやスイッチャといった機材がソニーやパナソニック、池上通信機などから出てきており、こうしたイベントを収録するために適した高倍率ズームレンズがキヤノンやフジノンから出展されている。また、BT.2020色域を測定する測定器もリーダー電子やアストロデザインなどが出展されている。
一方、4K対応の小型ビデオカメラはソニー、パナソニック、JVC、キヤノンなどから新製品が出てきており、放送用のサブカメラ的なものからブライダルやパッケージビデオ制作など比較的幅広い用途に分散している。4K/8Kは、レゾリューションだけでなくコンテンツの在り方にも新たな方向性を志向しているようで、これからも様々な製品が出現してくるだろう。今年のInterBEEは単に新機材というだけでなく、放送の在り方も変わっていく節目といえそうだ。
ソニーHDRやHD8倍速スローモーションに対応する2/3型3板式4Kイメージセンサー搭載のHDC-4300
8Kイメージセンサー搭載のF65RSとベースバンドユニットBPU-8000による8K撮影システム
B4マウント2/3型レンズを使用可能なパナソニック単板式スタジオカメラAK-UC3000
JVCのSuper35mmイメージセンサー搭載の業務用4KメモリーカードカメラレコーダーGY‐LS300CH
新しいフォーカス方式や新光学材料を採用することで、8Kに対応した高い光学性能を達成したキヤノンに8K対応ズームレンズ
フジフイルムが参考展示していた2.5インチ3板式カメラ用8K対応ズームレンズ50-80mmF2.0
BT.2020映像の色管理に対応したリーダー電子LV 5490
4K HDR対応波形モニターアストロデザインWM-3206
4K/UHD/2K/HD対応のAJA Ki Pro Ultra。最大4K60p収録が可能。記録はProRes HQ収録に対応している