Inter BEE 2015 11月19日

井上晃

ここ数年、InterBEEには「Inter BEE 2015の歩き方.tv」スタッフとして参加してますが、InterBEEのトレンドが毎年移り変わるように、「歩き方.tv」の配信方法も毎年変わります。それはInterBEEのトレンドを先取りしてる部分もありますし、後を追いかけている部分もあります。

今年も「歩き方.tv」は毎日6~7本配信してますが、その合間に1コマ出演の機会を頂きましたので、今年の「歩き方.tv」の取材体制をご紹介しましょう。

今年の取材に使用するメインカメラはPanasonicの新型4Kカメラ「AG-DVX200」。DVXという愛着のある型番を200にアップグレードして命名したPanasonicさんとしては大本命の4Kカメラです。紅いボディに3倍速い(当社比っw)組み込み型レンズ、フォーサーズ規格のセンサー。そしてフル4Kというべき4K60pをサポートしてきた所に、Panasonicさんが本機にかける本気を感じました。

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正直言ってボディはでかいです。でもハンドヘルドとして使えないサイズではない。大型のカメラは持ち込めない、でも4Kは使いたい、このような現場に持ち込めるサイズということです。Panasonic伝統のカム式ズームと共に、幅広い現場で様々な用途に使える可能性を感じました。

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そしてそのカメラを支えるのが、「Easyrig」です。今回は三和映材社さんにご協力頂き、提供して頂きました。今回のInterBEEでも制震機能をもったカメラジンバルが大流行です。多くのメーカーからジンバルが発表されましたが、制震はしてくれるのですが、その重量はカメラマンの腕に負担をかけます。いつも思うのですが、カメラマンをカメラの重量から救わないと、多彩なカメラワークが出来ません。

カメラもハンドヘルド型が多くなり、これまで肩が担ってきた重量を腕で支える必要が出たときに、カメラマンを救ってくれるのがこのEasyrigですね。これは制震をするものではありませんが、カメラマンをカメラの重量から救ってくれることによって、本当の意味の自由なカメラワークをさせてくれるのです。

今回本格的に使ってみたのですが、決して軽量とは言えないDVX200の重量をしっかりと支えてくれて、まさしく自由なカメラワークに貢献してくれました。制震ジンバルを支えるためにも良い相棒となってくれますよ。

そして最後に今回のキーコンポーネントとなるのが、無線伝送装置の「TVUPack」です。数年前から「歩き方.tv」には欠かせない機器ですが今回も使用しております。今回は旧型の8100を使用しましたが、より小型化されたTVU Oneが発表されました。

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TVU Oneはアンテナまで機器内に内蔵し、公衆回線との接続はキャリアのSIMを挿入すればOK。またバッテリーでの運用時間も大幅に伸びました。そして大幅に小型化されたことにより、カメラマン一人による運用が可能になりました。カメラマンにまた重量がかかるのですが、余計なケーブルが無くなることによって、よりスピーディーな取材が期待できますね。

今年のInterBEEですが、総じて4Kフィーバーが落ち着いて、様々な機器の熟成を感じました。熟成したことによって実際に我々も、活用を実践する段階に移ってきたように思います。新技術をキャッチアップすることによって、新しい活用は生まれてくるのではないか、そんな事を感じたInterBEE2015でした。

Ben MATSUNAGA

InterBEEの二日目。練り歩きしつつ、会場を散策。今年は、革新的に新しい機材が登場するというよりは、これまで解像度だけを売りにしてき4K機材が、実用性を高め、低価格帯にまで普及してきた印象。目新しさはないが、現場に投入しやすいカメラが各メーカーから出されていた。ただ、ハードウェア的な制限から、メーカーごとに特色を出すのが難しく、よくも悪くも4Kカメラがある一定の枠に収まってきた感じがする。あえてこの時代にレンズ一体式のDVX200を出してきたパナソニックやDJIのOsmoが注目を集めていたが、単にマシンスペックではない、撮影スタイルにあった運用性や実用性が求められる時代になった気がする。

個人的には、キヤノンやEIZOのブースでデモされていた、HybridLogGammaという、HDRの表示方法に興味を持った。次世代のディスプレイとして注目集めているHDRディスプレイだが、5000nits、10000nitsという高い輝度で表示すると刺激が強く、長時間の視聴には難しさがありこれを一般家庭で普及するのは現実的ではない。HybridLogGammaは、BBCやNHKが提唱しているHDRの表示方法で、高い輝度レベルまで出力することでHDRを表現するのではなく、広ダイナミックレンジで収録されたLog素材を、これまでの放送規格であるRec709や2020と互換性をもたせる程度の輝度に抑えながらも、ハイライトのディテールを綺麗に再現して表示する方法である。Logをいい感じにグレーディングしたようなトーンで再現してくれるのだ。最終的にHDRがどういう方向に進むのかはわからないが、自分には、HybridLogGammaが最も実用的なHDRの表示方法に感じた。

手塚一佳
オタク社長的InterBEE2015

後処理やCGを主な業務とするアイラ・ラボラトリ。その社長の手塚的には、今回は大変実りのあるInterBEEだった。InterBEEは最近Photokinaと同時開催年に新型カメラが集中し、そうでは無い年には技術発表が充実する傾向があるが、今年もまたそれに漏れず大きく技術が進んだ年となった。

その中から特に選んで練り歩きで回ったのが、KPIブース、Blackmagic Designブース、シナジーブースだった。それぞれ簡単に解説したい。

まずKPIブースでは、WenPodシリーズの新型ジンバルが非常に衝撃的だった。実はこの制御はイスラエル製プログラムの為、動作がジンバルの雄MoVIシリーズに劣らない非常に高度なものになっている。それだけではなく、人間工学に基づいたデザインによってさらに扱いやすくなっていて、価格も安いと、非常に優れた製品となっている。もちろん、安いなりに例えばバッテリーの持ちが多少悪いなどの特徴はあるが、そこは準備をすれば防げる問題だ。こうした設備がないと4Kなどの高解像度では手ぶれが目立ちすぎてしまう。高解像度時代には欠かせない撮影装備だと言えるだろう。

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Blackmagic Designブースでは、何と言っても新型のBlackmagic URSA Mini 4.6Kが目玉であった。実際の工程を考えると、4Kの映像を作るにはそれ以上の大きさの画が必要で、4.6Kという大きさはDCIサイズに最終出力するにも充分な大きさだと言える。しかも収録は内部CFast収録で、情報量も充分なCinemaDNG形式。これでようやく、ただの撮って出しでは無い、本格的に4K映像を撮れるカメラがミドルレンジラインにも出た、と言える。

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シナジーブースには、Pomfort社のパトリック・レナー社長自らが来日していて、Panasonic VARICAM 35との連携を実際にSilverstackを使って実演して見せていた。こうした作業環境の充実は、ようやく実際に4K素材を映像作品に作り上げる手段が登場した、ということが出来るだろう。

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また今回、会場内距離の都合で回ることこそ出来なかったが、関連のPanasonicブースにおいては安価なGH4にアナモレンズを付けて4K時の解像度を維持したまま(アナモレンズによる左右ピクセルの切り取り無しに)NINJA ASSASSINに収録するというデモンストレーションも行われていて、こうした4Kの撮影についには低価格帯の業務撮影にまで充分な技術浸透が行われていることも示されていた。

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こうした正常進化によって、4Kが単なる技術自慢のサンプルでは無く、現実的な選択肢となったのが今回のInterBEEの最大の成果であったということが出来るだろう。いよいよ、ここから4Kでの仕事が本格的に始まる。

Raitank
ゾクゾクした

ぼくにとって2年ぶり2回目の練り歩きが終わった。1回目は個人的に「ありえない」出来だったが、今回は良かった。なにが良かった?って、まるで想定していなかったハプニングが起こったのが良かった。

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オンエア中に、raitankブログが長年情報源としてきた老舗海外ブログの一つ「Cinema5D」のJohnnie Behiriさんが突然目の前に現れたのだ。咄嗟の判断で即席インタビューを敢行しながら、背筋がゾクゾクした。あとでPRONEWSスタッフの方から「あれは生放送っぽくてゾクゾクしました!」と言われ、あぁゾクゾクが伝播したんだ〜と嬉しかった。

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その夜の某パーティで、今度は「NewsShooter」のDan Chungさんに会った。昔からファンだったので名刺交換し立ち話をしながら、また背筋がゾクゾクした。今度は伝播するメディアがなかったので、ゾクゾクはぼくが独り占めした。これまた最高だった。

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江夏由洋

2日目も幕張は賑わっております。今年のInterBEEの見どころはかなり分散しているといっていいでしょう。今年は正直なところ誰もが注目するような「主役」がいないという感じです。ただ確実に4Kの規格は浸透を続け、ようやく実用レベルになったといえるかもしれません。今回、日本のリーディングカンパニーがそれぞれ4Kの新機をラインナップに加えました。

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SONYは70万円を切る価格の軽量で小型の4Kカメラを発売しました。それがPXW-FS5です。FS5は本体の重量が0.8Kg、SDカードでXAVCのGOP4Kを手にすることができます。30fpsまでですが、かなり現場では重宝できる一台ではないでしょうか?画質も文句なし。様々での現場で活躍することが期待できます。

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そしてCanonはEOS C300の後継機となるEOS C300 Mark IIを投入。Canon Log2という新しいLogガンマで15ストップという脅威のダイナミックレンジを実現しました。XF-AVCという4Kの新コーデックを搭載し、CINEMA EOSに新しい一ページを刻みました。

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一方でPanasonicはAG-DVX200で4K市場に挑みます。レンズ固定のハンドヘルド型のDVX200は高い機動力が特徴で、4K60pまでの撮影が可能。4/3のセンサーは、軽快なフォーカスワークを実現してくれます。従来のUIを活かしながら、オールインワンモデルの強みを生かした一代だと感じます。価格も60万円程度に落ち着きました。

3台のカメラに共通する点は、各社かなり価格を落としているということです。「だれでも、どこでも4Kを」というコンセプトで広いレンジでのユーザー獲得を目指しています。もう4Kは展示会で体験するものではありません。手に取って、自分自身のワークフローに取り入れる時代だと感じます。InterBEEに来た人たちの多くが、同様に感じているのではないでしょうか?今映像制作者に求められるのは、制作の目的に合った4Kのワークフローをいかに効率的に確立するかということだと、改めて感じました。

林和哉

言わずと知れた、日本最大の映像放送機器展です。沢山の機材に囲まれながら、映像の獅子たちは新しい武器を求めてあちこち散策し、来年一年間を戦い抜くために自分の聖剣エクスカリバーを探すのです。そんなカッコいい表現もありますが、年に一回の祭典。懐かしいあの方や、昨日会ったこの方に、ばったり会って交流を深める、年に一度の同窓会のような様相を呈します。私も、とても嬉しい再会をたくさんしました。機材と友人。どちらとも出会えるビッグイベントなのですね。

さて、今回の練り歩きは、

  • パナソニック AG-DVX200
  • RAID RED WEAPON
  • ワンダーウォール
  • キヤノン EOS C500とHDR
  • ブラックマジックデザイン Cintelフィルムスキャナー

に注目してみました!

やっぱりDVX200はDVXだった!

私は、映像業界に入るのは遅く、30手前まで舞台の上で歌って踊って、演劇に青春を燃やしていました。そんな私が映像制作の道に踏み込んだ矢先に、DVX100が発売されたのでした。

2002年のInterBEEで衝撃の出会いをし、寝ても覚めてもDVX100の事ばかり。片思いがこんなにも苦しいとは、ということを肌身に染みたので、思い切って告白(注・購入)してから、DVX100にたくさんの事を学ばせてもらったのでした。

HDに移り変わる中で、たくさんの素晴らしい後継機がたくさん現れました。そんなカメラたちにも沢山のことを教えられたのですが、やっぱりDVXのことは頭から離れませんでした。そんな思い出深いDVX100の後継機というアナウンスが出たときに、一抹の不安はありました。でもそんなことはすぐに吹き飛ぶ内容に、すごく興奮したのです。まさに、あのDVXだ!という感触と高揚感だったのです。

いまPRONEWSを見ている皆さんの中にも、きっとたくさんの思い出を持っている人がいると思います。是非、会場で触ってみてください!

RED WEAPON / RAID

RAIDさんがREDの正式代理店契約をされたということで、REDへの今後の抱負を伺いました。RAIDの板倉さんは、RED ONEの頃からREDカメラに精通した方で、日本のREDマーケットの勃興を語る上で外せないキーマンです。

RAIDでは

  • ノウハウの積極的な共有をしていく
  • RED TECと呼ばれる、DITの中でも特に上級且つREDカメラに精通した技術者を揃えてサポートを充実、さらにRED TECの育成プランも考えているという大きく二つのポイントを伺いました

また、WEAPONではEPIC DRAGONと比較して画質の向上が顕著に見られるとのこと。センサーは同じでも内部の回路に改良が加えられ、ノイズ耐性が格段に良くなっているそうです。現像にあたってのノウハウとして、メーカー純正のREDCINE-X PROと各メーカーさんのアプリケーションとの間にクオリティの差異が見られ、当然といえば当然ですが、カメラメーカー製品の方により多くのメリットがあったそうです。こうしたテストフッテージも随時公開されていくそうです。

板倉さんの元気なお姿に、ますます面白くなりそうなRED周り、と感じた筆者でした。REDカメラの国内動向をより一層注目したいと思います。

Wonder Wall
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とても変わったもののご紹介。紗幕をご存じでしょうか。薄い布、または細かな穴が開いていて、紗幕の向こう側にあるものをうっすらと見せる効果があります。このWonder Wallは、前からの灯りを全て止めてしまい、後ろからの灯りだけを通すという特性があります。

どういうことかといいますと、Wonder Wallにプロジェクターに映像を映しても、その光が後ろの被写体に当たらないので、前景にCG、中間に人物、後ろに背景、といった合成のような事が出来るのです。これは非常に面白い!写真で伝わるかわかりませんが、人がSFの宇宙空間にいるような映像に見えるとおもいます。これがライブである、というのがすごい重要なポイントです。いろんな可能性が考えられるのです。ぜひ、見に行ってみてください!

C500とHDR映像ワークフロー
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キヤノンさんでちょうどわかりやすいHDRの展示をしていました。HDR映像は、今まで見せることが出来なかった、明るい中にもディティールを残す事の出来るハイダイナミックレンジを持った映像の事です。今まで見せられなかった、焼け付くような日差しの夏の思い出を、リビングの視聴者に届ける事が出来るのです。

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SGOのMistikaを使ったデモ。DaVinci Resolveで作成したHDR。比較しやすいレイアウト。非常に興味深いアイデアを沢山聞く事が出来ました。HDRにアンテナを張っている方は、有益だと思います。

ブラックマジックデザイン Cintelフィルムスキャナー
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もう、興奮しか有りません。発表から2年。いよいよ登場しました。

Cintelフィルムスキャナーを使えば、DaVinci Resolveからテープから映像をキャプチャするような簡単な操作で、16ミリと35ミリのフィルムを簡単に取り込む事が出来るのです。とにかくオートメーションが優れていて、フィルムを送るときに生じるフレーム毎のガタツキも、自動でスタビライズしてくれるという徹底ぶり。メカメカしい動きと、フィルムの送られている感じ、そしてスキャナー部でみれる小窓の中で動く被写体たち。イカス!!こんなすごいものが、頑張れば買えてしまう価格帯で手に入るのです!!!いつか、BMDさんがフィルムを発売され、カメラも開発し、世界中にある現像液を磨き上げ、フィルムとデジタルを両方網羅するようなカンパニーになるのじゃなかろうか、とクラクラしながら考えてしまいました。

さぁ、InterBEEも残すところあと一日。みなさん、是非是非ご来場ください!!!

小寺信良
ソニーが推進するネットワーク・メディア・インターフェース

本日はソニーブースへお邪魔して、同社が推進するIP伝送規格「ネットワーク・メディア・インターフェース」のお話を伺った。

ソニーが開発したIP伝送技術自体は、数年前からHDを4ストリーム伝送する「NXL-IP55」(http://www.sony.jp/nxl/products/NXL-IP55/)という形で実用化されていた。当時はこのIP55同士を結ぶだけだったので、特にインターフェース規格としての名前はなかったが、これを広くアライアンスを組んでネットワーク機器や映像機器に対応させていこうというのが、ネットワーク・メディア・インターフェース(以下NMI)というわけである。

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ソニーブース内のネットワーク・メディア・インターフェースコーナー

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ソニー製LSIモジュールと、それを搭載したパートナー企業製のI/Oカード

標準化が行われたSMPTE 2022-6との違いは、幾つかある。というか、2022-6では十分ではないから独自規格で行くということになったわけで、違いがあるのは当然だ。

まず大きなポイントは、IPながら同期が取れるということだろう。2022-6にはそもそも同期を取るという概念がないので、IP上でブランキングスイッチを行うためには、バッファリングしてタイミングを合わせる。フレームシンクロナイザーのIP版みたいな考え方である。

一方NMIでは、ネットワークに繋がっている機器のどれかをマスターに指定することで、全体の同期が取れる。例えば局内で複数のスタジオカメラなどをスイッチャーに接続するといった場合、いきなりすべてがIP化されるわけではない。従来型のSDIベースで同期されたシステムの中に、IP伝送機器が入ることになる。その時にIP側の機器も同期が取れないと、使いづらい。またIPベースで同期が取れていれば、ディレイさせることによってタイミングを合わせる必要がなくなるので、必然的に低遅延となることもメリットだ。

もう一つのポイントは、映像データと音声データ、メタデータそれぞれを、ヘッダだけで判別、分離できるパケット構造にしたことだ。これにより、IPベースで映像だけ取り出したり音声だけ取り出したりといったことが自由にできる。一旦ベースバンドに戻さないと分離できないのでは、どうしてもシステムとして大掛かりになってしまう。できるだけIPの中でやれることを多くした方が、システム全体としてはコストダウンになるはず、というビジョンである。

2022-6は世界標準というメリットがあり、NMIは局やポストプロダクションといった局所的な設備にはメリットがある。もちろん独自プロトコルを推進しているのはソニーだけでなく、他にも幾つかある。おそらく将来的には、基幹伝送は2022-6で、機器間のローカル伝送はいろんな独自プロトコルがそれぞれ動くということになるのではないか。もちろん、それぞれがデファクトを狙っていくはずなので、しばらくはIPプロトコルの群雄割拠状態が発生するということになりそうだ。

番組表


Day01 [Inter BEE 2015の歩き方.tvデイリーレポート] Day03