Inter BEE 2015 11月20日

岡英史

銀一
3日目のスタートは銀一ブースのRODEから。元々サウンドハウスでの通販がメインだったマイクメーカーだが秋口を境にビデオ関連のマイク全般が銀一ベースとなりサポート体制がしっかりした。安価で性能の良いガンマイクと言うのが有名だが、今回はDSLRや小型カメラ用のクリップオンマイクを中心に話を聞いたが、新製品のX-Y系のマイクが中々良い。

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オンマイクだけではなくミニXLRを装備しているので外部から2ch入力が可能。もう一つ銀一と言えばSteadicam。その中でもNABで発表された上位機種M1の実演展示。実際にALEXAのフルキットで担いで見たが流石にその重厚な動きには品がある。とは言え流石に個人で買うには少々無理があるが。

AJA OK_18

コンバーターと言うより今は制作系のカメラであるCIONの方が有名かも知れない。今回は4K60Pソリューションと言うテーマでの展示。その中でもInterBEE新発表のKiPro Ultraは光入出力もあるレコーダーでKiProシリーズでの最上位機種にあたる。同時に発表されたソリッドステートメモリーは1TBの大容量版。そのおかげで4K60Pと言えども約1時間の収録が可能。

2スロットでメモリーを交換しながら使えば長尺収録も可能だ。更にHDからの4Kアップコンバーターも既にアップコンの域を越して用途によっては十分なクオリティーを感じる事が出来た。

JVC

何と言ってもGY-LS300にJ-Logが搭載されたのが大きな発表。既にATOMOSブースでもJ-Logでの映像が流れたが、非常に癖がなく綺麗なカーブを感じることが出来るLogだ。LS300の登場時に既に色んな方面でLogの搭載を望まれていたが、発表後半年強で搭載されたのはユーザーの声をダイレクトに反映したJVCならではだ。

更に単焦点レンズでも1.3倍のブローアップが出来るVSMの搭載もこの機種の特徴だろう(HD時には実に約2倍のブローアップが可能)。またヘッド分離型のSP100をオートバイに搭載したコンセプト的な物も興味深かった。もちろんこのカメラも4Kは当たり前で、LS300では搭載されていない60Pモードが在る。VSMはまだ搭載されていないが、段階的な設定でのブローアップは可能なのでこの機種も将来的なファームアップに期待したい。AZDENは最近個人的に気に入ってる音響メーカーだが、今回は新製品を4種類を追加。定番のガンマイク2本と2.5GHz帯の小型ワイヤレスマイク、更にDSLR系のクリップオンマイク。特にこのクリップオンマイクはガンマイクとモノラルを切り替えが出来るすぐれもの。もちろんその音質は間違いがない。更に小型ワイヤレスは充電式で連続使用約10時間。ワールドワイドに使えるので海外での取材に期待できる。今はピンマイクだけのラインナップだが、XLRのリクエストを熱くしておいたのでコレも今後のアップデートに期待したい。

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NABで発表されていたスライダーが新規発売となって登場した。モノレール式のクランプはスライダーとしては中々珍しい。スムースさを出すためにボールベアリングは既に当たり前すぎるが設置するローラー部分に樹脂パーツを使うことで更に微振動を吸収するスタイル。60cmと100cmのラインナップになるが、制作系には100cm、ブライダル等のワンマンOPには60cmがジャスト!この機種はデモ機申請をしたので早いうちにレポートをだせるはずだ。

総評

今年のInterBEEはカメラ的には既に発表済の物ばかりでそう言う意味ではドキドキ感が少なかった気がするが、その分各社ともその機材には一点集中の様に色々なイベントがあり、毎日が中々熱い時間を過ごすことが出来た。個人的にも色々なメーカーでブース登壇し話す機会を頂き非常に面白い三日間を過ごすことが出来た。次は半年後のNABSHOWでこの続きを楽しみたい。

石川幸宏

Expandへの鼓動
今年も責任編集者としてPRONEWS Mag Vol.03というフリーペーパー(小冊子)を作らせて頂いた。今回のテーマは「#CRAFT」。いまの映像メディア / コンテンツにとって、機材スペックや機能はある意味、必要充分に満たされて来た中、これから求められるのはそれを使いこなす「術(すべ)」=CRAFT、である。今回はその術の根幹となるマインド、アイディア、そして人の業といったものに目を向けてみた。

会場には4K、8K、HDR、IPといったキーワードが躍る中、今回は単に製品の多機能・高画質などの“数値”にはとどまらない斬新な提案も多く見られ、映像市場の更なる多様化への兆しが随所に窺われた。ここ数年、4K化等のスペック指向のスローガンに囚われて来たように思う。「数値達成」が目標だった傾向がここに来てようやく、「いかに使いこなすか?」といった術にむけて、より顕著な形で実用・具現化されてきたように思う。

さらに2020年に向け、更に拡張・進展するであろう映像市場を見込んで、これまでにない新たなアプローチで新しい創造を促そうとする製品・技術も多く見られた。そして、それをいかに使いこなすのか?まさに使い手側の技量やアイディアが問われる時代の到来だ。

もう一つ、今回のInterBEEでは海外メーカーや海外の業界関係VIPが相次いで来日、隠密裏に会場内を視察している姿を何度か目撃した。彼らの目的はやはり2020年のオリンピック市場に向けてのロビー活動。海外メーカーのプレゼンにも数社参加したが、技術的にはどれも目新しい情報はなく、これから活況となるであろう日本市場に向けての親日姿勢をラブコールするようなものが多かった。

世界的に見てもオリンピック景気に沸くこれからの日本市場は魅力であり、海外からも虎視眈々とその旨味を狙ってきているようだ。その中で、日本のメーカー、放送局、コンテンツ制作者が、市場をどう捉え、どう機材を選び、どう具現化していくのか?その術=#CRAFTがいま問われている。新たな進展へ向けた鼓動が会場の至る所から聞こえて来る、そんなInterBEE2015だった。最後そんなCraftを感じさせてくれる一品を紹介したい。

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テクニカルファームで参考出品されていたレンズフレアーを入れるためのフレアーアダプター。これまではレンズ鏡筒に余計な光が入らないようにすることが、開発における重要な目的だったが、これはなんと!わざとフレアーを入れるためのアダプター!まさに逆転発想の製品だ。しかも効果的なフレアーを得るにはそれなりの術が必要なので、使う人のセンスが大きく問われる。まさに#CRAFTな製品である。

小寺信良

日本の映像業界はどこに向かっているのか?
InterBEE2015最終日は、コンバータを中心に取材した。みんな大好きBlackmagic Designは、自社で推進する6G SDIをIP(SMPTE 2022-5)に相互変換するコンバータの試作モデルを展示した。

同社としては6G、12Gを推進することには変わりないが、自社製品同士でしか使えない現状では広がりがないところもあり、標準化IP化の方にも力を入れることになったようだ。製品化自体もまだ未定だが、方向性としては基幹インフラはIPで、ローカル接続はSDIでという形も、一つのあり方だろう。

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BMDのSDI-IPコンバータ試作機

ただIP化というのは、コンテンツが変わるわけではない。あくまでも設備投資の話である。4K化ももうルートが見えてきた今、次の技術課題はHDR対応である。

これまでデジタルシネマではLog収録は当たり前だったが、テレビには関係ない話だった。だがHybrid Log Gammaの登場で、間違いなくテレビ放送にもHDRの波が来る。今年のInterBEEは、テレビマンにとってもLog収録とHDRを学ぶ良い機会になったと思う。

その中で面白かったのは、Imagicaの技術展示だ。かつて3Dブームの頃に購入した3Dのリグが大量に眠っているプロダクションも多いと思うが、これを使って2台のカメラを同一光軸上に設置する。1台は通常の露出で、もう1台は明るすぎる部分に露出を合わせた映像を、2つ収録する。

この2つの映像を合成することで、HDR映像を作り出すというわけだ。1台のカメラでガンマを工夫してダイナミックレンジを押し込める方がいいのか、2台のカメラで手分けした方がいいのか。手持ち機材で創意工夫する、プロ映像業界ならではのアプローチは、非常に挑戦的だ。

江夏正晃

新しくなったIZOTOPEのRX。RX5となって新機能を搭載しサウンドのレストレーションソフトとして不動の地位を築いている。特に今回搭載されたインスタントプロセスツールは作業効率を圧倒的に高めた。

RX

TVのMAから映画の整音まで、必要不可欠のソフトになっているので興味のある方は是非10日間のトライアルを試して頂けたらと思う。

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マランツの新しい動画レコーダーPMD-900V。GPSを搭載しHD画角以上の解像度を持ち、8時間の連続収録ができる防水ウェアラブルカメラだ。GoPro流行の中、満を持して発売されたカッティングエッジなカメラになっている。

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DENONの業務用音声トランスミッティングシステムDN-202シリーズは2.4GHz帯を利用した音声のデジタルトランスミッティングシステムだ。PAミキサーとスピーカーアンプなどをワイヤレスで接続することができる。伝送距離は30mと中型規模のイベント、店舗などでは重宝しそうだ。

shure

SHUREの新製品MOTIV MV88はiPhone、iPadのライトニングコネクターに直接接続できる高性能小型ステレオマイクロホンだ。専用アプリで指向性や指向角度などを変更でき、プロフェッショナルユースにも十分耐えうる。また、ユニークな機能として、5つのDSPプリセットモードを持ち、スピーチ、歌声、フラット、アコースティック楽器、バンドとシチュエーションに合わせたモバイルレコーディングができる。

TASCAM

TASCAM DA-6400シリーズは何と同時に64chをレコーディングできるデジタルマルチトラックレコーダーだ。MADI、Danteに対応しているので、外部機器との接続の汎用性も高い。ProToolsや各種DAWシステムとの同期運転によりバックアップ録音も可能。今後いろいろやコンサート、ライブ現場で活躍することだろう。

江夏由洋

4Kという言葉がおそらく技術者の拠り所なのかもしれません。あらゆるブースで未だにこの4Kが技術力の指標として掲げられていました。今日小寺さんと石川さんがPRONEWSラジオで言っていた言葉が印象的でした。

「4Kという技術を得たことで、実現できる世界もある。」

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いい表現ですね。今各社HDRという新しい映像表現に取り組んでいます。画面の大きさだけでは描ききれない美しい世界への技術です。まさに4Kという技術が生んだ表現への挑戦と言えるでしょう。

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またコンバージェントデザインから発表になったHD4系統収録モニターのApolloはその代表的な例だと思います。タッチパネルでスイッチングした映像も含めて5系統のHDをProResで記録できる画期的な商品です。価格も4000ドルと、一昔前では考えられないような安い価格で理想のワークフローを実現してくれる商品ではないでしょうか。ここ数年でジンバルやドローンといった新たなジャンルも登場しました。また製品の価格も個人で所有できるようなものが沢山出てきました。技術という点が結び合うことで作られる新しい価値は、正に僕らの描く未来なのかもしれません。

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あっという間の3日間でした。11月のお祭りは、僕ら制作者に勇気を与えてくれます。夢のような機材や憧れのカメラを手にして明日への仕事に繋げていきたいです。今から9年前のInterBEEで、SONYブースで発表になったHDVカムコーダーを手にしたときの思いは今でも忘れません。

あのZ5Jの背面につけられたCFカードのレコーディングユニットを見て「いよいよテープの時代が終わるんだ!」と胸がとてもドキドキしました。Z5JでいろんなPVを撮るぞ!と意気揚々と京葉線の中で思いを馳せていたものです。展示会は僕らの未来を描いてくれる場所なのかもしれません。来年も、そしてその次の年も、自分たちの描く創造を形にしてくれる様々な最新技術や機材に、大きな夢を描いていたいと思います。3日間どうもありがとうございました。

番組表


Day02 [Inter BEE 2015の歩き方.tvデイリーレポート] Day01