txt:稲田出 構成:編集部

「4K」「8K」「HDR」のキーワードから探る

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昨年までの4Kはデジタルシネマの4KからUHDの4Kへの最終章といった様相だったが、今年はそれにHDRが加わることで、よりリアルな表現へ進んできた。

SDからHDの切り替え時期はブラウン管が表示装置としての標準として考えられていたので、色域やダイナミックレンジなどはブラウン管で表現できる範囲が想定されていたが、HDが普及とともに環境保護の観点からブラウン管の製造が打ち切られ、LCDや有機ELといったフラットディスプレイが表示装置としての標準となってきた。

4Kや8Kはそうした背景から色域やダイナミックレンジなどがHDより広くなっているわけだが、もともと日本が発祥ということもあるだろう。センサーやFPDといったキーコンポーネントを始めとしてカメラやテレビなど国内メーカーが最先端の技術をもっており、4Kや8Kはそうした産業を活かすためにも必要だったともいえる。

ディスプレイでは産業革新機構とソニー、東芝、日立がジャパンディスプレイを設立。その後有機ELの分野では2015年に、産業革新機構とジャパンディスプレイ、ソニー、パナソニックが株式会社JOLEDを立ち上げ、今年から量産体制にはいるという。最近話題のシャープも最終的には台湾の鴻海の傘下にはいったが、当初は産業革新機構が名乗りを挙げていた。

とはいえ、日本を追い上げる新興国の技術もあり、優位性があるうちに日本としては早く4K/8Kを軌道にのせたいところで、2020年のオリンピックを契機に前倒しして切り抜けていきたいという思惑もあるようだ。

HDが高品位テレビとかハイビジョンとかいわれていた時期は、テレビといえば放送が前提であり、標準化や普及にあたりアメリカやヨーロッパなどから様々な提案があり、かなり長い時間を必要とした。この間に追いつかれたという思いもあったのだろう。4K/8Kは国策によって進んでいるという実態もあり、NABでもデジタルシネマ系以外は日本メーカーのものが先行しており、カメラやモニターなど様々な製品は出展されている。

特に今年は放送を前提とした機器が多く、カメラではUHDに対応した放送用のカメラが池上通信機や日立国際電気、ソニー、パナソニックなどから出展されている。これらのカメラは、B4マウントを採用することで、スポーツイベントでは欠かせない高倍率のズームレンズが利用できるほか、運用面でもCCUが使えるようになっており、中継用やスタジオなどでHDカメラと同様に使用できるようになっている。また、8Kのカメラも池上通信機や日立国際電気から参考出品されたほか、アストロデザインは新製品を出品している。

海外メーカーでこうした4Kカメラを発表していたのはグラスバレーで、昨年は4Kのセンサーではなかったが、今年は4Kのセンサーを搭載しており、1~2年のタイムラグで追いついてきた感がある。ソニーは、熊本の地震によりセンサーの工場が被害を受けたようで、ちょっと心配なところだ。東日本大震災の時は磁気テープの工場が被害を受け、業務用テープが品薄になったが、これが契機になりテープレス化が進んだという見方もある。今回も災い転じて福となすという方向に向かってほしいものだ。

4K/8Kはカメラだけでなく、レンズも対応した製品が出展されているが、俗にいう箱型レンズは事実上キヤノンとフジノンの2社だけで、追従してくる海外のレンズメーカーは今のところないようだ。ただ、PLマウントのデジタルシネマ系レンズは、老舗のSchneiderやCarl Zeiss、Angénieux、Cooke、Leicaといったメーカーのほか、映画とはあまり縁のなかった写真レンズのメーカーなどもラインナップをそろえつつある。

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さて、4Kの放送ということになるとスイッチャーやモニターのほか、送出関連の機器も必要だが、スイッチャーはソニーや朋栄のほか、グラスバレーが対応製品を出展しているほか、モニターは各社から出展されている。ただし、マスターモニターといえるようなモニターはソニーやキヤノン、EIZOくらいだ。さらに、8KとなるとNHKが出展していた中継車に搭載されていたNECのスイッチャーのみとなっている。

長引く不況の末、追い打ちをかけるような円高に見まわれ、さらに工場のある東日本や九州での震災などで、国内のメーカーは再編が進んでいる。4K/8Kでどこまで起死回生をはかれるのか、正念場の年でもあるようだ。

B4マウントは2/3型のセンサーによる3板式ということになるわけだが、3つのセンサーをプリズムに高精度に貼り付ける必要がある。加えて読み出し速度が60pが最低条件になるほか、感度やSN、ダイナミックレンジと言った面でも放送グレードが要求される。デジタルシネマ系のカメラは単板式でセンサーのサイズも1インチ以上あるため、デジタル一眼のセンサーを流用することも可能となり、参入しているメーカーも多い。最も技術的に難しいのは読み出しの速度といわれており、ソニーが今回発表した4Kカメラはセンサーも自社で開発製造しているからこそ実現できたといえそうだ。

NAB show 2016の会場から

■ソニー
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4K対応8倍速スローモーションカメラソニーHDC-4800。4K時400p、HD時800pの撮影が可能

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ソニーHDC-4800用のCCUおよびベースバンド・プロセッサユニットBPU-4800など。4K映像を8倍速で、最大4時間の連続記録可能なほか、IP伝送などに対応している

■キヤノン
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試作品のキヤノンCINEMA EOS SYSTEM 8Kカメラ。Canon EXPO Tokyo 2015で最初に披露されたもので、後部にOdyssey7Qレコーダーが4台搭載されており、4K×4の分割で収録

■朋栄
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朋栄バリアブルフレームレートカメラFT-ONE-S。4K解像度で最大500fpsの撮影が可能

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朋栄FT-ONE用コントローラー。ベースステーションに2基のSSDカートリッジを実装することができ、最大422秒のデータを収録可能

■池上通信機
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池上通信機4K対応カメラUHK-430。光学分離型構造を採用しており、センサユニット部分の延長や、運用に応じオプションセンサユニットへの交換が可能

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池上通信機UHK-430用カメラコントロールユニットCCU-430など。40Gbpsの超広帯域を確保し、2/3型4K CMOSセンサー3板式のカメラとしては世界初のR:G:B 4:4:4の4K非圧縮信号伝送を実現

■日立国際電気
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日立国際電気SK-UHD4000。デュアルグリーン4板式光学系と高精度貼り合わせにより実効880万画素の4K高解像度を実現

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日立国際電気SK-UHD4000用カメラコントロールユニットCU-UHD4000およびリモートコントロールユニットRU-1500VR

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日立国際8KカメラSK-UHD8060B。2.5インチ3300万画素のCMOSセンサーを採用した単板式カメラ

■パナソニック
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パナソニックAK-UC3000。1インチクラスの単板センサーを採用しているが、独自の光学系を搭載することで、2/3型のB4レンズを装着可能

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パナソニックCCU、スイッチャーなど

■グラスバレー
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グラスバレーのLDK-86シリーズは15FストップのHDRに対応予定

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4Kネイティブセンサーを搭載したグラスバレー4KカメラモデルLDK-86N。ソフトウェアライセンスによりHDや4K、ハイスピードなどグレードアップが可能

総務省のロードマップでは、8K実用放送を2018年までに開始するとしており、リオデジャネイロオリンピックが開催される2016年にはBS放送において試験放送を行うことが目標となっている。NHKではこれを受けて8K中継車を2台導入しており、すでに運用を開始している。カメラはNHK技術研究所により、幾つかのメーカーで試作品を制作していたが、今年試験放送を開始することから実用的なカメラが各社から出展された。今のところ8K放送は日本だけで海外で放送を開始すると表明している国はないようなので、カメラ以外の機材も国内メーカーのみとなっている。

■NHK
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NHKの8Kスーパーハイビジョン中継車

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NHKの中継車の搭載されていたNECの8Kスイッチャー

■池上通信機
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池上通信機8KカメラSHK-810。スーパー35mmCMOSセンサーを採用したPLマウント採用の8Kカメラ

■アストロデザイン
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アストロデザイン8KカメラAH-4810-A。133Mピクセル35mmフルフレームのCMOSセンサーを搭載。ベイヤー配列の15360×8640ピクセルのセンサーから7680×4320ピクセルの8Kフルレゾリューションを生成

■NTT
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NTTのリアルタイム8K H.264/HEVCエンコーダー

■日本コントロールシステム
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日本コントロールシステムの120HzRGB444対応の波形モニターDAB8000mini

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Vol.00 [After Beat NAB2016] Vol.02