txt:石川幸宏 構成:編集部
Libec(平和精機工業)
■HFMP(HANDS-FREE MONO POD)
Libecは、長年親しまれて来たLibecブランドのビデオ用三脚の入門機、TH-650HDのリプレースバージョンにあたるTH-X(国内ではすでに発表済)の初披露に加えて、今回のIBCでは同社初のビデオ撮影用モノポッド、HFMPを発表した。
下部の足部分を強化するなど開発当初から自立運用を目的に設計されたモノポッドで、軽量コンパクトといった製品ではないものの、機動性を重要視するイベントビデオグラファーなど向けに、これまでの写真撮影用一脚の延長上といった製品とは、大きく設計思想を見直した製品だ。
ヘッド部は先に発表されているTH-Xのものなど、同社製のヘッドを装着可能。重量もTH-Xのヘッド付き2.6Kg、ヘッド無し1.5kg。カメラ耐荷重は4kgまでと一眼カメラや小型ムービーカメラ用途だが、87.5cm~189.5cm(ヘッド付)までの高低調整が可能。
最も特徴的なのはフットペダル式のポール下部の新機構で、シルバーのフットペダル部を一回踏み込むことで同社の独自構造による新機構によりポールの傾きが変えられ、垂直時にもう一度踏み込めば固定される。シルバーのフットペダルは着地面の3つ足を挟むように3カ所3方向で稼働できるので、撮影時でもどの方向からでも踏み込むことが可能。また、機構内部にはボールジョイント機構が内蔵され、ポールそのものの回転動作ができる。足部分にも足裏のゴム製ラバー面に滑り止め用のカットデザインを入れるなど、細部に新たなアイデアが施されている。
国内での正式な製品発表、披露は11月のInterBEEになる見込み。発売は今のところ来年2月頃を予定しており、ヘッド無しのHFMP単体で税抜22,000円、TH-Xのヘッド付きで税抜37,000円を予定している。
TH-Xは、THシリーズの最終完成形を意識した“X”を製品名に入れた、ビデオ撮影入門用の三脚。これまで定番だったTH-650HDの良さに加えて、ALX以降の新たなLibecの技術が随所に取り入れられた。本体3.1Kgの重量に、4kgまでのカメラ耐荷重、75.5cm~159cmの高さ調整が可能。こちらは11月のInterBEE時に出荷予定。価格は税抜34,000円。
SIGMA
■Cinema Lens シリーズ
今回IBCに初参加となった、SIGMA。開催前から話題になっていた同社のシネマレンズシリーズ=単焦点レンズ5本、ズームレンズ3本のコンパクトで高性能な計8本が一挙に発表公開された。
今回発表されたのは、フルフレーム(FF)のイメージサークルに対応するFF ZOOM LINE(24-35mm)、ズーム全域でT2の明るさを保つ、High Speed Zoom Line(18-35mm、50-100mm)、最初の5本すべてがT1.5の明るさでFF対応の単焦点レンズシリーズ FF High Speed Prime Lineの3種のラインナップ。
今回のシネマレンズシリーズの商品コンセプトは「100% Retained & 100% New」。光学系の設計はスチルレンズの光学性能をそのまま流用(=100% Retained)しつつ、外観のメカニカル系デザインについては、フォーカス、ズーム、アイリスのリング形状を含め、完全にシネマ/ムービー撮影用途にリフォームされたもの(=100% New)になっている。
完全なフルマニュアル仕様で、マウントはキヤノンEFマウント、ソニーEマウント、PLマウントの3種を用意。また全機種がすべて95mm口径に揃えられており、通常114mmのレンズ口径が多い他社のシネマレンズシリーズにおいて、マットボックスなど機材全体のコンパクト化が可能になり、撮影現場全体の機動性をも重要視した設計になっている。ズームレンズのうち、24-25mmのみ、35mmフルサイズに対応しており、このモデルにはPLマウントはない。
本製品の開発のきっかけは今から4年前に発売されたスチル用の18-35mmレンズが特に北米での人気を得て、さらにその内の多くのユーザーが小型カメラのムービー撮影用に使用していることがわかった。ただスチルレンズ機構のため、ユーザーが各々工夫した使い方をしていたが、その後シグマ社側でもこの市場を研究。REDやブラックマジックデザイン、ソニーが小型で安価なシネマカメラを出す中で、その市場に見合うシネマレンズが無かったことから、コンパクトで性能も良く、値段も市場に見合ったものが出せたら…という想いから、今回のシネマレンズシリーズの製品化に至ったという。
まだ正式な価格は決まっていないが、出来れば5000ドル以下に収めたいとの意向だ。18-35mm、50-100mmの2本のズームレンズに関しては日本とアメリカで今年12月から先行発売予定。その他のレンズについては2017年以降順次発売していくという。
同社はこれから、積極的に映像業界向けのイベントにも参加して行くとのことで、11月のInterBEE、そして来年のNABにも出展予定だ。
Canon
■EOS C700
これまでのEOS C500に変わる、CINEMA EOS SYSTEMの最高峰=今後のキヤノンのフラッグシップ機となるEOS C700の実機が初披露された。
スーパー35mm・4.5Kの新開発センサーと、映像処理エンジンを3基搭載した「トリプル DIGIC DV 5」を搭載して、4K/60Pのカメラ内部記録、同シリーズでは初めてApple ProRes記録に対応。ダイナミックレンジもCanon Log 2で最大15ストップ、汎用性の高いCanon Log3で最大14ストップなど、これからのHDR制作にも対応する。
昨年発売したEOS C300 Mark IIに搭載されたキヤノン独自の最先端AF機能はもちろん全て搭載され、さらにプリセット機能が追加されたデュアルピクセルフォーカスガイドなど、さらに進化した機能も多数搭載。
またこれまでと大きく違うのは、アナモフィックレンズ対応機能が搭載されたことと、内部の自社製バッテリー駆動ではなく、完全外付けバッテリーによる駆動方式で、Vマウント、ゴールドマウントなどの汎用業務用ビデオカメラの大型バッテリーで動作するなど、本格的なハイエンドシネマカメラが誕生した。
さらに機体後部にはドッカブルタイプのCODEX社製のRAWレコーダー「CDX-36150」を装着すれば、最大4K・120pまでの4K RAW記録が可能。また4.5Kで100pまでのRAW記録もできる。さらにグローバルシャッターモデルの「EOS C700 GS PL」もあり、詳細なブラッシュアップはこれからで、サンプル映像も少なかったのだが、本格的な映画向けシネマカメラであるとともに、TV制作にもB4マウントレンズ対応機能などがあり汎用性の高いカメラになっている。
EOS C700は、これまでのキヤノンのCINEMA EOS SYTEMのカメラ群とは根本的に設計思想が異なっており、更なるバージョンアップをファームウェアのソフト部分だけでなく、内部構造自体が各部ユニット化されているとのことで、このEOS C700の本体筐体があれば、ハードウェア部分の更なる進化の際にも交換/付属が随時対応できるような構造になっているという。
EOS C700は今年12月下旬の発売予定、価格は300万円前後を予定。グローバルシャッター内蔵のPLマウントバージョン、EOS C700 GS PLは来年1月下旬の発売予定で、330万円前後になる模様。
txt:石川幸宏 構成:編集部