[InterBEE 2016]会場出口インタビュー
快晴に恵まれた2日目は、昨日と違ってビデオ業界のリーディングカンパニーのいくつかを回って近い将来の放送業界を俯瞰してみようと思う。すでに4K/8Kの試験放送も開始され、実際の運用に伴い必要となる機材を各メーカーが出展している。
そこには、昨年あたりまでに見られた流行に遅れまいと先走った感はなく、一見すると同じように見えても地に足のついた製品が多いことに気づく。それはSMPTEやARIBといった、放送業界の規格を決めている機関でインターフェースやフォーマットなどの機器を開発するうえで必要な規格が、おおむね決定したのが理由といえるだろう。
例えば、初期の4KではDVI×4やHD-SDI×4といった半ば力業だったものが、最近では12G-SDIやIPがトレンドとなっている。やはり、放送業界では1つの映像信号を伝達するのに複数のケーブルが必要になるのは許せないことのようだ。過去、アナログの時代でもコンポーネント信号が放送業界に広く普及しなかったし、コンポーネントデジタルもシリアル伝送になって普及が進んだという過去がある。そうした業界の事情を考慮すると12G-SDIが有力候補に思えるが、同軸ケーブルでは伝送距離が極端に短くなるので、光ケーブルを使うことになるだろう。
IPは、ご存知の通りInternet Protocolの略である。もともと映像伝送を念頭にしたものではいので、これを利用しようとするといろいろと不都合が生じてくる。そこで、新たな枠組みを設けて映像伝送に適したものにしようとした動きがある。ソニーが中心に推進しているのがIP Live Production Systemで、グラスバレーなどが推進しているが、AIMSで今のところこの2つが有力候補となっている。NABではこの2つの陣営がより多くのメーカーを取り込もうとしているかのように見えた。HDでNTSCとPALという2つの放送方式の呪縛からある程度逃れたかに見えたが、また2つに分かれてしまうのだろうか。どちらかがどちらかを駆逐するのではなくお互い歩み寄ることで、1つになることを願いたいものである。
ネットワーク関係の業界では、機器間の接続性を担保するために力のあるメーカーが自社の製品をそろえた検証施設を開発メーカーに開放したり、ネットワーク関係のイベントでは、各メーカーが協力してイベント会場内のネットワークを構築して接続互換性の担保に努めている。今回ソニーのブースでは、同社が提唱しているIP Live Production Systemに賛同しているメーカー間のブースを結び、メーカー間を超えた接続互換性の実証を始めた。本格始動に向けた第一歩といえるのかもしれない。
朋栄、日本電気、東芝、インターネットイニシアティブ、シスコシステムズ、リーダー電子と共同で、各社ブースに展示した対応機器をIPネットワークで接続し、4K映像ライブ配信のデモンストレーションを行った
朋栄ブースのキャラクタージェネレータ・RCGコーナー。ソニーブースとはNMIで接続、ソニーブースのIP Live Production Systemで同社のシステムを利用可能
朋栄のシステムをソニーブースのIP Live Production Systemで利用
東芝ブースの4K/8K送出設備。IP LiveゲートウェイでNMI-3G-SDIへ変換、送出系に送られる
IP Live Production Systemで結ばれたリーダー電子のLV5490。NMI対応オプションを搭載することで実現
音声システムからの音声信号をNMIに重畳したり、NMIから音声システムへ渡す音声信号を抜き出すなど、NMIに対応したAVマルチプレクサ/デマルチプレクサボードNXLK-IP45Fによりタムラ製作デジタルミキサーNT110をネットワークに接続