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[InterBEE 2016]会場出口インタビュー
最終日3日目、少し肌寒い気もするがそれでも例年よりも暖かいようだ。NHKが先頭に立って提唱した4K/8Kは当初、映画産業で盛り上がりを見せ、デジタルシネマを加速させたという側面もあり、解像度だけでなく従来ビデオ業界では、あまりなじみのないダイナミックレンジや色域が話題になっている。
当初ビデオ業界では、ドラマなどの作りこみ可能なコンテンツ制作で注目を集めたが、一般家庭で視聴するテレビモニターがダイナミックレンジや色域に対応した、いわゆるHDR対応を売りにするようになり、制作側の対応も迫られた結果といえるだろう。もちろん、ITU-R BT.2020やSMPTE ST 2084、ARIB STD-B67といった規格化が決まったからということでもある。
こうした規格への対応は、もともとオーバースペックだったカメラやデジタルシネマ派生のカラーグレーディング、編集システムなどは比較的早く対応しており、最終的な画像を評価するモニターの機種が限られるもののソニーやEIZO、キヤノンなどから出展されている。これらは4K/8Kに限ったことではなく、今年の夏にHDも含むITU-R BT.2100という規格が決まり、今後はすべての放送がHDR対応の対象ということになるだろう。すでにネットやIPTV、CSではHDR放送を始めているところもある。
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BT.2100に対応したHDR機能搭載スタジオカメラ池上通信機HDK-970
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日立HDR&BT.2020対応4KカメラSK-UHD4000
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キヤノン業務用24型4KリファレンスディスプレイDP-V2414によるSDRとHDRの比較デモ
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EIZO ColorEdge CG318-4Kと開発中のHDR対応モニター(右)
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プロユースにも対応した参考出品の東芝のモニターREGZA
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会場正面にはスカパーによる4K HDRの放送がディスプレイされていた
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NTTブースには、ひかりTVによるHDR対応4K-IP放送のデモンストレーションが行われていた
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NTTのHDR対応4K HEVCエンコーダーHC11000
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SMPTE ST 2084およびARIB STD-B67、BT.2020に対応した波形・ベクトルモニターテクトロニクスWFM8300
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HDRオプションを搭載した4K波形モニターリーダー電子LV5490
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HDR対応のアストロデザイン4KウェーブフォームモニターWH-3206B
現場的には、HDから4K/8Kへの対応を模索しているさなかに、新たな規格の登場や対応機器の発売があり、本来ならばすべて落ち着いてから対応したいところだろうが、CSやネット配信のほかBlu-rayのような媒体が対応してくると、あまり悠長に構えていられないのが現状ではないだろうか。IP化も含めると放送は今大きな変化の真っただ中にあるといえ、過去これほどまでに急速な変化に遭遇したことはなく、次から次へ登場する新製品に業界は活況を呈しているものの、ワークフローも従来と異なるため、使いこなすためのノウハウの蓄積が必要で、2020年の本放送を目標に当分の間は落ち着かない状況が続くだろう。
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クレッセントHDR対応DCP/IMFマスタリングシステム
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SR Live for HDR制作ワークフローを用いたライブソリューション。ソニー4K HDR/HD SDR同時ライブ伝送
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ソニーは他社のビデオ機器メーカーとIP接続実証テスト
放送局などの設備系機材は、今までのようにビデオメーカーの製品だけでなく、ネットワークスイッチなどIT系の製品が必要になってくる。同じメーカーの機器でシステムを組めば問題になることがほとんどなく、何かあってもメーカー側で対応してくれるという安心感があった。ビデオメーカーでは、動作確認済のネットワークスイッチなどを推奨機器として挙げており、ソニーではそうした機器も含め、ほかのビデオ機器メーカーとIP接続実証テストをブース内で行っていた。こうした試みは今後も頻繁に行われるようになるだろう。もちろん実際に設備設計を行うSIが重要な役割を果たしていくことになると思う。
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