txt:西村真里子 構成:編集部
インタラクティブでもっとも注目された「ディープ・マシーン・ラーニング」とは?
Googleジャガードプロジェクトは繊維にセンサーを埋め込み普通の衣服を“コネクテッド”なプロダクトに変えるものだ
「イノベーション」について語られることが多いSXSW。今年のSXSWインタラクティブでもっとも注目されたBREAKOUT TRENDは「ディープ・マシーン・ラーニング」だ。人工知能について関心が高まるなか、機械学習を扱うセッションが多かったことが理解できるトレンドだ。人工知能、センサー、VR/ARが最近のテクノロジートレンドだが、SXSWにはそのトレンドの最新が詰まっている。そしてSXSWの特長は、最新テクノロジーを活用したコンテンツやユーザーシナリオが提示されていることである。
Googleがリーバイスと組んだ「スマートジーンズ」を体験
かわいらしいアメリカの一軒家。この家の中に最新のGoogleジャガードプロジェクトが紹介されていた
SXSWのメイン会場近くに、こじんまりとした家があった。その可愛らしい家の中に最新のテクノロジーが紹介されていた。Googleがリーバイスと取り組んでいたスマート繊維の展示「Googleジャガードプロジェクト」のプロダクトが紹介されていた。ファッション×テクノロジーの最先端を行くものとして注目されていたジャガードプロジェクトは、通常の紐と見た目まったく変わらないものの中にセンサーを仕込み、縫い込んだ衣服などをデジタルデバイスと変化させるものだ。
Googleジャガードプロジェクトのスマート繊維が縫い込まれたリーバイスジーンズジャケット。袖口をタップしたりスワイプしてスマホをコントロール可能
今回筆者は、リーバイスジーンズのジャケットに仕込まれたものを実際に試着させてもらったのだが、通常のジーンズとまったく遜色がないそのジャケットの左袖口に繊維が縫い込まれており、タップをしたり撫でることによりスマホから音楽が流れたり、時間を教えてくれたり…つまりスマホのコントロールが、ジャケットの袖口を撫でたりタップしたりするだけで可能になるのだ。シナリオとしては、バイクに乗っているライダーがスマホを操作するときなど、両手が塞がっている際に気軽にコントロールできそうだ。
コントローラーとしてのボタンを外せばそのまま洗濯することもできる繊維なので、利用範囲は広がって行く。筆者が考えたシナリオは、スマート繊維を枕に縫い付ければ眠くなったときに電気を消しに立たなくても、枕を撫でるだけで電気が消せるという、眠い時の課題を解決させてくれる利用方法だ。洗濯できる、どこにでも縫い付けられる、ということで一人ひとりの生活にあわせて便利な使い方ができそうである。
買い物が楽になるスマートカートも登場
Starship Technologiesのスマートカートは、家とスーパーマーケットの道を覚えて自動的に買い物をしてくれる
SXSWの面白いところは、会場の外でも最新テクノロジーに触れることができる点だ。オースティンの街中で私が出会ったスマートカート「Starship technologies」のプロダクトは、ここ数年IoTプロダクトとしてとても注目されているものだが、実際に走っているところを目にすることが出来た。
5km圏内の買い物をこなせるこのカートは道を覚え、移動の軌跡をスマホでトラッキングできるので盗難の危険も無いという。将来はこのようなスマートカート専用レーンなども出来て、買い物を、そして昨今Amazonなど宅配物の増加で悩んでいる配達業者を楽にしてくれるのではないか?と考える。
本を読むより、ニュースを見るより「VR」が良い理由
今年は、VRシアターというストーリーがあるVRコンテンツを専門にあつめたブースが新設されていた
昨年以上にVR/ARコンテンツが増えた今年は、数だけではなく質も向上しておりVRの世界がいよいよ到来したことを感じられた。シルク・ドゥ・ソレイユのVRコンテンツはまるでラスベガスのホテルの会場で見ているかのような、否、それ以上に演者の顔がよく見えて臨場感高いステージをVRの中で楽しめた。
また、Facebook Oculusは世界が抱える課題、飢餓や教育、環境破壊について問題提起する5分~10分程のコンテンツを紹介していたのだが、いずれのコンテンツも本やweb記事、テレビのニュースで見るよりも短時間で課題把握がすっとできた。それは没入感がある世界観のお陰であたかも自分が当事者のように感じながら世界の課題について考える機会が、視覚と聴覚を奪われながら提供されるからだろう。
少し前までヘッドマウントディスプレイをつける生活は遠いと思っていたが、短時間で世界の課題が把握できるのであれば効率も良いし理解も早いので、ヘッドマウントディスプレイを装着したVRコンテンツ経由でニュースを見るのもいいのではないか?と思いはじめた自分自身の変化が面白いSXSW2017であった。
txt:西村真里子 構成:編集部