Aコース:スタジオカメラやシネマカメラの最前線
HDから4Kへ急速に製品が展開されてきたが、今年は視聴側も送出側も規格がほぼ決まり、スタジオカメラなど放送系に特化したカメラの新製品もかなり揃ってきた。2020年のオリンピックはキー局は各社とも4K対応の予定で設備の更新の最中といえる。そうした需要に応えるべくメーカー各社も対応した製品をラインナップしている。オリンピックのようなスポーツ中心の一大イベントとなるとスタジオカメラや取材用のカメラだけでなく、競技をフォローするための仕込みカメラやハイスピードカメラなども必要になり、今年のInterBEEではこのあたりが見どころといえる。
一方、デジタルシネマ系のカメラは一時期ほどのフィーバーぶりはなくなったとはいえ、劇場用映画だけでなく個人のクリエイターまで裾野が広くなった分多様化してきたといえよう。価格的にもカメラ本体だけでなく、レンズや三脚、スタビライザーなどの撮影周辺機器もこれに応えるようにさまざまなグレードの製品が出現している。こうした機材はカタログなどではわからない部分も多々あるため、こうした展示会を通じて実際に手にして確認してもらいたい。
すでに4Kは特殊なものではなく、その先の8Kに対応したカメラも試作レベルから製品として発表されるようになってきた。規格が決まってきたこともあるだろうが、すでに4K/8Kのロードマップが発表されており、それに沿ったものといえるだろう。
8Kに関しては今まで池上通信機や日立国際電気、アストロデザインなどがNHK技研との協力のもと試作品を製作してきたが、ソニーもIBCを機会に8K 3板式カメラシステム「UHC-8300」を発表しており、いよいよ本格的に8Kに突入した感がある。現在のHDから少し先の4K、さらにその先の8Kまでの新製品を一堂に見られるのは今年だけかもしれない。
01 パナソニック システムソリューションズ ジャパン[#7309]
制作ソリューションでは、今年6月のCine Gear Expoでお披露目した5.7Kコンパクトシネマカメラ「AU-EVA1」を展示する。新開発5.7Kスーパー35mmイメージセンサーを搭載しており、4K/10ビット4:2:2映像を実現しているほか、デュアルネイティブISO(800/2500)の搭載や着脱可能なハンドルと回転式グリップなどを特徴としている。
放送ソリューションでは、2160/59.94pの4K映像フォーマット対応ライブスイッチャー「AV-HS8300」シリーズが目玉。大規模4K番組制作に対応しつつ2Kシステムから4Kシステムへ運用性を損なわず移行できるのが特徴。このほかにも、ホール音響システムRAMSA Auditoriumシリーズに新たに加わったラインアレイスピーカーや、4K/8Kカメラに対応したLED照明の展示を行う。
02 RAID[#7101]
RED DIGITAL CINEMAや各種撮影用アクセサリーを幅広く扱うRAIDでは、RED DRAGON 8Kセンサーを搭載した「RED WEAPON」や、Avid DNxHRやDNxHDフォーマットでの記録が可能となった「WEAPON」、「SCARLET-W」、「RED RAVEN」などを出品するだろう。昨年のInterBEEではHELIUM 8K S35センサーを搭載したカメラを披露していたが、今回はRED DRAGON 8Kセンサーを搭載したモデルの展示が予想される。
RAIDではこのほかにも撮影関連商品として、同社が取り扱っているSmallHD社のモニターやFreefly Systems社の各種リグ、Bright Tangerine社のマットボックスなどのレンズアクセサリーも出品するだろう。
03 ナックイメージテクノロジー[#6403]
ナックはフィルムカメラの時代から長年ARRI社のカメラを扱っており、デジタルシネマカメラも当初から手掛けている。今回のInterBEEではソフトウェアバージョン(SUP)5.0によりマルチカメラモード搭載など強化をした「ARRI AMIRA」や最大200fpsのハイスピード映像、ARRIRAW内部収録が可能な「ALEXA Mini」を出品する。
シネマレンズは、カールツァイスやアンジェニュー両社の新レンズを展示。ズームレンズ「ZEISS Lightweight Zoom LWZ.3 」やズームレンズ「angenieux Type EZ Series」、アナモフィックレンズ「angenieux Optimo Anamorphic」、アナモフィックレンズ「ZEISS Master Anamorphic」、ズームレンズ「ARRI Alura Zooms」などの展示を予定している。
04 ソニー/ソニービジネスソリューション[#6112]
NABまでは4KとHDばかりだったソニーもついにIBCで8K 3板式カメラシステム「UHC-8300」を発表。こちらがソニーブースの目玉となるだろう。現在8Kに関しては仕様もほとんど決まっており、このタイミングを図っていたといえる。UHC-8300は8K/4K/HD信号の同時出力に対応しているほか、SDIや40Gb/s IPインターフェース、ITU-R BT.2020、HDRなどに対応。センサーは1.25型で3板方式だが、アダプターによりB4レンズの装着も可能だ。
デジタルシネマ系カメラにはスーパー35mmセンサーを採用しているものが多いが、ソニーはIBCを機会に36×24mmフルフレームCMOSイメージセンサーを搭載したCineAltaカメラ「VENICE」を発表。こちらもブースの目玉となりそうだ。発売は来年2月と少し先だが、ITU-R BT.2020やDCI-P3色域を上回る広色域のほか、15stopを超えるワイドラチチュード、低ノイズを実現した新開発のセンサーを搭載。ほかにもXDCAMのハンドヘルドカメラ「PXW-Z90」も展示されるだろう。
05 ノビテック[#6206]
ノビテックはハイスピードカメラや温度計測カメラ、3次元計測機器など各種計測用カメラを扱っているが、今回のInterBEEでは放送用として活用できるVisionResearch社のPhantomハイスピードカメラのニューモデルを出品する。新製品はコンパクトで多機能ハイスピードカメラ「Phantom VEO」シリーズで、6種類のモデルがラインナップされている中でも4Kモデルの「VEO4K 990」が注目。4096×2304のフル解像度で、最大938フレーム/秒(fps)、または1000fps(4096x 2160)をキャプチャすることが可能。グローバルシャッター、ローリングシャッターに切り替え可能。
また、Phantomシリーズには4096×2160の4Kで1000コマ/秒、HDで2000コマ/秒の撮影ができる「Phantom Flex4K」のほか、HDで2500コマ/秒収録ができB4レンズを装着可能な「Phantom MiroLC320S」、ハンドヘルドタイプで1500コマ/秒の撮影ができる小型HDカメラ「Phantom V642」などもあり、こちらも出展されるかもしれない。
06 池上通信機[#5312]
カメラ、スイッチャー、モニター、トランスミッション、ファイルベースを出品する同社だが、ブースの見どころは10月より販売を開始した4K/HDスタジオカメラ「UHK-435」。2/3型4K 8M Pixel CMOS 3板式の光学系を搭載したネイティブ4Kスタジオカメラとなる。放送用カメラの主流である2/3型センサとB4マウントの採用により、HDと変わらぬ被写界深度の深さで4K映像制作が可能。
カメラ以外の新製品では、10月より発売を開始したHDマルチフォーマット液晶モニター「60シリーズ」の17型「HLM-1760WR」、15型「HLM-1560WR」、9型「HLM-960WR」がInterBEE初出品となる。LEDバックライト搭載のフルHD(1920×1080)パネルを採用し、中継車などスペースの限られたシステムの構築に最適な「WCSタイプ」を各サイズ用意している。
07 朋栄[#4311]
スイッチャーなどのビデオ機材中心だった朋栄は2012年にハイスピードカメラ「FT-ONE」を発表し、以来ブラッシュアップを図りカメラの性能向上やカメコンなど周辺機器の充実を図ってきた。今年のInterBEEではNABで初公開した12G-SDI出力モデル「FT-ONE-LS-12G」を出品する。
ビデオサーバへの常時出力やフリッカー補正機能、2/3インチレンズ対応が可能で4K映像で最大500fps、HD映像で最大1300fpsの収録に対応できるほか、スーパースロー映像とライブ映像の同時出力、24軸カラーコレクション機能、3種類のインカムなどの対応可能。単独のハイスピードカメラとしての使用だけでなく、同社のスイッチャーやバーチャルスタジオシステム、ビデオサーバーなどとの組み合わせによるシステムでの対応も特徴となっており、スポーツイベントなどへのソリューションとして披露される。
08 キヤノン[#3509]
キヤノンには小型ビデオカメラのシリーズとしてXFのラインナップがあるが、HD仕様のXF105/205/305が登場以来しばらく後継機種が登場していなかった。11月発売の4K60p対応の「XF405」が新たにラインナップに加わることになったほか、ハンドヘルド対応の「XA15」や「XA11」なども新製品として出品されるだろう。
CINEMA EOSのシリーズではPLマウントやグローバルシャッターに対応したEOS C200やEOS C700を出品。C200はタッチパネル対応のデュアルピクセルAF機能を搭載しており、狙った箇所を画面タッチするだけで直感的なオートフォーカスが可能となっている。また、CFastとSDメモリーと異なるスロットを装備しており、それぞれ異なったフォーマットで4K収録できるようになっている。ほかにもファームアップにより2画面分割表示やBT.709色域外表示機能、ARRIのカメラなどHDR対応LUTプリセットの追加、BT.2100対応、EOS C700のRAWディベイヤーに対応した4Kモニター「DP-V2420」や17型の「DP-V1710」なども出品する。
※掲載しているブース写真は過去に開催されたイベントのものです。