Eコース:ポスプロ制作ツール巡礼

2017年のポスプロ関連でもっとも話題になったニュースといえば、Blackmagic Designの「DaVinci Resolve 14」のリリースだろう。2010年にDa Vinci Systems社から買収し、バージョン12で編集機能、バージョン14ではオーディオ機能を搭載。今では1本のソフトで編集からカラーグレーディング、オーディーオまで各作業をコンフォームなしでシームレスに行き来できる。これほど幅広いワークフローをカバーをしつつ、価格は税別33,980円とお手頃な価格を実現しているのも見逃せないところだ。

今もっとも市場でよく使われているノンリニア編集ツールとしては、初心者からポスプロの現場まで幅広い層に支持されているAdobe Premiere Proだろうか。Premiere ProとAfter EffectsやPhoptoShopとの連携による作り込みや、VRの編集機能の充実ぶりは他のツールよりも抜きにでている。また、年2回のペースで行われているアップデートでポストプロダクションの現場で必要としている機能を積極的に搭載する小回りの良さも人気の理由だ。

アドビは今年のInterBEEには出展していないが、TooはAdobe Premiere Proを使用した4K/60p編集ターンキーシステムを展示する。また、CGやVFXソリューションでお馴染みのビジュアル・グラフィックスでは、ブースにミニシアターを設置してAutodesk FlameやAdobe Creative Cloudの講演を日替わりで行う。ちなみにエヌジーシーのブースでも、Autodesk FlameやNUKE STUDIOの展示やプレゼンテーションを行う。最新のコンポジションに興味のある人はぜひチェックをしてほしい。

ノンリニア編集ツールをいろいろ見てまわりたいならば、Media Composerでお馴染みのアビッドのブースや、EDIUSでお馴染みのグラスバレーのブースも要チェクだ。アビッドの製品をより知りたいならばフォトロンブースのチェックをお勧めしたい。InterBEEを機会に各種ツールの理解をより深めてほしい。

01 Blackmagic Design[#8211]

カメラやスイッチャー、コンバーター、モニタリング機材を多数リリースしている同社だが、目玉は編集、カラーコレクション、オーディオポストプロダクションツールの「DaVinci Resolve 14」とビジュアルエフェクト、3D、VR、モーショングラフィックソリューションの「Fusion 9」だろう。DaVinci Resolve 14は、最大で10倍ものスピードを実現し、新しいコラボレーティブワークフロー機能によりネットワーク上でメディアを共有したり、メッセージをやり取りして仕事を調整できる。Fairlight Audiotoolsに基づく新しいサウンドポストプロダクションスイートがDaVinci Resolveに統合されたのも大きなニュースだ。

Fusion 9は、新たにVRツールや新しいキーヤー技術、平面トラッキング、カメラトラッキングを搭載。Mayaや3ds Max、Cinema 4Dなどのソフトウェアからのモデルやシーンの読み込み機能を搭載し、他のソフトウェアからの3Dオブジェクトやシーンの合成、ライト、レンダリングがFusion内で行える。VR機能は、パノラマビューアを備えた360°のワークスペースを加え、Oculus RiftやHTC Viveなどの人気のヘッドセットがサポートしている。

02 EIZO[#7508]

見どころは、HDR映像の明るさと色を正しく映し出す31.1型HDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3145」。HDRコンテンツの最終色調整を行うカラーグレーディング作業は、映像の色味やトーンを正しく確認するために高輝度・高コントラスト比のモニターを必要としており、CG3145はHDRコンテンツのカラーグレーディング作業に適したリファレンスモニターとしている。1000cd/m2の高輝度を確保すると共に、このスペックを安定して表示できるのが大きな特徴だ。また、コントラスト比100万:1やPQ方式/HLG方式を含むさまざまなガンマに対応している。映し出されたモノが本当にそこにあるかのようなリアルな映像は必見だ。

また、編集・制作用途には、映画・配信向けのHDR(PQ方式)表示にアップグレードしたColorEdge の4Kモデル「ColorEdge CG318-4K」や「ColorEdge CG248-4K」を展示し、DaVinci ResolveやFlameなどの制作ソフトウェアと組み合わせて展示を予定している。

03 AJA Video Systems[#7308]

Thunderbolt 3対応の12G-SDI/HDMI 2.0接続のビデオI/O「Io 4K Plus」に注目。12G-SDIやHDMI 2.0といったI/Oを備え、オーディオ機能や最大60pの4K/UltraHDフレームレートにも対応する。AJAが提供するMac/PC向けドライバとアプリケーションプラグインを使うことで、Io 4K PlusとAdobe Premiere Pro、Apple FCP X、Avid MediaComposerなどの主要な制作ツールと統合できる。

マルチチャンネルHDレコーダー&4K/UltraHD/2K/HDレコーダー兼プレイヤーの「Ki Pro Ultra Plus」も目玉の展示だ。今年10月5日に公開したv2.0へのアップデートにより、HLG/HDR 10に対応、最大2K/60pのProRes 4444 XQの再生&収録が可能。

NABで発表したHDR/WCGリアルタイム変換対応のコンバーター&フレームシンクロナイザー「FS-HDR」の実機も登場する。HDRからHDRへ変換、HDRからSDRへ変換、SDRからHDRへ変換が可能で、BT.709とBT.2020の相互変換やHD SDR BT.709素材をUHD HDR BT.2020へ変換したり、逆にUHD HDR BT.2020素材をHD SDR BT.709へ変換することも可能。Colorfront Engineの搭載で、HDRとWCG処理能力ではHD-HDRへのダウンコンバージョンを含むシングルチャンネル4K/UltraHD/2K/HD、または最大4チャンネルまでの2K/HDを同時にリアルタイムに処理可能。

04 アビッドテクノロジー[#6402]

ビデオ関連では、ノンリニア編集ツール「Meida Composer」やメディア共有ストレージ「Avid NEXIS」、新しく発表したポータブルなインターフェース「Avid Artist | DNxIV」、4K/HDRビデオサーバー・ファミリー「FastServe」を展示する。

特に注目したいのは、IBC2017で発表された小型でポータブルなI/Oインターフェイス「Avid Artist | DNxIV」と、NAB2017で発表した2RUラックマウント型の「Avid Artist | DNxIQ」。どちらもThunderbolt 3接続による最大40Gb/sの帯域幅を持ち、SDI、HDMI、XLR、RS-422やタイムコードなど多様なメディア制作に対応。Avid Media Composerだけでなく、Apple Final Cut XやAdobe Premiere Proもサポートしている。

05 アイ・ディー・エクス[#5411]

一押しの新製品は進化したDUO-Cシリーズバッテリー「DUO-C198」と「DUO-C98」。セルをハイパワー化し、カメラの動作時間の延長を実現。10段階の残量表示でバッテリー交換時期をより細かく分かるようになっている。また、カメラビューファインダーでの残量表示可能が行え、V-Touch搭載により10秒間だけ光るLEDライトにより暗いところでのバッテリー装着をサポートしてくれる。

バッテリーを連結して使うというE-HL9のコンセプトを強化した形で開発中の新PowerLink Battery「IPL-150/98」もいち早く参考展示。4連結使用が可能な新PowerLinkバッテリーで、2ch充電器での8個のバッテリー充電が可能。HDR対応4Kリファレンスモニター「LUM-310R」は2000nitを確保し、コントラスト比は100万:1を実現。色再現に関してはDCI-P3色域の約99%をカバーする。

参考出品としてワイヤレス伝送3モデル(100mモデル、300mモデル、複数同時使用システム)と撮影用LEDライト4モデル(ポケットタイプ、フェイスライト、近距離ENGライト、ENGライト)、新たに取り扱いを開始するレンズコントロールシステムPDMOVIEは「REMOTE AIR PRO」と「REMOTE LIVE 2」、「REMOTE AIR 3」の3機種を披露する。

06 エーディテクノ[#4512]

新製品は4K UHD 15.6インチマルチメディアディスプレイの「UH1560」。デュアルHDMI 2.0およびデュアルHDMI 1.4入力をサポートし、Vマウントバッテリープレートの取り付けに対応。オプションでサンシェードやUタイプスタンドを用意している。

また、別のモニターの新製品としてHDBaseT受信機内蔵10.1型 業務用液晶ディスプレイ「LCD1015HDS」を展示。既存発売中の「HDBaseT HDMIエクステンダー Pro 100m TX」、「HDBaseT HDMI エクステンダー 60m TX」、その他市販のHDBaseT送信機とLCD1015HDSを1本のLANケーブルで接続することで、最大フルHD(1920×1080)の非圧縮映像・音声・リモコン制御信号・電源を最大60mまで伝送可能。

そのほかにも、日本国内での販売代理店契約を締結したプルーラ社の12G-SDIマルチフォーマットビデオプロセッサー「4KXpress」や、プラスチック光ファイバDisplayPortケーブル「APO-xxN」、Digital Forecast社製 4K UHD対応3G-SDI 4系統光延長器「UHD_QOTR」、USB伝送対応HDBaseT 2.0 HDMIエクステンダーなどを出展する。

07 グラスバレー[#3505]

2017年11月上旬の発売を予定している新バージョン「EDIUS 9」の先行展示を行う。4Kを含むさまざまなHDR、Log素材のリアルタイムネイティブ編集や、プロジェクト単位のカラースペース設定によるSDR/HDRの混在編集、放送局、Web用のHDRメタ付加ファイルエクスポート、Canon EOS C200のCinema RAW Lightと静止画RAWファイルのデコードなどを可能としている。

クラウドに対応した業務用のフローティングライセンスパッケージもリリースする。放送局や学校などの大規模な施設向けに設計されており、必要な端末すべてにEDIUSをインストールし、その中でライセンス台数分のEDIUSを同時に使用可能。フローティングライセンスパッケージは2018年春頃提供予定。

アセットマネジメントシステム「GV STRATUS」や、次世代ルーティングプラットフォーム「GV Node」「GV Convergent」などの新製品も展示予定。

08 アストロデザイン[#3315]

展示の目玉は8Kノンリニア編集。HQXコーデックを搭載した8Kレコーダーと、グラスバレー社の8K編集機とのコラボで、インジェストから書き出しまでストレスのない8Kノンリニア編集を実現している。圧縮/非圧縮記録型8K SSDレコーダーの「HR-7518」や「HR-7518A」にSSDパックを使用することで、4TB SSDパック×2使用で最長で80分、非圧縮で48分収録の収録が可能。SSDパックはデュアルスロットを搭載し、収録中/再生中のメディア交換(リレー収録/リレー再生)が可能。

カメラは、PLマウントを採用したHDR対応単板式8Kカメラヘッド「AH-4801-B」を展示。カメラヘッド、コントロールユニット、マスターコントローラーの3ユニットで構成し、カメラヘッドとコントロールユニット間は最大100mまで延長可能。3300万画素の高解像度CMOSイメージセンサーを採用し、8K(7680×4320、59.94Hz)プログレッシブ映像をリアルタイム出力。特徴はサイズで約13cmキューブ型で重量2kgの小型化を実現している。

DLP 8Kプロジェクタ「INSIGHT LASER 8K」の展示も大きなトピックだ。アストロデザイン、台湾Delta Electronics社及び同社グループ傘下の英Digital Projection社の3社による共同プロジェクトで実現したもので、英Digital Projection社の基盤技術をベースに、アストロデザインが培ってきた8K映像技術を盛り込んでいるという。

※掲載しているブース写真は過去に開催されたイベントのものです。


Dコース [Inter BEE 2017の歩き方] Fコース