txt:稲田出 構成:編集部
今年もこの季節がやってきた!After NAB Show開催
5月23、24日の2日間東京・秋葉原のUDXにおいて「After NAB Show Tokyo 2018」が開催された。米ラスベガスで開催されたNAB2018に出展した最新機器やサービスでの成果をいち早く日本の放送局、映像制作プロダクション、ポストプロダクションといったユーザーに伝えることを目的とし、2013年から毎年開催されている。
とはいえ、NAB2018で出展していなかったメーカーも多く、11月に開催されるInterBEEや、夏に開催されるケーブル技術ショーのような規模の大きいイベントとは異なり、落ち着いた雰囲気の中で商品の説明を聞くことができる貴重な場となっている。
また、秋葉原という地の利の良さも魅力といえるだろう。出展メーカーは毎年若干異なっているが、今年はソニーやブラックマジックデザインなど、ビデオ機器を総合的に扱っているメーカーの出展はなく、国内のカメラメーカーはキヤノンとパナソニック(NEW EVA 2.0)だけとなっており、そのためか三脚メーカーの出展が今年は無かった。
- Vol.01 After NAB Show Tokyo 2018レポート01
- Vol.02 After NAB Show Tokyo 2018レポート02
- Vol.03 これまでの放送と、これからの放送〜HDRとSDRがもたらすものとは
- Vol.04 注目の360°VRの課題は、どこで、なにで、なにを見るのか
キヤノン
キヤノンはCINEMA EOS SYSTEMの最上位機種となるEOS C700 FFやEOS C700 FF PLのほか、24型4KディスプレイDP-2421、17型4K動画ディスプレイDP-V1711、デジタルシネマカメラ用交換レンズCN-E20mmT1.5LFなどを出展した。
EOS C700 FFは新開発の38.1×20.1mmのフルサイズセンサー搭載したデジタルシネマカメラで、オーバーサンプリングによる4K60P映像の本体内記録が可能なほか15ストップを超える広い階調性を備えており、ITU-R BT.2020を上回る色域で収録することが可能。
CINEMA EOS SYSTEMのフラッグシップモデルEOS C700 FF。デュアルピクセルCMOS AFを搭載しているほか、独自のビデオフォーマットXF-AVCに加え、汎用性の高い圧縮フォーマットApple ProResに対応。また、Codex社のレコーダーCDX-36150を装着することで、最大5.9K/60PのRAW記録が可能
業務用17型4K対応ディスプレーDP-V1711。4K UHD(3840×2160)解像度を実現しており、フォーカスチェックや画質確認などを可能が可能。Hybrid Log-GammaやPQに対応しているほか、HDR制作を効率化する各種サポート機能も搭載している
NEW EVA 2.0(パナソニック)
パナソニックは毎年After NABにはメーカー名ではなく製品型番などを掲げて出展しており、かなり的を絞ったディスプレイをしている。今年はNEW EVA2.0という表記になっており、コンパクトシネマカメラAU-EVA1のファームウェアアップデートを前面に出した出展ブースとなっていた。
EVA2.0ファームウェアアップデートでは、6G-SDIによるRAW出力が可能になったほか、4K/UHDやバリアブルフレームレートをはじめとしたすべてのIntraレコーディングに対応しており、4K(4096×2160)では422Intra/29.97p・24p・25p・23.98pにUHDでは422Intra/29.97p・25p・23.98p、バリアブルフレームレートでは最大422Intra/120fps収録に対応。いずれも転送レートは最大400Mとなっている。
そのほかにもEVA2.0ファームウェアアップデートによりインターバルREC対応やメタデータVANC SDI重畳出力、HDMI出力をVF用途で使用できるようにLCD表示内容を出力などの機能強化が図られている。ブースではこうした機能の説明デモやあらかじめ撮影されたデモリールの上映などが行われていた。
AU-EVA1のファームウェアアップデートNEW EVA2.0によりRAW出力やバリアブルフレームレートを含む422Intra/400M記録のほか、インターバルREC対応やメタデータVANC SDI重畳出力、HDMI出力をVF用途で使用できるようにLCD表示内容を出力などの機能強化の説明などが行われたいた
RAID
RAIDは4月にV7.0.2にファームウェアアップデートになったREDやカラーグレーディングソフトウェアFilmLightのほか、スマホ用カメラサポートシステムFreefly Systems社のMovi Smartphone Cinema Robot、Digital Sputnik社のLEDライトVOYAGER、そして3月に国内販売代理店になったLEDライトのSECULINE社のCineroidなどを出展した。
4月にV7.0.2にファームウェアアップデートになったRED
Freefly Systems社Movi Smartphone Cinema Robot。小型で持ち運びが容易かつ使いやすく、プロのリグで見られるものと同様の優れた安定化技術を実現。iPhoneアプリとペアリングすることで、プロスタイルの撮影モードMajestic、Echo、Timelapse、Smartpodなどを追加できる
Digital Sputnik社LEDライトVOYAGER。タブレット端末用の専用アプリでライトの調光のほか色温度や点灯などをコントロールできる。防水となっており61cmと123cmの2種類がある
メディアエッジ
メディアエッジはビデオオンデマンドやデジタルサイネージ、ネットワークカメラシステムなど様々な映像関連機器やシステムを扱っているが、After NABではATOMOSの新製品を中心に出展していた。ATOMOS製品としては5インチLCDモニターのNinja Vや大画面のレコーダーSUMOなどで、そのほかの製品としてVITEC HEVC/H.264エンコーダーMGW ACEの新バージョンなどが出展された。
ATOMOS製品以外にも、インターネット放送に最適な4チャンネル+1合成画面の計5チャンネルエンコーダーを展示。チャンネル毎に2種類のエンコード設定が可能で、合計10ストリームの送出が可能となっている。その他、VITEC HEVC/H.264エンコーダー「MGW ACE」の新世代バージョンなどを展示していた。
19型HDR対応高輝度LCD搭載レコーダーSUMO19のほか、モニター機能に特化したSUMO19M、SHOGUN INFERNOなど各種ATOMOS製品を中心に出展
4K60pのHDRに対応したSUMO19。新たに2K4画面マルチ表示や入力のスイッチングにも対応。2K入力時では2チャンネルのマルチ収録が可能
VITECコンパクトHEVC/H.264ハードウェアエンコーダーMGW ACE Encoder。最大4:2:2 10bit 50Mbpsの放送クオリティに対応しており、2チャンネルのオーディオのほか、SDIやHDMIのビデオに端子を備えている
シグマ
シグマはデジタルシネマ用のレンズメーカーとしては後発だが、現在単焦点プライムレンズラインナップとしてHigh Speed Zoom Line14/20/24/35/50/85/135mm、ズームレンズのラインナップとしてFF Zoom Line24-35mmとHigh Speed Zoom Line18-35/50-100mmをそろえている。
ズームレンズラインナップ3機種のほか単焦点プライムレンズラインナップ7機種を出展した
ソニーα7 IIIに装着された24-35mm T2.2。このほかにもBlackmagic Design URSA miniも用意されていた。マウントとしてはEマウントとEFマウントの2種類
アイ・ディー・エクス
IDXは新製品のVマウントバッテリーDUO-C198/C98や、発売開始となったソニーUマウントタイプ(14.4V)のスモールバッテリーSB-U98/U50、ソニーLマウントタイプ(7.2V)のスモールバッテリーSL-F70/F50のほか、消費電力を大幅に削減4ch急速充電器VL-4Se、メモリーバックアップユニットNEXTO-DIなどを出展した。
ソニーやパナソニック、JVCケンウッドなどのカメラメーカー各社に対応したバッテリーや充電器のほか、メモリーバックアップユニットNEXTO-DIなどを出展
VマウントバッテリーDUO-C198/C98。D-Tapが2ヵ所あり、小型ライトや省電力モニターへの電源供給が可能なほか、USBコネクターも装備されておりDC5.0V/2.3Aの電源供給が可能。充電はVマウントのほか青いD-Tapコネクターからは、専用充電器VL-DT1を使用して充電できる。残量表示チェックはボタンを押すと約2.5秒間、残容量を5個のLEDで10段階表示可能。さらに、対応カメラの場合ビューファインダー上にバッテリーの残量表示ができる
アビッドテクノロジー
AvidはNABで発表した新製品やバージョンアップされた製品を中心にI/Oインターフェースやアセットマネジメントシステム、クラウドサービス、メディアサーバーなどを出展した。今回出展したのは、オンデマンドでメディア制作を可能にするAvid | On Demandクラウドサービスや、メディアサーバーAvid NEXISのためのアセットマネジメントシステム、I/OインターフェースArtist | DNxIDのほか刷新されたMedia Composerファミリー、MediaCentral | Editorial Managementなどで、同社ブースではMedia ComposerとI/OインターフェースArtist | DNxIDによるインジェストから編集、メディアサーバーAvid NEXISによるアセットマネジメントシステムなどのデモンストレーションが行われた。
Media ComposerとI/OインターフェースArtist | DNxID。ポストプロダクションのワークフローを革新するMediaCentral | Editorial Managementなどのデモが行われた
メディアサーバーAvid NEXISによるアセットマネジメントシステム。Avid | On Demandクラウドサービスとともにオンデマンドでメディア制作を行うことが可能
アドビ システムズ
AdobeはCreative Cloudの最新アップデートとしてAdobe Premiere ProやAdobe After Effectsのほか、Adobe Character Animatorといったアプリケーションツールの新機能を披露した。なお今年もIntelと共同でブースをだしており、最新のCPUであるCORE i9やCORE i7のほか、書込/読出の速度が飛躍的に向上したOptane SSD900Pを搭載したBOXX Technologise社のハイエンドワークステーションAPEXX5とともに披露された。
VRや8KのほかAIやモーショングラフィックスに対応したAdobeのアプリケーションツールAdobe Premiere ProやAdobe After Effects、Adobe Character Animatorなどのデモが行われていた。マシーンは44コア、88スレッド動作のIntel Xeonプロセッサーを搭載したAPEXX5 8904でGPUにはNVIDIA QUADROシリーズが採用されており、BOXX社のフラッグシップモデルとなっている
Adobe Premiere Proは、スマートフォンの動画のほかVRや8Kまで幅広いフォーマットに対応。AI/機械学習フレームワークAdobe Senseiを応用したカラーマッチやオーディオ自動ダッキングなど数多くの新機能を搭載しており、こうした新機能を中心としたでもが展開されたほか、モーショングラフィックス/VFXツールであるAdobe After EffectsやバーチャルYouTuberを手軽に実現するAdobe Character Animator などのデモンストレーションも行われた。
第8世代Intel Coreプロセッサー搭載をBOXX独自の技術力により4.8GHzにオーバークロックされたモデルAPEXX S-CLASS S3。6コアで最高4.8GHzの動作クロックパフォーマンスを発揮し、3D CADや3Dモデリングアプリケーションなどに対して、オーバークロックによりパフォーマンスの向上と安定した動作環境が提供される
ラインナップに18core/16core/14coreのIntel Core i9シリーズが追加されたAPEXX4 6200
EIZO
EIZOは新製品の31.1型HDR対応4Kモニター「ColorEdge CG319X」を国内で初めて展示したほか、100万:1の高コントラストと1000cd/m2の高輝度を実現した31.1型HDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3145」あ、グラスバレー社との協業により、EDIUS Workgroup 9の最新バージョン9.2に新たに加わったモニターコントロール機能のデモなどを行った。
国内初展示となる31.1型HDR対応4KモニターColorEdge CG319X。CG318-4Kの後継機種で、従来機種の表示性能は踏襲しつつ、新たにHDR「PQ方式」、「Hybrid Log Gamma方式」に対応し、映像制作向けの機能を進化させた4Kハイエンドモデル
31.1型HDRリファレンスモニターColorEdge PROMINENCE CG3145。高コントラストおよび高輝度を実現し、HDRの明るさと色を正しく再現可能。HDRコンテンツの撮影データ確認やVFX制作、編集、最終カラーグレーディングなどのワークフローで正しい色で確認・評価できる
FlexScan EV2785-HL。EDIUS Workgroup 9最新バージョン9.2に搭載されたモニターコントロール機能によりEDIUSのカラースペース設定に合わせて自動でColorEdgeのカラーモードが切替わる
AJA / ASK M&E
AJAとアスクは共同でブースを開設。AJA製品としてはNABで発表された4K対応の12G-SDIやHDRのほかIPビデオに関連した製品を出展した。Colorfront Engineを搭載した4K/マルチチャンネルHD対応のHDR/SDRリアルタイム変換コンバーターFS-HDRのほか、Avid DNxHRコーデック対応も加わった4K/マルチチャンネルHDレコーダーKi Pro Ultra Plus、Thunderbolt 3搭載の12G-SDI&HDMI2.0 I/OデバイスIo 4K Plus、H.264配信/収録が同時に行える多機能デバイスHELOのほか、IPビデオ伝送を可能にするミニコンバーター製品や12G-SDI対応のエンベ/ディエンベデッター、分配増幅器、光ファイバーミニコンバーター製品などが展示された。
4K/UltraHD/2K/HDファイルベースレコーダープレーヤーKi Pro Ultra Plus。ファームウェアv3.0のアップデートにより、Avid DNxHRコーデックに対応した
Colorfront社と提携して開発されたHDR/WCG機能が搭載されたFS-HDR。4K/UltraHD/2K/HDでのHDR変換、フォーマット変換、アップ/ダウン/クロスコンバーターモードおよびフレーム同期が可能で、Colorfront Engineの独自ビデオプロセスアルゴリズムが搭載されている
アスク取り扱い製品としては、Timecode Systems社のワイヤレスタイムコード同期システムSyncBac PROや、バックアップとアーカイブソリューションGB Labs社のEASY LTO、Square BoxSystems社のメディアアセットマネジメントシステムCatDV、NewTek社の統合型マルチカメラプロダクションシステムTriCasterを出展。
CatDV、NewTek社の統合型マルチカメラプロダクションシステムTriCaster
バックアップとアーカイブソリューションGB Labs社のEASY LTO。LTO7本来の速度で書き込めるように最適化されているほか、USB3により直接接続のストレージにも対応
txt:稲田出 構成:編集部