txt:荒木泰晴 構成:編集部
フィルムを注文する
2回目のフィルム装填体験の前に、本番用のフィルムを購入した。コダック社へ行って直接買う方法もあるが、ネットで注文するのが一般的。
例えば、「yahoo kodak」(写真1)のキーワードで検索すると、「KODAK Motion Picture Online Shop」(写真2)が出てくるので、「コダックモーションピクチャー公式オンラインショップ」(写真3)へ行くと、フィルムの種類と価格が載っている。
写真1
写真2
写真3
今回は、「16mm/100ftコダックVISION3 250Dカラーネガティブフィルム7207/スプール巻き片目」(写真4)を選択。
写真4
カード決済にして、数日待つと、実物が届く(写真5)。ネット通販の通常取引だ。
写真5
フィルム装填の復習
体験2日目。2月23日(日)、午後1時。石原麻里衣さんが来宅。
早速、石原さんからフィルム装填のおさらい。最初の1回は、明るい環境で、目視しながら、確実に装填して手順を思い出す。次に、ダークバッグで3回連続して同じ状態で装填できれば卒業。
石原さんは、ゆっくりだが確実に装填できるようになった。フィルムのたるみ(ループ)の状態も、毎回同じ大きさに装填できて、3回連続で成功。
写真6
遅れて到着した荒木亮君がおさらいした後、ダークバッグで装填。留学していた時の実習経験を思い出したらしく、装填時間は速い。
写真7
ところが、肝心なフィルム走行経路を閉じるレバーを押し忘れたり、ケアレスミスが数回続いた。
写真8
「ゆっくりでいいから、確実に」と、手順を踏むと、3回連続して成功。ループの大きさも同じになった。これで、二人ともフィルム装填はOK。2日目でここまで来れば順調以上の出来。
カメラの清掃と手入れ
カメラを手入れする用品を紹介する。
写真9
(1)ブロアー(写真10)で細かい埃やフィルムの切れ端を吹き飛ばす。いつでも使えるように数個持っている。
写真10
(2)クリーニングペーパー(写真11)メーカーは様々だが、細かい繊維が剥がれ落ちない材質の、吸湿性の良い紙でできている。
写真11
(3)レンズクリーナー(写真12)。これもメーカーは様々だが、成分はほとんど同じ。
写真12
(4)セーム皮(写真13)。ボディ外側の清掃に使う。セーム皮も繊維が剥がれ落ちない。
写真13
(5)綿棒(写真14)。溝や細かい隙間の清掃に使う。
写真14
(6)無水エタノール(写真15)。金属やガラス部分の清掃に使う。プラスチック部分には使わない。
写真15
(7)油脂類(写真16)。左から、ミッチェルオイル新型、ミッチェルオイル旧型(遥か昔に製造終了)、お馴染み呉工業の潤滑剤「5-56」シリーズ。この他にグリスを適宜塗布して錆止めに使う。
写真16
オイルを差す
アリフレックス16STには、日常にオイルを差すポイントが2か所(写真18、19)。フィルムゲート近くと、フィルム駆動メカの近くにある。1000フィート程度回した後、ミッチェルオイルを数滴給油する。銀色のボールベアリングの上に垂らし、竹串でボールを押すと、スプリングで押されているボールが引っ込み、隙間ができて、オイルが内部に入る。多めに差すと、フィルムに付着するので、適量が肝心。
写真17
写真18
写真19
ボディ内部とフィルムゲートの清掃
はみ出したオイルを拭き取ると同時に、ブロアーで埃を吹き飛ばしながら(写真20)、クリーニングペーパーで拭き上げる。ボディ内部とフィルムゲートを徹底的に掃除する(写真21、22)。
写真20
写真21
写真22
例えば、フィルムゲートに砂粒があると、100フィート全てに直線の傷が付く。また、フィルムゲートそのものの傷は指で触って確認する。傷はラッピングしないとカメラが使えないので、その点検も兼ねて丁寧に行う。
レンズマウントの清掃
レンズマウントに汚れがあると、レンズの付け外しがスムーズにできない。ロケから宿に帰ると、毎日清掃する。使えば清掃するのが基本。汚れていないようでも、クリーニングペーパーにはこんな汚れが付着する(写真23、24、25)。
写真23
写真24
写真25
レンズクリーニング
レンズは放置すると、埃や汚れを吸着する(写真26)。
写真26
まず、ブロアーで埃を吹き飛ばす(写真27)。
写真27
クリーニングペーパーにクリーナーを数滴垂らし、中心から円を描くように、優しく拭く。決して力を入れてはいけない(写真28)。
写真28
乾いたペーパーで、クリーナーを拭き取る(写真29)。
写真29
「レンズ拭き3年」、と言われるくらい、プロでも修業が必要。慣れない助手が拭くと、50回程度で傷が付く。
ヒゲのチェックと清掃
16mmフィルムで一番見苦しいのは、画面の上下に現れる通称「ヒゲ」と呼ばれる、細い繊維。これが出ると、現像所から「何フィートから何フィートまでヒゲが出ています」という警告書、通称「ラブレター」が付いてくる。撮影部全体がゾッとする瞬間だ。
防ぐには、「徹底した清掃」以外にない。
ボディを隅々までクリーニングし、徹底的にブロアーでゴミを吹き飛ばす。ダークバッグも裏返し、目に見えない小さなチリまで叩き落しておく。
写真30
ここまでしても、ダークバッグの繊維まで無くすことはできないので、フィルム装填後、数フィート回して、改めてフレームの周りを照明付きルーペで詳細に観察する(写真31)。
写真31
発見すると、楊枝や竹串を舐めて、フレームの周囲を清掃しながら、取り除く。(写真26、27)
写真32
写真33
再び、1フィートほど回して、出ていなければ、ほとんどの場合ヒゲは出ない。この手順を守ってもヒゲが出る場合は、最初のクリーニングが足りていない。
この作業は、デジタルカメラのセンサークリーニングと同じで非常に重要である。フィルムカメラの「清掃と手入れは、修行」というのがふさわしい。
これで、回す準備は整った。第3回は、三脚、レンズ選定、カメラ操作、テスト用フィルムを装填して、本番を想定して回してみる。
txt:荒木泰晴 構成:編集部