Vol.01 4K PTZリモートカメラ「KY-PZ510N」開発者インタビュー。自動追尾機能搭載で広がる用途。5モデルラインナップで様々な案件に対応[JVCKENWOOD PTZ Camera Introduction]

映像、音響の分野にて幅広い製品を手掛けている株式会社JVCケンウッドから、4K PTZリモートカメラ「KY-PZ510N」が2022年9月に発売される。同社の既存のリモートカメラのラインアップの紹介とともに、新製品となるKY-PZ510Nの特徴や開発意図などについてお話を伺った。

株式会社JVCケンウッド
メディア事業部 商品企画部3グループ
山田宏氏(写真右)

株式会社JVCケンウッド
メディア事業部 国内営業部 営業推進4グループ
古川寛氏(写真中央)

株式会社JVCケンウッド
メディア事業部 市場開拓部 開発2グループ
西巻恵児氏(写真左)

機能や用途に合わせて選択可能なラインアップ

――最初に、既存のリモートカメラ製品群について教えてください

古川氏:

業務用カメラとして2016年に発売された最初のモデルが「KY-PZ100」です。ダイレクトドライブモーターを搭載しており静粛性に非常に優れているので、コンサートホールなど静かな環境下での撮影を考慮した設計になっています。他にも最高で480度/秒の高速駆動、光学30倍/デジタル12倍ズーム、そしてHDMI、3G-SDI、IPストリーミング同時出力、microSDでのカメラ内記録など、多くの機能を搭載しているモデルとなります。地方自治体本会議場、各種式場、大学の教室、講堂など、現在も多くのお客様にご好評頂いています。
次に2021年9月に発売されたのが「KY-PZ400N」です。KY-PZ100がフルHDだったのに対しKY-PZ400Nは4K30pに対応しました。価格を30万円程度に抑え、コストパフォーマンスを重視したモデルですが、当社としては初めてNDI|HX、SRTに対応し、光学12倍/デジタル16倍ズーム、3G-SDI、HDMI出力を搭載しています。
その後、2021年11月に「KY-PZ200N/200」を発売しました。価格をさらに抑えたフルHDのエントリーモデルです。光学20倍/デジタル16倍ズームで、KY-PZ200N/200共にSRTとUVCに対応しており、高画質、高倍率のWebカメラとして活用頂けます。KY-PZ200NはNDI|HXに対応しています。複数台での運用や、小規模な会議、そしてノートPCなどに接続してWeb会議などにもお使い頂いております。

    ラインアップ
右から「KY-PZ100」「KY-PZ200N/200」「KY-PZ400N」「KY-PZ510N」
※画像をクリックして拡大

古川氏:

そしてこれら全てのリモートカメラに対応したリモートコントローラー「RM-LP100」があります。導入されたお客様には「少し触ればカメラが思い通りに動かせる」と非常にご好評を頂いています。

    テキスト
リモートコントローラー「RM-LP100」※画像をクリックして拡大

古川氏:

カメラの設定や操作につきましては、リモートコントローラー以外にWebベースの設定画面がありますので、PCやタブレットから設定することもできます。

    Webベースの設定画面
Webベースの設定画面※画像をクリックして拡大

古川氏:

さらに、今年9月には最新モデルとなる「KY-PZ510N」が発売となります。これによりリモートカメラのラインアップが5モデルとなります。全モデル持ち運び可能なサイズ、重量になっているのでスポーツイベントなどで三脚に載せての運用もできますし、20〜60万円の価格帯の中から機能面や導入台数など、お客様の用途やご予算に応じて選択頂けると考えています。

    Webベースの設定画面
リモートカメララインアップ一覧※画像をクリックして拡大

新製品「KY-PZ510N」の従来製品との違いや進化ポイントとは

――今年9月に発売となりますKY-PZ510Nの特徴を教えてください

新製品「KY-PZ510N」

山田氏:

まず解像度とフレームレートとして、4K(UHD)60pに対応しました。KY-PZ200/400N同様にH.264/H.265/MJPEGを利用可能で、最大ビットレートは60Mbpsとなります。
次に画角です。KY-PZ100、KY-PZ200N/200では水平画角として最大60°、KY-PZ400Nでは71°でしたが、今回KY-PZ510Nではさらに業界最大レベルの80°を実現しました(2022年8月現在 当社調べ)。被写体までの距離などの条件により選択の幅が拡がるものと思っています。
そして機能面ですが、新たな機能として自動追尾機能を追加いたしました。企業でのウェビナーや大学の授業配信などでは、状況に応じてカメラをリアルタイムで操作する人員の確保が難しい場合もあり、リモートカメラ自体がカメラマンの代わりに講師の動きに追従する自動追尾機能を搭載しました。
追尾の設定も簡単で、付属のIRリモコンを使って、カメラの映像が映っている画面に現れる緑色の枠線を追尾したい人物に合わせるだけで設定できるので、お手軽に使って頂けると考えています。
また、追尾する際のカメラの動きについては、人物の動きに対してあまり過敏に追尾機能が動作するとかえって不安定な映像になるので、程よいスピードで追尾するように設定されています。また、人物が前後に動く場合は追尾対象が最適な大きさに映るように自動でズーム調整するようにしています。

追尾したい人物を画面に現れる緑色の枠線で囲うだけ
付属のIRリモコン

山田氏:

セミナーなどでご利用の際には、この自動追尾機能を使うことでPCレスでインターネットライブ配信が実施できます。オンライン教育をはじめとして登壇者の話を聞く分野の配信などで是非KY-PZ510Nの自動追尾機能を活用して頂きたいと考えています。
また、UVCにも対応しましたので、4K30pでのWebカメラとしての活用も可能です。4K60p、H.265、SRT、NDI|HX、UVCといった多くの機能を搭載しており、今後を見据えたシステムにもご利用頂けると考えています。

――KY-PZ510Nの外観についてはいかがでしょうか?

西巻氏:

以前の機種では小さめだったタリーランプをより見やすいように大きくしました。また、カメラのIPアドレスや出力モードなどのステータスが表示される小窓がフロントに搭載されました。カメラが複数台ある場合に各カメラのIPアドレスの確認などがとても楽になります。

従来機種と比べてタリーランプが大きくなり、より認識しやすくなった
フロントに搭載された小窓にはカメラのIPアドレスや出力モードなどのステータスを表示

西巻氏:

台座とカメラの接続部分にシルバーのリングがあるのですが、これはKY-PZ100と同様に「JVCらしさ」をアピールするデザインにしています。

今後の製品開発、そしてJVCケンウッドだから実現したカムコーダーとの連携

――JVCケンウッドではリモートカメラ以外にもIPストリーム可能なカムコーダーも作られていますね

山田氏:

GY-HC900CH、GY-HC550、GY-HC500、GY-HM280、GY-HM280BBではIPストリーミングが可能です。弊社リモートカメラ、そしてこれらのカムコーダーはNTP(Network Time Protocol)から取得したタイムコードをストリーミングに重畳させることができるので、ネットワーク経由で複数台のカメラを同期させることができます。
大きなホールなどにおいて複数のカメラでイベントを撮影するといった際に、リモートカメラだけでなくカムコーダーも合わせてIPストリーミングで活用できる一貫性のあるシステム構築が可能です。このような比較的規模の大きなソリューションにも注力していきたいと考えています。