Media Day2日目
CESでは会期直前にメディア向けにスポンサー企業がプレスカンファレンスを行うのが恒例だ。今年も朝8時から夜9時までメディア向けのプレスカンファレンスが続いた。時差ボケで朦朧とした頭のまま朝8時から参加するのだが、企業の紹介する新しいソリューションにワクワクしているうちに時差ボケも吹っ飛ぶ。ちなみに筆者のプレスカンファレンス参加スケジュールは以下の通りだ。
全体を通して言えるのが各企業とも「サステナビリティ」を軸に地球環境に優しい企業をブランディングしていた。
地球環境に優しい企業ブランディングとは?
パナソニックは「Panasonic GREEN IMPACT」を、サムスンは「Everyday Sustainability」を掲げて取り組みを紹介していく。パナソニックは水素を活用した工場の再生可能エネルギー100%化に向けた世界初実証をはじめCO2削減の取組を通じて、CO2ゼロの社会の実現を目指す。そしてサムスンはパタゴニアと組み海洋マイクロプラスティックを削減するための取り組みを主導し、洗濯機から出てくるプラスティックゴミを最大54%削減するろ過装置(Less Microfiber Cycle と フィルター)を開発している。
このニュースはCES 2022でも話題になったが、今日面白いと思ったのはパタゴニアが先導することによりそのろ過装置をサムスン以外のメーカーにも広げて行く動きをしているということだ。競業企業同士だと進まない協業も、環境に配慮し、またパタゴニアという第三者が参加することにより推進していけそうであるというところが面白いと感じた。
その「面白い」の背景には”イノベーションはよそ者若者馬鹿者が起こす”という言葉があるが、新たな動きをするためには同じ家電メーカー同士で動かすのではなく、この場合はパタゴニアのようなよそ者(他業種)の存在で動き出す、この企業の力学が面白いと感じたのだ。
「感動」「感情」にフォーカスするソニーとBMW
サムスンのプレスカンファレンスは毎年長蛇の列に並んで参加するので、人気のセッションであるのは間違いない。ただ、今年はソニーのブースが例年以上に並んで混み合っていた。昨年発表のあったSony Honda Mobilityの動向やPSVR2の発表などが注目を集めたのだろうが、例年のように30分前に会場についたら既に席が埋まっており立ち見での参戦となった。
ソニーのカンファレンスは昨年発表のあった小型衛星STAR SPHEREの打ち上げ成功の紹介からはじまった。ソニーの強みはテクノロジーとコンテンツ双方を有することであるが、人気ゲーム・タイトルの他メディア展開の話が続く。ホラーアドベンチャーゲーム「The Last of Us」がHBOのドラマとなり、Play Station人気ゲーム「GRAN TURISMO」が実写化するそうだ。
映画版では「GRAN TURISMO」のゲームにハマった青年が実際のレーサーになるまでのストーリーであるという。GRAN TURISMOで遊んだことある人間としてはもしかしたら自分にも起きていたかもしれないストーリーとしてのめり込んでしまいそうである。そしてゲーム視点を再現するために実写クルマにカメラを複数台搭載している写真には「CGではなく、そこまでやり込むのか!」と感動もした。
SonyとHondaが協業。「AFEELA」登場
やはりメディアが一斉にカメラを向けたのはSony Honda Mobilityのモデルカー「AFEELA」が登場した時である。新EVの登場の後に協業パートナーとしてFortniteを有するエピックゲームのCTO、そしてAiboやAirpeakでも採用されているチップSnapdragon有するQualcomのCEOがエンドーサーとして新しいソフトウェア主導での車を生み出すSony Honda Mobilityへの期待を述べていく。
ソニーとホンダという日本人のとって親しい二社が手をとり新たな車への挑戦をすること自体興奮することだ。加えて、ゲーム・ソフトウェアの巨人エピックゲームや、チップメーカーQualcommも加わると、これまでの自動車とは違う「クルマ」が生み出される大きな期待が会場に伝わり、熱気に包まれプレスカンファレンスは、幕を閉じた。終了後も撮影を続けるメディアで混み合った状態で、ソニーが謳う「KANDO感動」が思わず口から出てしまうシーンが何度もあった。
「感情」をクルマに吹き込んだBMWの基調講演
さて「感情」をクルマに吹き込んだBMWの基調講演も、ソニー同様、見応えのあるものであった。BMWはコンセプトカー「BMW i VIDION DEE」を軸に、アーノルド・シュワルツェネッガー氏や「ナイトライダー」のナイト2000とマイケル・ナイト氏を巻き込んだストーリー仕立てでBMWが考える人とクルマの関係を紹介していく。
シュワルツネッガー氏は環境問題に取り組むBMWの姿勢に元カリフォルニア州知事として支持もしたいと語ると同時にAIを搭載した人間によりそう「BMW i VIDION DEE」に対して、AIは人間を支えるものであり、ハリウッドでは人間の仕事を奪うとAIに対して恐怖を持つ人がいるのを信じられない、とターミネーターを演じた人から出る発言とは思えない意見を述べてくれた。
BMWの大きなメッセージとしては、デジタルとフィジカルの境界を越えていく(現実の延長線上にメタバースが存在するようなイメージ。クルマの操作一つで世界がリアルからバーチャルに切り替わっていくような世界観である)というものと、クルマも感情を持つ時代がやってくるというものだ。フロントノーズにクルマの表情を表す目が現れたり、車体の色自体もE-Linkを活用して気分により変えていくことができる世界を提案してくれる(昨年発表したiX Flowをカラフルに進化させたものだ)。
Sony Honda Mobilityの現実路線よりは、BMWのコンセプトカーは先の未来を提示しているとはいえ、テクノロジーが進化するとクルマが感情をもって私に寄り添うことも実現されるのではないか??と想像でき、未来が楽しくなる。
今年のCES は始まる前から世界が抱える多くの課題(環境・政情・経済 etc…)に対してテクノロジーでなにが解決できるのか?を前提に語られているが、BMWのような夢を広げさせてくれるような世界観の提示もグローバル企業に担っていただきたい、と思う大満足の「Media Day」であった。そしていよいよ明日からCES2023が始まるのだ。