AJA Video Systems社、社長 Nick Rashby氏と新製品「Dante AV 4K」

InterBEE 2023のアスク・エムイーブースで、AJA Video Systems社の社長 Nick Rashby氏に、映像・音声信号をインターネット経由で伝送するAV over IPソリューションの新製品「Dante AV 4K」について話を伺った。

トランスミッターの「Dante AV 4K-T」とレシーバーの「Dante AV 4K-R」を展示

――「Dante AV 4K」とはどういった製品ですか

Rashby氏:

「Dante AV 4K-T」と「Dante AV 4K-R」は、高品質な映像を超低遅延で1GigEネットワーク上に伝送するDante AV Ultraを利用したソリューションです。
AJAは、openGear規格に対応したカード型のコンバーター製品をシリーズ展開していますが、その1つとして数年前に、Audinate社のデジタルオーディオネットワーク規格Danteを採用したモデルを発表しました。そこからAudinate社との関係が始まり、同社がDante AVを開発すると話を聞いた際に、IPビデオ製品を拡充する良い機会だと考えました。これまでプロフェッショナル向けのビデオ製品を扱ってきたAJA社の経験を活かして、Dante AV Ultraを採用したプロ向けの高品質な製品を提供しようと発表したのが「Dante AV 4K」です。

Dante 対応オーディオ・エンベッダー / ディスエンベッダー「OG-DANTE-12GAM」

――「Dante AV 4K」の特長を教えてください

Rashby氏:

採用しているDante AV Ultraは、JPEG2000コーデックを使用した高画質かつネットワーク効率の高いビデオ伝送が可能で、最大12ビットのビデオ品質を1GigEネットワーク上でやりとりできるのが、非常に大きな利点です。そして「Dante AV 4K」は、このDante AV Ultraを採用し、超低遅延な映像伝送を実現するハードウェア製品として発表しました。超低遅延が特長なので、例えばライブプロダクションの現場など、出演者とその背後に設置されたディスプレイ映像のリップシンクを維持する必要がある場合には、最大限の威力を発揮してくれる製品だと思います。
「Dante AV 4K」は、12G SDI、HDMI2.0、そしてオーディオなどの接続性を備えた、信頼性の高いコンパクトな製品です。また、HDCPもサポートしているので、不正コピー防止にも対応しています。そして、ネットワークの接続端子にはロックがかかるようになっていますので、ケーブルが突然外れるアクシデントを防ぐことができます。このように「Dante AV 4K」は、これまで当社がプロフェッショナル向けの映像製品を開発する中で培った経験を活かした製品になっています。
次のファームウェアでは、ビデオのアップスケーリングにも対応予定ですし、今後も機能改善を続けていきたいと考えています。

    Dante AV 4Kの入出力端子
Dante AV 4Kの入出力端子※画像をクリックして拡大

――他のメーカーが発売しているDante関連の機材との互換性はありますか

Rashby氏:

これはDanteの利点の1つでもありますが、これまでネットワークオーディオのDante対応製品で経験を積んでいれば、オーディオと同じインターフェースでビデオの運用もできるので、他のメーカーが出しているDante採用製品とも問題なく組み合わせて使用することができます。

――「Dante AV 4K」は現在どんな現場で導入され、どんな実績を上げていますか

Rashby氏:

世界中をツアーで回るような有名ミュージシャンの方にも使っていただいています。実際のツアーでは、Dante AV 4Kを使って遅延なく会場のディスプレイに映像を映せるということで、非常に満足してくださっています。また大学などの教育現場では、学校内で高画質の映像を共有して扱うといった用途でも使われています。

    テキスト
「Dante AV 4K」大規模コンサートのIPワークフロー※画像をクリックして拡大

――「Dante AV 4K」はどんなユーザーにお勧めの機材ですか

Rashby氏:

一言で言えば、既にオーディオでDanteを使っていて、今後ビデオにも使う予定があるすべての場所でご活用いただけると思います。既存システムのままでビデオも扱えるため、非常に導入が楽だからです。また、実はIPビデオの運用は難しい場合もあるのですが、Audinate社が構築したDanteネットワークはかなり簡単に導入できるように作られているので、IPビデオにまだ精通していないお客様にもお勧めしたい製品です。

    テキスト
「Dante AV 4K」の操作は、オーディオと同じくDante Controllerを使用する※画像をクリックして拡大

――AJA社から見たAV over IPの今後の展望と、AJA社の取り組みについて教えてください

Rashby氏:

AJA社は、お客様の問題を解決するために存在していると考えています。我々は既にSMPTE ST2110やNDI、そしてDante AVなど様々な技術をサポートしていますが、どれか1つのAV over IP技術に固執することなく、お客様の要望に合わせて製品の開発を進めていきたいと考えています。また、何らかの独自の技術を使って、お客様を囲い込むことは望んでいません。お客様の既存の環境をより快適にし、お客様が望む方向に進めるようにお手伝いをしたいと考えています。